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第37話 「伴になりたい?」

「珍しいね、弥幸お兄ちゃん」

「断り続ける方がめんどくさかった。ここからは任せたよ」

「結局、協力するのは私なんだね。楽しいからいいんだけどさ!」


 放課後になり、三人は弥幸の家に集まった。

 弥幸の部屋に、ちょうど学校から帰ってきた逢花も呼び、すべてをぶん投げた。


 そんな彼の態度に三人は呆れつつ、頼られて嬉しそうにしている逢花を見ると文句の一つも言えなくなってしまった。


 三人の心境など気にせず、逢花はいきなり本題に入った。


「まず、”とも”をどこまで理解しているかを聞きたいんだけど、教えてもらってもいいかな」

「力を分けられた人――って認識しているよ」


 簡単にしか説明を受けていない凛と翔月は、こう言うしかない。

 凛からの返答に、逢花は腕を組み「うーん」と腕を組み考えた。


「えっとね。伴っていうのは、付き添い人──とはまた違うか。うーんとね。眷属けんぞくって知ってるかな?」


 逢花は、上手い例えを探しながら説明する。


「眷属は、知ってるけどよ……」

「良かった。それと似たような感じなんだよね。つまり、一度伴になると力を分けてもらえるけど、ずっと弥幸お兄ちゃんを護らないといけないの。一度結んでしまった伴は、絶対に解除できない。だから、正直、もっと真面目に考えた方がいいよ。伴になるということは、戦闘が当たり前の生活になるってことだから」


 説明を聞いて二人が恐怖で慄くかと思っていた逢花だったが、冷静を保っていた二人に感心した。


 「確認なんだけど」と、凛が手を上げたため、逢花が視線を向けた。


「つまり、一度した契約は、二度と破棄することは出来ないって認識で大丈夫?」

「大丈夫だよ。だから、戦闘から逃げたくても許されないし、怖くても、痛くても苦しくても。最後まで弥幸お兄ちゃんのそばに居続けなければならないの。その先に、何が待っていても──」


 そう口にする逢花の顔は、本気そのもの。

 弥幸を裏切ることなんて絶対に許さないというように、翔月と凛をギラギラと光る瞳で見ている。


 二人は豹変した逢花から放たれる圧により、肩を震わせ顔を青くする。

 星桜はそんな三人を見つつ、当の本人を横目で見た。


 当の本人である弥幸は、我関せずという態度を貫き寝ている。

 その姿を見て苦笑いを浮かべる星桜だったが、直ぐに顔を引きしめ、三人の会話に耳を傾けた。


「それでも、伴になりたい?」


 星桜が視線を戻すと、いつの間にか逢花の表情はいつものニコニコと人懐っこい笑みに戻っていた。

 翔月と凛も安堵の表情を浮かべ、息を吐く。安心し、翔月と凛は顔を見合せ笑った。


「それなら、私にとって都合が良いってことね」

「──え? 都合が良いって、なにが?」


 凛の予想外の言葉に、逢花は思わず聞いた。


「だって、私達は裏切ることを許されない。それはつまり、赤鬼も同じ条件でしょ?」

「ま、まぁ。そうだけど」

「なら、心から安心してあいつの隣に立っていられるよね。それなら、喜んで伴でも何でもなるわよ!!!」


 凛はキラキラと目を輝かせ、宣言する。その隣で、翔月も口元に笑みを浮かべ頷いた。


「俺も、絶対に裏切らないし、力になる。自分なりに頑張るよ」


 その二人の言葉に、逢花は驚き目をパチパチとさせる。星桜は手を叩き「やった!!」と大喜びだ。

 その声に弥幸は目を覚ましたらしく、呑気に欠伸をしながら起き上がる。


「話は終わったの?」

「呑気に寝てんじゃないわよ……。あんたのことなのに」

「僕は協力するとは言った。それで、逢花に投げた。それ以外に僕のやることある? 貴重な睡眠時間を奪わないでほしいよ」


 欠伸を零しながら言う弥幸に、凛は拳を握った。

 青筋を立て、今にも殴り掛かりそうになっている凛を、星桜が全力で止めた。

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