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ヨモツヒラサカch【#17静岡最恐の廃ホテルへ 後編】

【#17静岡最恐の廃ホテルへ 後編】201✕年6月14日配信


※以下、動画の一部書き起こし。

 画面にはオープニングとして、前回のダイジェストが映っている。その後、ヨモツヒラサカchのオープニング動画が流れる。

 オープニングが終わると、画面にはカズヤとタクミ、二人の姿が映される。

「ええ、今回は静岡遠征スペシャルということで、こちらのホテル〇〇へやって来ているんですが、前半戦ではね、上の階の探索をして回ったんですけど、後半戦では地下室をね、探して、調査したいと思います」

「まず地下室への階段を探さなきゃだよね」

「そうですね。館内の案内、地図はあったんですけど、そこには地下への階段は書いていなくて」

「僕らがさっき屋上まで行くのに使った、お客さん用のなのかな、階段も1階より下には続いてなかったもんね」

「はい。なので、おそらく従業員通路からじゃないと行けないようになってるんじゃないかな、と思うんですね。ええと、従業員通路の入口は把握しているので、さっそく、そちらに向かいましょう──」


 画面が切り替わり、1階を探索する二人の姿が映っている。

「やっぱり物はかなり多いですね」

 二人は廊下を進みながら、順に部屋の扉を開けては中を確かめる。部屋の中には布団や浴衣、ちょっとした調度品など、当時を思わせる物が多々残されている。

「やっぱり有名スポットだから、あれだね、誰かが来た痕跡みたいのもさ、あるね」

 タクミの言う通り、そこらに転がったゴミの中には、明らかに最近の商品のラベルが付いたペットボトルやお菓子の袋が見える。

「ねえ、タクミさん、わかります?」

「え? 何?」

 カズヤが廊下の先に向かって懐中電灯で照らす。

「ここ、廊下もけっこうゴミ──ゴミと言うか物が散らかってますけど、こう……ほら、廊下の真ん中には落ちてないんですよね。たぶん獣道と同じで、色んな人が通るから」

「ああ、なるほどね。確かに。ほんとだ」

「ただ、ちょっとそれだけでは説明出来ない気がするんですよ」

「何?」

「これ、ほら、そこのペットボトルとかも、ちゃんと並べてあるように見えるじゃないですか」

「ああ、確かに」

「我々もそうですけど、こう、廃墟にお邪魔して、まあこういった、散らかったところを通ることはよくありますけど、普通は掻き分けて歩くと思うんですよ。ガサガサと」

「そうだね。ああ、なるほどね。何かこう、元々立たせてあった物を倒しちゃった時なんかは元通りに直したりするけど、こんな風に、ね、ペットボトルをわざわざ並べたりはしないね」

「ですよね? こんなところに捨てる人間が、わざわざ隅に立てて置いてね、並べて、捨てるとも考え難いですし。だから、何というか……ちょっと異様な雰囲気がありますね。誰がこんな事を、って」

「あ、そういえばさ、前に、1階だけ妙に片付いてるところあったよね」

「ああ……学校?」

「そうそう!」

「ありましたね。ああ、そうですね、そこと似たような異様な、雰囲気がありますね──」


(中略)


 画面が切り替わり、地下室へと続く階段の前に並ぶ二人の姿が映っている。

「これだ! この階段だ!」

 カズヤが懐中電灯で従業員通路内にある階段を照らしながら興奮している。廊下と階段との間に、特に扉の様な物は付けられていない。

「ああ、ほんとだ、これだね」

「ええと、この地下室には女性の霊がね、出るという噂があります」

「詳しい曰くとかはないんだよね?」

「そう、ですね。僕が調べた限りは、この地下室で何か事件とか、そういったものがあったという情報は出てこなかったです」

「じゃあ、降りてみようか」

 タクミを先頭に狭い階段を降りていく。階段も含めた上下左右がコンクリート造りで、建物の他の部分と比較して荒れた感じがしない。

「いや、ここすごい、すごいひんやりするね」

「まあ周囲がコンクリートなんでね、周りに比べて、こう、空気が冷たくなるのはわかるんですけど、それにしても冷気が凄いですよね」

 十数段の階段を降りると、突き当りにはひと一人分くらいの四角いスペースがあり、正面には無機質な鉄の扉が閉じられていた。

「開く?」

「……あ、開きますね」

 ところどころ錆の浮いた扉は、大した音も立てずに意外なほどあっけなく開いた。扉の向こうには十六畳程の空間が広がっており、段ボール箱や什器などが整然と並べられていた。

「倉庫ですね」

「そうだね……ちょっと、黴臭い」

 二人はそれぞれが手にした懐中電灯で部屋の中を照らして回る。

「パッと見た感じは、特に変なところはないですね」

「うん、でもここ入ってからずっと何か、ひとの気配みたいなの感じない?」

「確かに、この部屋に入ってから、ずっと誰かがいるような気配を感じます」

「何か、誰かから見られてるような感じがするんだよね……」

 画面に『何者かの視線……?』とテロップが表示される。


(中略)


 画面が切り替わり、手持ちカメラによるタクミのアップが映っている。

「ええ、と、それでは一人検証始めていきたいと思います」

 設置された定点カメラと手持ちカメラの映像とが交互に映される。

「これ、段ボールの中は……あ、お皿とか、何だろ、お膳? 宴会用の物とかが片付けられてる感じなのかな」

 タクミは箱の中身を確認したり、店に置かれた物品を見ながら奥へと進む。部屋の奥、向かって右手の隅には、一畳ほどの何も置かれていないスペースがある。

「何でここ……ここだけ物が無いんだろう。普通さ、こういう倉庫って奥から物を詰めてくと思うんだけど。だから、手前にスペースがあるとか、それならわかるんだけど、こうやって一番奥の、こんな隅っこに……あ、これあれだ、後から棚を動かしてる」

 ライトに照らされた先には、今まで等間隔に並べられていた棚が、不自然且つ雑然と重なり合った様子が見える。

「ええ……でも、何でこんな……」

 手持ちカメラの映像が、空きスペースの壁面へと切り替わる。数秒間、何も無い空間を映した後、画面は壁に書かれた落書きへとズームされていく。

「これ、落書き……あれ? ちょ……っと待って。これさ、この文面、何か見覚えある……」

 コンクリートの壁面には、太めのマーカーのようなもので『実家で待つ 〇〇』書かれていた。(『〇〇』は個人名なので映像ではモザイクがかけられている)

「ええ、ちょっと、ヤバ……ええ、何処で見たんだっけな、これ……いやちょっと待てこれ、違うな、この建物で見たんじゃない。え? でも、そんな事あるか……? でも、マジで、これ絶対、別の場所見たことある。『実家で待つ 〇〇』、この『〇〇』も、たぶん同じだった気がするんだよなあ……」

 画面には焦った様子のタクミの顔と、壁の落書きとが交互に映される。

「そもそもさ、実家で待つって、誰を……? え、で、それをこんなところに書いてさ、誰に伝えたいの? だってさ、ここ、こんな曰く付きの廃墟の、しかもめちゃくちゃ奥まったところだよ? こんなところに書いて誰が見るんだよ、って話じゃん? でも、ここに書くって事は、その、実家に帰ってきて欲しい誰かが、ここに来て、この落書きを見るだろう、って思って書いてるって事だよね……?」

 一瞬画面が暗転し『女の幽霊へのメッセージ……?』とテロップ。


(中略)


 動画の終盤、画面が切り替わり、ホラー調のBGMと共にテロップが順に流れる。

『タクミが地下室で見た落書き』

『実家で待つ 〇〇』

『タクミはこの落書きを別の場所でも見たという』

『帰宅後、タクミの記憶を探りながら過去の動画を見直してみたところ、ある動画に全く同じ文面の落書きが書かれているのが見つかった』

『実家で待つ』

『それは【#9廃校舎に響く足音】で訪れた廃校舎にある保健室の壁に書かれていた』

 画面が切り替わり、廃校舎に書かれた落書きと、今回のホテルで見つけた落書きとが交互に映される。

『実家で待つ』

『いったい誰を?』

『なぜこんなところに?』

『実家で待つ』

 再び暗転した画面にヨモツヒラサカchのタイトルロゴが映される。


(映像終了)

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