四肢の切断も終わり、無事余計なパーツの切除は完了した。その安心感と達成感からか、もしくは長時間に渡り人間の四肢をたった一人で切断した疲労からか、僕はソファーに腰を下ろすとすぐに眠りに落ちてしまった。
まだ茜に対する施しは最後まで終わっていないというのに……。
……眠りに落ちている時も、茜の姿が夢に出てきた。
四肢を失い、一人では何もできない茜に代わり、生活の補助をする僕。それに対し、柔和な笑みで感謝を示す茜。
『いつも、ありがとうね。高城くん。大好き』
幻想の中、僕は茜を抱擁する。
僕の理想……やがて、いつかはこうなる事を望んで。
その言葉と共に、僕の身体は温かな熱に包まれ、意識が夢から……現実へと引き戻される。
「……しまった、つい眠って……」
目を擦りながら、手術台の方を見る。
まさかとは思ったが、茜は逃げ出す事もなく手術台の上に横たわったままだった。四肢を失ったのだから逃げ出しようがないのだが、それでも逃走の心配をしてしまうのは誘拐犯の性だろうか。
現実の茜の姿を目視するため、僕はソファーから起き上がり、手術台で眠っている茜の様子を見に行く。
茜はまだ、自らの身体に起きている異常にも気付かず、静かに目を閉じている。
「すまない茜、僕とした事が最後の仕上げもせずに……もう少しで、終わるからね」
茜の頰に触れ、優しく艶やかな髪を撫でる。
僕はこの日の為に、美しい、愛おしい君にこそ相応しい最後の仕上げを用意していた。
僕も茜も、きっと満足いくモノだと僕は自信を持って言える。
「海外製の一級品でね、随分と奮発したんだ。有名な職人に依頼して仕上げたオーダーメイド……君もきっと気に入るはずだ」
その仕上げには一切の妥協はしなかった。素材、外見、強度……全てにおいてトップクラス、最高級のモノに仕上げたのだから、茜にもとても良く似合うはずだ。
目を覚ます前に、密かに最後の仕上げを済ませてしまおう。
そして、茜が目を覚ました時、僕からのこのプレゼントにどう反応するか、僕は待ち遠しくて仕方がなかった。