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第4話 攫いの日

 それから茜の不意を突き、誘拐する事は容易かった。

 彼女の部活帰りの時間、特に時間が遅く、人通りも少ない帰り道も既に把握していたし、茜自身も僕が大学から去ったことで気が緩んでいたのか、夜道を一人、警戒もせずに歩いていた。


「茜、君が素直に僕に従わらないから……」

 こんな手荒な真似でしか茜を手に入れられない……自分の無力を痛感する。

 けれど、これは全て君の為。君の魅力を最大限に引き出せるのは、僕だけなのだから。


 車の陰でで待ち伏せし、顔を隠して背後から襲った。

 すぐに茜の口を塞ぎ、退学前に医学部から盗んでおいた薬品を染み込ませたハンカチを茜の顔に押し付ける。

「う……っ?!」

 突然の事に激しく抵抗した茜だが、薬品の効力には抗えず、すぐに手足から力は抜けていった、まるで糸の切れた人形のように。

「すまないね茜。けれど、君が言葉じゃ理解できないから……仕方ないんだ」

 僕の腕の中で小柄な茜が、目を閉じて眠っている。あの茜が僕の腕の中に……。


 そんな事実を確認するだけでも、僕は自分の判断が間違ってなかった事を確信する。

「けれど、君の身体に薬品なんて無粋なモノを吸い込ませてしまったのは謝るよ。ごめんね、茜……」

 しかし、手荒な真似だったのは事実。

 でも、茜が悪いんだ。君がもう少し利口なら、こんな強引な手段を用いなくても済んだのに。


 こうして僕は、不本意ながらも結果的に茜を強引に手に入れることに成功した。


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