皮膚を切り裂き、肉を切り広げ、骨を削り切る……それを何度も何度も、気が狂うくらいに繰り返した果て……どれだけの時間を費やしただろう。
滝のような血を浴びながら、僕は必死に電動のこぎりの刃で茜の身体を破壊し続けた。
一つ予想外だったのが茜からの出血は非常に多く、僕の準備していた輸血量を上回ってしまった事だ。
生命維持に関わるほどの血液不足では無いにしろ、自身の準備不足には呆れる。
「……しばらくは、茜の身体から血を流す様な真似は控える必要があるか」
茜が万全になるまでは、療養させる必要がありそうだ。
そして……今、僕の目の前には、四肢を失い、頭部と胴体だけになった蛹のような少女が痛みも感じる事なく、安らかな寝顔で横たわっていた。
切断した四肢はこれから防腐処理を施し、ホルマリン漬けにでもするつもりだ。
切り離された温度の無い肉塊だが、それでも茜の一部だった肉塊だ、捨ててしまうのは勿体ないし、何より茜自身に切り離された自らの四肢を拝ませてやりたい。
「美しいよ、茜」
僕は目を覚ます事なく最後まで僕の施しを受けきった茜へと、ご褒美の口づけを交わす。
引き裂かれた唇との口づけは妙な感覚だったが、その傷痕すら今は愛おしい。
茜の血の匂いで充満したこの密室において、何も知らず安らかに眠る茜と僕が同時に存在する今、これに勝る幸福があるだろうか。いや、無い。
四肢を失くし、ただ胴体と頭部だけとなった茜。今はその生命維持のため、何本かの管が彼女に取り付けられている。
そして、この管による生命維持と、僕の生活補助が無ければ彼女は簡単に死ぬ。いとも簡単に、死んでしまう。
そう、茜には僕が必要。必要になるような身体にしてあげたとも言える。
これで、茜は嫌でも僕を必要としなければならない。
その現実を知った時、茜はどんな表情で泣くだろう。
自らの身に起こった異変に、どのような反応を示してくれるだろう。
だが、君がいくら絶望しようとも、それすら僕は受け入れ、愛そう。
君と、永遠に添い遂げよう。