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黄泉平坂サブch【除霊の家 中編】①

【除霊の家 中編】202✕年4月24日配信


※以下、動画の一部書き起こし。

 以前の生配信の映像を背景に次々にテロップが流される。【幽霊が視える人達の間で『幽霊が全くいない場所』がある、っていう噂があるんですって】【『除霊の家』っていうのが北関東の方にあるらしくて】【『除霊の家』】

 背景が前編の映像に切り替わり、不穏な重低音が流される。【我々は噂を頼りに『除霊の家』へとやってきた】【今回、幽霊が視えるKさんに同行をお願いしたが】【Kさんは家の中を覗いた途端、体調を崩してしまう】【Kさんは何を視たのか】【Kさん曰く】【『家の中には幽霊もその残滓も視えなかったし感じなかった』】【カズヤが1階を探索】【廊下は御札や魔除けの像で溢れていたが】【部屋の中は異様に片付いていた】【その時、2階からタクミの叫び声が聞こえる──】


 クラシック音楽が流れ始め、チャンネルのオープニング動画が流れる。フラッシュのように暗転する中、テロップが映される。【黄泉平坂サブch】【特別編】【除霊の家 中編】


 映像は前編のラスト部分から再開される。

 ガタガタっという大きな音と共に、タクミのものと思われる叫び声が聞こえる。

「えっ!? 今の、タクミさん? タクミさん! 大丈夫ですか!?」

 カズヤが階段の方へと駆け寄る。

「タクミさん!?」

「カズくん、ちょっと、ちょっと来て!」

 階下から声を掛けるカズヤにタクミが応える。画面にはタクミの顔が映される。その顔からは恐怖の感情が読み取れる。


 暗転した画面に【時間は少し前に遡る】のテロップが流れる。


 画面が切り替わり、階段を上るタクミの様子が映される。

「ええっと、じゃあ僕の方はね、2階を見ていきたいと……それにしても、すごいな……壁は御札、この、ステップのところの仏像……触らないように気をつけないと……」

 怪談は登ってすぐ右手に折れる。タクミは手をついて壁の御札を剥がさないよう、足下の像を倒さないよう、狭い階段を注意して上っていく。

「──っと。2階は……ああ、1階の廊下と同じだ……御札に仏像……」

 タクミが手にしたライトで廊下を照らす。左手に一部屋、右手に二部屋(手前はトイレのようだ)、そして突き当りに一部屋。

「あ、ちょっと待っ……突き当りの部屋のドアだけ、御札貼られてないな……じゃあ、ちょっと手前から見てくか」

 話しながら右手手前の扉を開ける。中はトイレで、きれいに片付けられている。

「ここはトイレか……ここには御札とか仏像とか無いんだな……」

 ライトで隅々まで照らすが、小さな置物ひとつなく、トイレマットや便座カバーも何も無い。便座も上げてみるが、特に気になるところはない。


 画面が切り替わり、廊下に出たタクミが、トイレと対面にある部屋の扉の前に立っている。

「ここは……ん? あれ、ここも……何も無い、何も無いな……」

 そこは広めの洋室だったが、部屋の中には家具は何も残されていなかった。ガランとした空間に、扉の開閉音が嫌に大きく響く。

「ここも、御札とか何にもないな。部屋の中には無いのかな? 部屋の中に何か……入らないようにしてるとか……もしくは、出ていかないように、とか……?」

 クローゼットの扉を開ける。その中も空っぽだったが、クローゼットの中の壁にだけは数枚の御札が貼られていた。


 再び画面が切り替わり、トイレ向かって左手の部屋。そのドアノブへタクミが手をかけ、押し開ける。

「……あっ、ここも……ここも何も無いね。ええ、何かすごい……部屋の中はすごい片付いてるなあ……」

 画面が切り替わり前編の動画で流された、1階の様子が映される。【1階同様、2階の部屋もきれいに片付けられている】のテロップが流れる。【家財等の処分は購入者に任せる】生配信時の映像が挿入される。【『家財等』とは、いったい何のことを指しているのか】のテロップが流れる。

「こっち側の壁にだけ、ちょっと御札があるだけか……クローゼットも……空だ。いやあ、何かちょっと。逆に不気味……」

 ライトで部屋の隅々まで照らすが、部屋の中には何も無い。埃も大して積もっておらず、20年間空き家の状態でいるとは思えないほどきれいだ。

「1階はどうなのかな……前に1階だけ妙に片付いてる廃墟には行ったことあるけど……」

 話しながらタクミは廊下へと出る。右手にライトを振ると、廊下の突き当り──最後の部屋の扉が目の前にあった。

「この扉にだけ御札が無いんだよな……意図的なのか、それとも剥がれちゃったのかな?」

 床をライトで照らすが、剥がれ落ちた御札は見当たらない。

「とりあえず、開けてみるか……」

 ゆっくりと扉を開き、部屋の中をライトで照らす──。


「うわあっ!! ちょっ……マジか!?」

 タクミは慌てて目の前の扉を閉じる。勢いで少し後ろによろけてしまい、危うく足元の仏像を倒しそうになった。

「タクミさん!?」

 カズヤの声が階下から遠く聞こえる。

「カズくん、ちょっと、ちょっと来て!」


 画面が切り替わり、カズヤとタクミが廊下に二人立っている。

「ええと、今ね、急遽、合流しまして」

「はい」

「ちょっと、この、2階の奥の部屋が、タクミさん曰く、あまりにも異常な状態ということで。二人でですね、中の方、見ていきたいなと思います」

「ちなみになんだけどさ、1階てどんな感じだった? 2階の部屋はさ、全部すごいきれいに片付いてて。ここ以外ね」

「1階も基本的にめちゃくちゃきれいでした。廊下以外はそこまで、異常なところもなかったですね」

「あ、やっぱり片付いてたんだ……」

「だからちょっと、不動産屋さんが言ってた条件? 家財等の処分は購入者に任せるっていうのは、何かちょっと、違和感がありますよね」

「カズくんも思った? 僕もさあ、何かちょっと……御札とか仏像とかをね」

「あんまり『家財』とは言いませんよね。でも『等』、『家財等』か。うーん……それともこの部屋の中に……?」

「この部屋はね、ちょっと、ヤバいよ」

「行ってみますか」

 話しながらカズヤは奥の部屋の扉を押し開ける。


「……うわっ! これマジか!」

「──うわあ、やっぱ、ちょっと……ヤバ……」

 画面にはライトに照らされた室内の様子が映される。壁や天井はもちろん、床にもびっしりと御札が貼られており、置かれた仏像の数も廊下の比ではない。部屋の隅には盛り塩や、焼け朽ちた線香の残骸などが散乱している。【あまりの異様な光景に言葉を失う二人】とテロップが流れる。

「ここ……うわ、ちょっと、入るのヤだな……」

「あ、でも、カズくん足元」

「足元?」

「ほら、何かさ、ちょっと通路みたくなってない?」

 タクミに言われ、カズヤは部屋の床をライトで照らす。確かに、仏像と仏像の間に御札が貼られていない場所があり、それは扉から通路のように続いているように見えた。

「ホントですね……これ、何処に続いてるんだろ……あ、ロフトだ。左手、ハシゴですね」

「ああ、ホントだね。え? 行く?」

「まあ、行くしかないですよね」

 そう言ってカズヤは仏像を蹴飛ばさないように注意しながら歩き始めた。タクミもその後を追う。

「えっと、じゃあ僕からハシゴ登りますね」

「マジで気をつけてね」

「タクミさん、ちょっと支えてて下さいね」

 一段一段しっかり確かめながら、カズヤは梯子を登る。画面にはその様子が映される。梯子を登るにつれて、部屋の全容が見えてくる。それはまるで彼の世と此の世を繋ぐ道のようにも見えた。

 梯子を登りきったカズヤがロフトの上をライトで照らす。画面にその様子が映し出される。

「タクミさん」

「カズくん大丈夫?」

「ちょっと、この家、思ってたよりヤバいかもです」

 ロフトの上には小ぶりなテーブルが置かれ、その上には閉じられた三面鏡が置かれていた。三面鏡の前には茶碗に盛られ干からびたご飯、その左右には蝋燭が立てられ、まるで祭壇のように見える。そして、テーブルの周りの床には、無数の引っ掻いたような傷がついていた。

「タクミさん、ちょっと、一回、外出ましょう」


 暗転した画面に【危険を感じた我々は一時撤退することにした】とテロップが流れる。

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