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第13話

「はい、それでは授業を始めますー」

「おー」


 というわけで翌日。

 あたしは庭で椅子に座り、伊達メガネをつけたシルファーの前に居た。

 正直、可愛すぎて持ち帰りたい。


「なんかぞわっとした!」


 あたしが真顔でじっと見ているとシルファーはぶるりと身体を震わせた。精霊は勘がいいみたいだ。


「勉強は苦手だけど、今日はなにをするんだ?」

「まずは魔法だねー。興味があることを先にやっておこうと思ってさ」

「お、ありがたい! いやあ、あたしに魔法を使う才能があったとはなあ」


 昨日の回復魔法はどうも本当にあたしがやったことらしい。今まで教えてもらえる環境がなかったからこれは本当にラッキーだと思う。

 しかし、気になる言葉があったので手を上げて尋ねてみる。


「ちょっと待て。興味があることを先にやっておこうってどういうことだ……?」

「もちろん、この後は教養をやるよー♪ 先生はディーネ!」

「……な!?」


 シルファーが指した先に視線を向けると、そこにディーネが立っていた。次は覚悟をしなさいという感じで不敵な笑みを浮かべていた。


「うへえ……」

「ちょっと大変かもしれないけど、今後の役にも立つと思うよー? 報酬も用意するし、頼むよー」

「まあ、やるからにはちゃんとやるけどよ」

「そういうのを直していこうねー!」

「うぐ」


 シルファーにそう言われてあたしは呻く。やりたくないなというのもあるけど、彼女の仕草が可愛かったというのもある。


「で、魔法のことなんだけど、リアはどれくらい知っている?」

「え? んー、シルファー達みたいな四属性と光、闇があるんだっけ?」


 早速シルファーが授業を始めたようで、質問を投げかけて来た。あたしが分かるのは属性くらいなのでひとまず答えてみた。

 するとシルファーが頷いてから話を続けた。


「うんうん、そうだねー。まあ、冒険者なら魔法使いとパーティを組んだりするだろうからそこは問題なさそうかな? じゃあ次は魔法そのもののお話をしようー」

「きたきた」

「魔法は大まかに攻撃・防御・支援に分かれているんだー」


 と、説明を進めていく。

 攻撃に特化しているのはやはり火らしい。他の属性にも攻撃できる魔法があるけど、水だと支援、土だと防御といった方向になるとのこと。

 光と水に回復魔法があるのだとか。


「わたしの風属性は支援になるかなー? こういうのが使えるよ! 〈ウイングブーツ〉」

「おお!」


 シルファーが指をくるりと回して魔法を唱えると、足に風がついた。そして次の瞬間、シルファーが凄いスピードで移動し、離れたところに居るディーネのところへ行った。


「あら、もう私の出番ですか?」

「ううん、まだだよー。よっと」


 花に水やりをしているディーネにタッチした後、シルファーがまたこちらに戻って来た。


「いいなあ、その魔法。魔物に囲まれた時に逃げやすいじゃん」

「ふふーん、いいでしょ♪」

「どうやって使うんだ?」


 ドヤ顔で可愛いシルファーに使い方を聞いてみる。するとすぐに真面目な顔で眼鏡の位置を直す。


「生き物には魔力が必ず流れているんだよ。それを使いたいようにイメージして魔法にするって感じかな? でもまずは適正を調べるところかなー。リアは回復魔法が使えたから光かな? 水の回復魔法はちょっと特殊だもんね」

「ふうん?」


 もし水ならディーネが反応するし、水幕が傷を覆って治すとのこと。だから光になるんじゃないかと言う。


「あたしが光属性かあ。柄じゃないね」

「そう? アリアと同じ顔だし、美人だから合っていると思うよー?」

「あはは、ありがと。アリアも光だったのか?」


 シルファーがお世辞でも嬉しいことを言ってくれる。で、アリアはどうだったのか質問を投げかける。


「えーと、アリアはリアと同じで光属性が適正だったよー。後は火と土が相性良かったかな?」

「三属性とか適正あるんだな」

「流石は聖女って感じだねー。だいたい一つで、魔法使いなら二つはあるんだ。先代は四つ適性があったからアリアは一つ足りないね」

「でも三つは凄いよなあ。さっきの風魔法を使いたかったぜ」

「適正が無いと発動しなかったり、使えても威力が低いとかあるからねー」


 できなくはないけど、あまり意味がないとのこと。


「そうだよなあ。使えるといいのに。ダンジョンで楽ができそうなんだよ」

「ふふ、まあ回復魔法だけでもいいと思うけどねー」

「まあな。あ、でも風の適正があるかもしれないよな! やってみよう。〈ウイングブーツ〉!」


 あたしはシルファーが浸かった魔法をイメージして試しに使ってみる。


「そういえば捨て子だったっけ。でも中々複数属性って持ってな――」

「おお!」


 シルファーが指を回しながら解説をしている途中で、あたしの足に風がまとわりついた。


「それ!」

「あれ!? 普通にちゃんとした魔法ができてるー!」


 あたしはウイングブーツで庭を走るとスムーズに移動できた。これで合っているみたいだな?


「えー。もしかしてリアの両親のどっちかが魔法使いだったのかな。それでもこれは凄いけど……」

「もしかして、あたしって才能があるのか?」


 シルファーのところへ戻ってそう言うと、彼女は腕組みをして考え出した。


「……回復魔法が使えたからもしやとは思っていたけどねー。光と風が適正なのは間違いないかも。ついでに他のもやっておく?」

「そうだなあ。相性がいい属性でも知っていれば有利になりそうだし、やってみる」

「うんうん。火魔法はキャンプとかでも使えるもんねー」


 どれが使えても便利になる。それが魔法だから、使える人間は羨ましがられるのだ。

 光と風の時点で十分だと思うけど、どうせ暇だし試してみるくらいはいいと思う。


「それじゃ、火からいってみようー。指先から火を出す魔法で〈プチファイア〉」


 シルファーがそういって可愛い火を出す。焚火をするのにちょうどいいなと思いながら、あたしも目を瞑って使ってみる。

 すると――


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