【ウィークリー生配信】202✕年2月9日配信
(略)
「それでですね、タクミさん」
「ん? なに?」
「ここからが本題なんですけど」
「え、ちょっと待って、じゃあ今までの会話は何なのよ」
「前フリですね」
「長っ。長過ぎない? 前フリ……」
「配信始まって……30分と、少しですか。ちょうど良いですよね。ちょうど、温まってきた感じで」
「ええ……」
「それでですね、タクミさん」
「はい」
「あの、Kさん。Kさんっているじゃないですか」
「Kさん」
「僕達の共通の知り合いで、その、幽霊が視えるというね、方。Kさんという方がいらっしゃるんですけど」
「ああ、Kさんね。え? 会ったんだ。聞いてないけど」
「言ってないですからね。ちょっと、驚かせようかと思いまして」
「元気だった?」
「うん。まあ、その辺は配信終わってから。で、Kさん。Kさんとお会いしまして。最初はね、いつもみたいに『何か最近怖い体験とかしました?』とか『ヤバい場所の情報ありませんか?』とか話してたんですけど」
「『ヤバい場所』って聞き方がヤバいよね」
「で。で、こう、色々お話聞かせてもらったんですけど、最後に、めちゃくちゃ面白い、興味深い話を教えて下さいまして」
「面白い話?」
「そう。あの、僕もタクミさんも、まあ言ってしまえば、視えない人じゃないですか」
「幽霊がね」
「まあだからこそ、幽霊を実際に視たくて、こんな頭のおかしいチャンネルやってね、曰く付きの廃墟だなんだって突撃してるわけじゃないですか」
「ちょ、言い方……うん、まあ、そうね。そうよ」
「だから、視える人が、視ている世界って僕らわかんないですよね?」
「うん、そうだね」
「幽霊が視えるKさん曰く──こっから話の前提部分になるんですけど──この世界って、いたるところに、幽霊と、その残滓が、ある。いる? らしいんですよ」
「え、え、え? どういう意味?」
「説明しますね。あの、Kさん曰く、その、ひとが死ぬと魂が抜けて──霊ですね──それで肉体が残るじゃないですか」
「うん」
「幽霊と、抜け殻である肉体が残る。それで、幽霊が成仏したあと。幽霊が成仏したあとには、その抜け殻が──Kさんは残滓って言ってたんですけど──そういうのが残るんですって」
「へぇー!」
「それっていたるところに残っていて、『視える人』からすると、空気中のホコリくらいの感じなんですって」
「それって悪いものなの?」
「いや、それ自体は悪いものではないらしくて。場所によって濃い薄いはあって、あんまり濃いとちょっと気持ち悪くなったりするみたい」
「ああ、あれだ。ゲームとかでみる、あの、瘴気。瘴気みたいな?」
「そう! Kさんも言ってた。えっと、でですね、なんかそれって、まるで化石のように、分解もされず朽ちることなくずっと残ってるんだって。だから、いたるところにあって、神社とか聖域みたいなところにも普通にあるものなんだって」
「え? ああ、悪いものじゃないから、神社とかにもあるんだ」
「そう」
「で? これがその、今日の本題?」
「ここまでが前提ですね」
「あ、そうかそうか」
「とにかく、幽霊の残滓みたいなのって、何処にでも必ずあるものなんですって。それを踏まえて聞いて欲しいんですけど」
「はい」
「幽霊が視える人達の間で『幽霊が全くいない場所』がある、っていう噂があるんですって」
「……ほお」
「ピンときてない?」
「うん、ちょっと」
「幽霊やその残滓は、世界中どんなところにも絶対あるんですよ。で、残滓は悪いものではないから、除霊……除去も出来ない、と」
「……なのに、それが全く無い場所がある、と」
「なんか、こう、ゾクッとこないですか?」
「ちょっとわかってきたかも」
「その原因が人為的なものなのか、それとも神の力的な何かなのか、それはわからないですけど。何かこう、未知の世界というか、異次元的な何かというか。僕、すごいオカルトを感じたんですよね。この話を聞いた時」
「うん、わかるわかる」
「本来であれば我々、むしろ『幽霊がいる場所』に行きたいわけで、『幽霊が全くいない場所』なんて、ねえ、一番どうでも良いじゃないですか」
「まあ、言い方はアレだけどね」
「あのー、あるじゃないですか。あの……『The Backrooms』とかでいう……リミナルスペース?」
「ああ、あの、建物の中に誰もいない怖さ、みたいな?」
「そう。何かね、僕、この話にそういう不気味さを感じたんですよね」
「ああ、なるほどね。理解したわ。うん、これは怖い話だね」
「で、僕、このチャンネル──メインチャンネル的には趣旨が違うんでダメですけど──サブチャンネルの方で突撃してみたいなって」
「ああー、なるほどね。サブチャンで」
「で、Kさんはその場所までは知らないということで」
「そうなんだ」
「で、僕は僕で、KさんはKさんで、知ってそうな人に聞いてみたんですよ」
「相談してくれれば良かったのに」
「でもタクミさん……友達いないじゃないですか」
「……まあ、そう。そうね」
「それで僕、色々聞いて回ったんですよ。僕の知ってる限りの『視える人』とか、まあそのスジの人に。で、この噂自体を知っている人はけっこういたんですけど、やっぱり場所まで知ってる人はいなくて」
「あ、いなかったんだ」
「そうなんですよ。でも噂自体はほんと知ってる人多くて」
「へぇー、僕は知らなかったけど」
「僕も、かなりオカルトアンテナの感度高い方ですけど、全く知らなかったです」
「あー、アンテナ。アンテナね。アンテナに引っかかってこなかったんだ」
「こなかったですねえ。アンテナに」
「アンテナね」
「アンテナ……アンテナはもう良いですから。えっと、ほら、何でしたっけ」
「かなり有名な噂だったんだね。視える人達の間では」
「そう! そうなんです。えー、でも場所までは、知ってる人いなくて。って、僕、おんなじ話ししてますね」
「まあ、ほら、大事な話だからね。2回……」
「あ、ちなみに、ネットとかSNSとかも調べてみたんですけど、そっちの方では全く情報出て来なかったですね。そこもまた不気味というか──」
「──あ、ねえ、チャットのコメント……」
「あ、いらっしゃいますね! 知ってるって方……あ、あー、でもやっぱ場所は知らない、と。でもね、情報、ありがとうございます。あ、で、そう! そうなんですよ!」
「急になに?」
「いや、視聴者さんにね、情報提供をお願いしたいな、と」
「ああ、なるほどね」
「これが本題です」
「ここまで長かったねえ」
「えーっと、ということで」
「はい」
「その『幽霊が全くいない場所』についての情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、是非ですね、DMをいただければと思います」
「僕も、友達にね、聞いてみます」
「そうですね。『友達が全くいないタクミさん』にもね、頑張っていただいて」
「オカルトだよね」
「はい。あの、おふざけはちょっとやめていただいてですね。本気で、情報提供の方、よろしくお願い致します」
「よろしくお願いします」
「それでは。ヨモツヒラサカchのカズヤと」
「タクミでした」
(映像終了)