【お蔵入り】201✕年7月2日収録
神奈川県某所
22:13 駐車場
「──えー、はい。あれ? 回ってる?」
「回ってる回ってる」
「やべっ、緊張してきた。よし、こっから……こっから、ね、仕切り直しで……えー、はい。ヨモツヒラサカchのカズヤです」
「タクミです」
「……あれ? 俺も自己紹介した方が良いの?」
「……どう思う?」
「俺達二人だけで良いんじゃん?」
「そうね、じゃあキクチさんはお口チャックで」
「了解。じゃあもっかいいこうか──どうぞ──」
「ヨモツヒラサカchのカズヤです」
「タクミです」
「ついに始まりましたね、タクミさん」
「始まったねえ」
「それでね、こん、今回は初回ということで、初回なんですけども」
「カズくん落ち着いて」
「はい、今回初回なんですけども、やっぱりね初回だからってヌルいことしてたら他のチャンネルに負けちゃうな、と」
「うんうん、そうだね」
「なので、こちら、今回は神奈川県の──K市。まあ、その、具体的な場所は伏せますが、地元では神奈川最恐と呼ばれる、廃病院へやってきました!」
「いやー、ヤバいよね」
「ここはね、ほんっとにヤバいです。えー、今回撮影の為にこの建物の所有者の方に許可を取ったんですけれど、その方からもほんっとに何回も止められて。やめといた方が良いって」
「ええ……」
「ここはね、確実に出ます。曰くとかはね、中を探索しながらお話出来ればなと思ってますので。ね、タクミさん、さっそく、中行ってみますか」
「行きますか」
「それでは、ヨモツヒラサカch、スタートします──」
22:25 駐車場〜病院
「足元ヤバいね」
「いやこれホント中まで行けんの?」
「キクチさんお口チャックで」
「あ、ごめん」
「えっとね、たぶんこっち──」
「あ、こっち道になってんのね」
「そうそう──」
22:33 エントランス前
「ええっと、ここが入口になっています」
「扉とかもう全部無い感じなんだね」
「ですね。だから、ほら、こっから見ても落書きが凄いですね」
「ホントだ」
「本来この敷地自体は立入禁止で、僕らは許可もらって柵越えて来てますけれど、立入禁止で、誰も入れないはずなんですけどね」
「めちゃくちゃ入ってるよね」
「ですね──取り敢えず中、入ってみます──」
22:49 1階
「ヤバいね、怖いわ、マジで」
「あ、曰くとか、良いの? 何処で話す感じ?」
「いやー、ちょっ……ちょっと、もうちょっと落ち着いてからにしましょうか」
「カズくん、ビビってますねえ」
「いやビビるっしょ。マジ……マジでホラーchの先輩方、ヤバすぎるっしょ……」
「俺が話そうか?」
「いや、大丈夫。一旦、エントランス戻りましょうか──」
23:02 エントランス
「えー、今ね、ちょっと1階を見て回ったんですが」
「落書き凄いね」
「うん、かなり荒らされている感じですね」
「ちなみにここにはどんな曰くがあるの?」
「ここはですね、実は廃墟になる前に何か事故があったとか、そういうんじゃ無いんですね」
「あっ、そうなんだ」
「はい。ここは、廃墟になった後に、女性がここで殺されたらしいんですよ」
「ええ……」
「それがどうやら、2階にある病室──203号室らしいんですね」
「それは……? 何か、新聞とかに載って──?」
「いや、あくまでも噂レベルではあります。ですが」
「ですが?」
「ここ、病室にけっこうベッドとか残ってるんですけど、203号室のベッドには、ですね、こう、シミが……」
「シミ? 血、とかってこと?」
「ではないか、ということですね」
「マジかあ……」
「1階は、まだちょっと奥の方までは見てないんですが、先にですね、2階の探索に移ろうかと」
「203号室」
「ですね。では、さっそく、行ってみます──」
23:15 2階
「階段ヤバかったね」
「いやほんと、怪我したらシャレならんですよ」
「ここまでで何分くらい?」
「編集して、ってこと?」
「そうそう、撮れ高的に?」
「あー、いや、わかんないですね……」
「あ、ごめん、ちょっと喋るね。えっとね、取り敢えず回してる時間としてはね、えーっと、50分くらいかな──」
23:18 203号室
「ここですね、203号室」
「プレートあるね」
「それでは、えっと、殺人事件があったという、この、ね、203号室に入ってみたいと思います」
「うわっ、カビ臭いね」
「ホントだ……ああ、ここも落書き凄い」
「ね。みんな勇気あるねえ」
「ベッドは4つありますね──うわっ!」
「わっ! あ、これかあ! これだね」
「ええ、映ってるかな、これ、このベッドね、見て分かる通り、マットレスに黒いシミがべっとり──」
「ホントだったんだね、噂」
「ホントですね……」
「どうやって殺されたとかは、わかるの?」
「その、ネットの情報にはっきり書いてあったわけじゃないんですけど、いや、これ、刺したとか以外ありえなくないですか?」
「うんうん、いや、そうだよ、これ」
「……あ、では、タクミさん、一人検証やります?」
「ちょ、唐突過ぎん?」
「もうちょっと、あった方が、良い感じですか?」
「いや、ディレクションはカズくんにお任せします」
「えーっとね、ごめんなさい、ヤバいね、実際、こう、これ眼の前にすると」
「うんうん、わかるよ。ちょっと一回出る?」
「そうですね……キクチさん、ちょっと部屋の中ぐるっとだけ撮ってもらって──」
23:35 203号室
「えーっと、それではジャンケンで負けた僕が、一人で! この203号室の中で30分、何か霊的な現象が起こらないか、検証したいと思います」
「じゃあ僕らは外に……」
「いやいやいや、カズくん達はすぐそこに居てよ。俺、怖いよ。その辺は、ほら、編集でどうにかなるっしょ? 静かにしてればさ」
「了解、了解。お互い安全第一で」
「頼むよ? ──えっと、じゃあここ編集点で。それでは、さっそく、中の方行ってみます」
「よろしくお願いします」
「うわ……ええ、一人ヤバいな……ヤバ……」
23:59 203号室
「ねえねえカズくん!」
「タクミさん? タクミさん大丈夫ですか?」
「うん、いや大丈夫なんだけどさ、これ撮れ高って大丈夫なのかな?」
「いや、それは後で映像見てみないとわかんないっすよ……」
「何かさ、ほら、変な音とかも全然聞こえないんだよね」
「僕とキクチさんが入口立ってるからですかね?」
「え? それで何も起こんないって、オバケ、シャイ過ぎん?」
「まあ……はい、ちょっとね、じゃあ撮れ高に期待して、編集でどうにかなることを祈りましょう──」
00:08 階段
「カズくん、3階はどうする? 何か曰くとかあるの?」
「いや、3階には特に曰くとかは無いですね」
「どうする?」
「……いや、これマジで、本気の相談なんですけど」
「うん?」
「ちょっとここまでグダグダ過ぎるんで、一回まるっと仕切り直しませんか?」
「ああ……まあ、うん、そうだね、その方が良いかもね。それはちょっと、俺も、感じてた」
「え、え、あごめん、それはまた日を改めてってこと?」
「今から駐車場戻って、オープニング撮って、って体力、ぶっちゃけもう無くないですか? 明日も仕事あるし」
「あ、なるほど、そっから……だとキツいね」
「管理人さんにはまた改めてアポ取る感じ?」
「ですね、一応、日にち伝えて来てるんで……まあ今日は機材トラブルってことで」
「まあ今日は良い練習になったんじゃん?」
「了解。じゃあ撮影はここで止める……?」
「いや、一応、練習で編集やってみようと思うので、帰り道も撮ってもらって──」
(以下略)