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黄泉平坂サブch【除霊の家 中編】②

【除霊の家 中編】202✕年4月24日配信


※以下、動画の一部書き起こし。

 画面には自宅に戻った二人の姿が映っている。

「はい、ということでね。『除霊の家』ですが、一時撤退、ということで」

「僕もさあ、帰ってきてから、あのロフト? ロフトの映像見たけど……あれはちょっとさ……ヤバイよね」

「そうですね。さすがの僕もあれはちょっと、このままね、何もわからないまま探索を続けるのは危険だと判断しまして」

「うん」

「それでですね、あれからもう数日経っているわけなんですが。あの撮影した動画を、同行もしていただいていたKさんと、あと除霊とか降霊とかそういった儀式に詳しい別の知人にですね、見ていただきました」

「はい」

「Kさんには、ここがその『幽霊が全くいない場所』かどうか、見ていただいたんですが、ちょっとね、映像越しにはそれはわからないと」

「うんうん」

「でも、特にね、幽霊とか、何かそういった『此の世ならざるもの』? みたいなものは映ってないって」

「ああ……嬉しいような、残念なような」

「ね、僕達的にはね。で、その、御札とか仏像とかで、幽霊とかその残滓とかを、全くね、無い状態にできるか聞いてみたんだけど。Kさんに」

「何だって?」

「Kさんが知ってる限りは無理じゃないか、って」

「ああ、そうなんだ。まあ神社とか聖域とかでも、その『残滓』はあるって言ってたもんね」

「で、別の、そういった儀式とかに詳しい方のお話なんですけど」

「うん」

「それはね、ちょっと映像にまとめましたので、まずはそちらをご覧ください」


 画面が切り替わり、ファミレスの席についた男性(上半身は全てモザイクがかかっている)の姿が映される。画面下に【ミクラさん(仮名)】とテロップが表示される。

「今、動画を見ていただきましたが、率直なご意見として、どう感じましたか?」

「いやあ、どうというか……」声の様子からは中年男性と思われる。

「2階の祭壇、祭壇のようなもの。あれは降霊の儀式だと思いますか?」

「うん……ちょっとね、私が知っているやり方ではないけど、周りの様子を見る限りは、間違いないと思います」

「周りの様子を見る限りは、というのは?」

「鏡が置いてある台の後ろの壁にも御札があったでしょ?」画面には中編前半で映された祭壇の様子が流れる。「あれはね、魔除けの御札なんですよ」

「──と、言いますと」

「鏡に霊を閉じ込める、なんて術もあるんですが、あんな風にすぐ後ろに魔除けの札があったら、霊は鏡まで近付けないはずなんですよ」

「なるほど」

「と、なると、まあ降霊の儀式なのかな、と。消去法ですね。でも、そう思ったのには他にも理由があります。あの2階の部屋のね、御札や仏像の向きを見ると、まるで部屋の外へ霊を追い出すようになってるんですよね。その、お二人が辿った道を通って」

「部屋の外に……」

「2階の、あの奥の部屋。扉に御札が貼ってなかったでしょう?」再び画面に映像が流される。「つまり、あの部屋には霊が出たり入ったり出来るようになってる。でも、あの御札の貼り方や仏像の置き方だと、外から中へ入れるとは思えない」

「だから、降霊、だと」

「あくまでも、消去法で言えばですが」

「ちなみに、廊下や階段も御札や仏像だらけだったんですけど、その、降ろされた霊は、何処へ……?」

「動画を見る限りですけど……ロフトのある部屋を出た後、2階の他の部屋は扉に御札が貼ってありますから、まあそのまま廊下を直進すると思います。そうしたら、階段ですね。階段を下りて1階に」

「玄関から、家の外には出ていったりしないですかね? そういえば家の外から見た時、玄関には御札が貼ってなかったんですけど」

「これは映像には映っていなかったので、推測でしかありませんが……たぶん、玄関ドアの内側には貼ってあるんじゃないかと」

「ああ、なるほど……」

「玄関の、三和土の部分っていうんですかね。映像だと不鮮明なんで断言は出来ないんですけど、ちょっと何かね、三和土を囲むように呪文のようなものが書いてあるように見えるんですよね。結界を作るみたいな」再び画面に映像が流れるが、不鮮明でよくわからない。

「なるほど……」

「もしまた行くなら──あまり行かない方が良いとは思いますが──見てみて下さい」

「わかりました。それで? その後の霊の行方は?」

「1階で扉に御札の無かった部屋は?」

「……キッチンですね」

「キッチンは、リビングへ通り抜け出来ないようになってましたね」

「ということは……」

「霊は、キッチンの何処かへ導かれて行ったのかと思います」

「映像、キッチンが映っているところで、霊は視えましたか?」

「いや、映像では視えませんでしたね」

「(ミクラ)さんは、ここが『幽霊が全くいない場所』だと思いますか?」

「……うーん、これは、あんまり……話して良いものかわからないんだけれど」

「はい」

「私が君くらいの頃だから、もう20年くらい前だと思うんですが……私達の業界っていうか、仲間内でね、噂があったんですよ。『幽霊を閉じ込める方法を探してる奴がいる』って」

「幽霊を……閉じ込める……?」

「そう、除霊とかじゃなくて。で、そんなの明らかにヤバい人だから、まあ注意喚起みたいな感じでね、噂が回ってた。関わらないようにしようね、みたいな。でもね、いつからかパタッとその噂を聞かなくなって。そのかわりに──」

「『幽霊が全くいない場所』の噂が流れ始めた、と」

「そう。あの家がそうなのかはわからないけど、ちょっと……あの家の中の様子や、(K)さんの反応を見ると……結びつけて考えちゃいますね」


「──と、いうことなんですが」

 画面が切り替わり、カズヤとタクミの二人が映される。

「……怖いね!」

「いや、語彙──。まあとにかく、今見て、聞いていただいた通り、あの家が『幽霊が全くいない場所』である可能性はグッと高まったかと」

「そうだね!」

「なのでね、もう一度僕達であの家に行って、家の中で何が行われたのか、もう少し詳しく調べたいなと」

「うわあ、行きますか」

「はい。まずはロフトの祭壇をね、前回はすぐに撤退しちゃったんで、もうちょっとよく調べたいなと。出来れば鏡、三面鏡も開いてみたいですね」

「え、開いて大丈夫なの?」

「ミクラさんは、開くだけなら大丈夫だと思うと」

「思う」

「儀式っていうのは、手順とかそういったものも重要だと。蝋燭に火を点けたり、何らかの呪文を唱えたり、そういったもの無しにね、あの三面鏡を開いただけなら大丈夫だろうと」

「なるほどね」

「まあその辺は、その祭壇の周りをね、よく調べてからにしましょう」

「はい」

「で、その後は、霊の気持ちになって」

「霊の気持ち?」

「ロフトの部屋からキッチンまで歩いてみてね、それで、最終的に霊が何処に行き着くようになっているのかを確認したいですね」

「あ、あとほら、あのさ『ここにゆうれいはいません』ってやつ」

「そう! 現在の所有者である甥御さん(と当時の不動産担当者)が見たっていう書き置きもね、見つけ出したいな、と」

「それもキッチンにあるのかな?」

「可能性はありますけど、でも僕、前回引き出しとか収納は全部確認してるんですよね」

「無かったんだよね?」

「無かったですね。でもキッチンに何も無いってのは、ちょっと考えられないんでね。もう一度しっかり探索したいと思います」

「了解」


 画面には次回予告が流れる。テロップには【降霊の部屋】【霊の行方】【『ここにゆうれいはいません』】【次回、除霊の家 最終章】などの文字。


(映像終了)

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