一人では広すぎると感じる部屋で、
雑誌自体は数年前の古いもの、テレビから聞こえる明るく、人によってはうるさいと思ってしまう軽い口調が聞えてくる。
その声が聞こえた時、タブレットから目を上げた結花。
番組はトークバラエティ、司会の今人気のお笑い芸人が上手く番組を回している。
今はなにかミニゲームなのだろう。画面にはヘルメットを付けた金髪ギャルが、少し日焼けした肌に生クリームを付けながらリアクションをとっていた。
「なにやっているのよ……」
知り合いのふざけた姿に結花は呆れる。この前、今画面に映っているギャル――アイラこと
また炎上するのだけはやめてほしい、結花はテレビからタブレットに目を動かす。
タブレットに写っているのは、数年前、アイラがモデルをやっていた時の雑誌だ。雑誌なのだからうるさくはないが、服装はうるさい。
自分とは正反対の服装だ。
そんなことを結花が考えていると、ガチャリと音が鳴り、玄関ドアの開く音がした。
少し騒がしいぐらいの足音を鳴らしてひょっこり顔を出したのは、今まで画面に映っていた人物――。
「見た?」
愛羅はテレビの中とは全く同じ雰囲気で笑顔を向ける。
「見たわ。あれが愛羅の言っていた面白いもの?」
「そうだよ。いやあ楽しかったなあ」
「そう」
タブレットの画面を消しながら素っ気ない態度の結花に、愛羅は持ってきた荷物を放り出して泣きつく。
「なんでええ! 素っ気ないのお!」
そんな愛羅に面倒そうな息を吐く。そして大きく息を吸い込んで――。
「アイラさんの天真爛漫さを凄く感じました。見ているこちら側も楽しくなってしまいますね」
「やだぁ、女優モードやめてぇ‼」
アイラとは正反対、清純派女優としての姿だ。
カメラの映り方を意識した仕草に、愛羅は涙を浮かべる。
「分かったわ。それより、誰にも付けられてないわよね?」
「その点はバッチリ」
さっきまでの涙はなんだったのか、グッと親指を立てた愛羅が答える。
清純派女優として現在大注目のユイと、歯に衣着せぬ発言でバラエティーなどに引っ張りだこのギャルタレントのアイラ。正反対の二人がこうして仲良くなったのは些細なことからだった。
しかし、アイラはその性格上、何回かSNSや番組での発言で炎上しているということもあり、ユイは事務所から、プライベートまで突っ込みたくは無いが、ユイのイメージと、これからのためにも会うことをできるだけ控えて欲しい、と言われている。
「ならよかったけど……本当にするの?」
事務所の言っていることは理解できる。今はどんな些細なことでもマイナスイメージに繋がりかねない。もしかすると、ユイだけでなく、アイラにも被害が及ぶかもしれない。
――だけど理解はしているが、納得はしていない。
ユイとアイラとしてならそう言われたとおりにしよう。だが、結花と愛羅としてはそんなことを聞く気には無い。以前事務所でそう言ったら、解ったからせめて絶対バレないようにしてくれ、と頭が痛そうな様子だった。
「あったりまえじゃん!」
胸を叩いた愛羅は、持ってきた袋の中から服を取り出す。
まず取り出したのは、黄緑のノースリーブニットだ。
「じゃーん。わたしの服ー」
「見たら分かるわよ」
服を受け取った結花の目元が一瞬固まる。
「サイズがぴったりね」
「そりゃ、結花のサイズ知ってるしねー」
愛羅が指でフレームを作って結花の身体に向ける。
「背丈があまり変わらないからでしょう!」
ノースリーブニットで身体を隠す結花。
二人の背丈はあまり変わらないというだけで、スリーサイズなど、その他にも色々と差がある。しかし流石は元モデルの愛羅だ、その差が意味をなさない服を持ってきてくれたのだ。
「まーそういうことにしてやるか」
「なによ、もう……」
笑みを浮かべる愛羅。テレビで見るような笑いではなく、大切なものを慈しむような笑みだ。
結花も、お淑やかで上品な、笑う時に手を口に当て笑うユイとしては、絶対に見せないであろう表情で愛羅を見る。
どちらもオンとオフに差は殆ど無いのだが、今この時だけは互いにしか見せない表情で笑い合う。
「明日のデート、楽しみだね」
「ええ、そうね」
かねてから約束していたデート。殆ど空いていないスケジュールをなんとか調整して獲得した一日。
事務所からは絶対バレないようにしてくれと言われた通りに二人だとバレない方法――互いの服を交換すること。
見た目もキャラも正反対の二人だ。服装と、メイクや髪型までも入れ替えてしまえば、絶対にアイラとユイだとバレないはず。
この案を提案したのは愛羅だ。結花も少し抵抗があったが、デートのためである、頷く以外の選択肢は無かった。
「なら明日に備えて今日は早く寝よっか――と言いたいところだけど、お風呂入ってもいい?」
「入って来ていなかったの?」
愛羅の持って来た袋の一つを見ると、中には愛羅の下着類が入っていた。
「だって結構警戒しながら来たんだよ? 汗かいちゃうし、それに、結花もお風呂入っていないじゃん」
「それは……⁉」
仕事終わりのまま、軽くメイクを落としただけで服装はそのままの結花。
「まあこの家のお風呂広いもんねー、いくらセキュリティがしっかりしているマンションでも、一人で入るのが怖いってのはわかるよー」
からかうような言葉に、結花は丁寧に畳んだノースリーブニットを愛羅に投げつけるのであった。
◎
「よっし、まずは互いの個性を打ち消し合う所から」
翌日、クローゼットにやってきた愛羅と結花。結花の持っている服から、愛羅が着られる服を探すところだ。
結花は和服美人という顔立ちをしているのだが、和服の類は持っておらず、持っている服は清純派女優の通り、白やベージュなどの落ち着いた色の服のみだ。
愛羅はその中の白のブラウスを取って結花と合わせる。色白の肌と相まって光を反射しすぎる、眩しそうに目を細める愛羅である。
「愛羅には合わなそうね」
似合わないということは無いのだが、あまりにも愛羅のイメージとかけ離れている落ち着いた服装だ。
「だからこそ互いの正体がバレないのだよ」
それこそが狙いだと言う愛羅に結花も頷く。
とりあえずその手に取った白のブラウスを着てみる。
「おお……高校生ぶり……」
白いブラウスを着た愛羅が鏡の前に立って震える。
「やっぱり合わないわね。イメージが違いすぎるわ」
ベージュのフレアスカートを持ってきた結花が、ブラウスのボタンを上まで止めて笑う。
「えぇ……恥ずかしいよ」
鏡の前にはフレアスカートとブラウスを着た愛羅の姿があった。
普段の様子とは違い、肩を縮こませて俯く愛羅の姿がとても新鮮で、結花は白いシャツに紺色のカーディガン、濃紺のジーンズを持ってきた。
「次はこれを着てもらえるかしら?」
「うう……わかったあ」
渋々といった様子で着替え始める愛羅を置いて、次の服を探す結花。愛羅が着替え終わったと言うと手を止める。
「ふふっ、やっぱり合わないわ」
「そこまで言わなくてもいいじゃんか」
頬を膨らます愛羅である。
「合わないだけで、似合ってないとは言ってないわよ」
結花がそう言うが、愛羅はそっぽを向く。
まだまだ愛羅が自分の服を着ているのを見てみたかったが、ここまでにしておこう。
「ごめんなさいね」
「……いいよ、結花も同じことしてもらうし」
「え?」
今回は誰にもバレないように服を交換するのだ。結花も愛羅の服を着ることになるのだから、当然、結花が愛羅にしたことをやり返される。
愛羅が持って来た服は三着、結花が愛羅に着せた服よりも一着多い。
「全部着てもらうから」
落ち着いた服装とはやはり合わない表情と仕草で愛羅は宣言する。
「ちょっと……これは……」
「これは?」
「……はずか……し……い……」
消え入りそうな声で腕を抱える結花の姿に、満面の笑みで写真を撮る愛羅。
結花が着ているのは黄緑のノースリーブニットと、空色のハイウエストパンツだ。
スラリと伸びた白く細い腕が顕になる。普段は出さない部分が出ていることに抵抗を覚え、肩から先まで出ている服装は下着か水着しかないという恥ずかしさが白い結花を紅潮させる。
普段なら絶対に着ない、イメージとは真逆の服装。結花自信、水泳の授業や家族を除いて肩や腋などを見せたことある人間は愛羅以外いない。それを赤の他人に見られると考えるともうダメだ。
「なんだか……愛羅以外に肌を見せるのに、抵抗があるんだけど……」
「ヤバめっちゃ可愛い」
そんなことを言いながらも、写真を撮る手を止めない愛羅。
「やめて……撮らないでぇ……」
人が恥ずかしがっている姿がこんなにも愉快なものだとは、愛羅は結花の願いを聞き入れ、写真を撮る手を止める。
そして代わりに、次の服を取り出す。
「じゃっ次はこれ‼」
「えぇ……」
「えぇ……じゃなーい! 結花も散々楽しんだじゃん?」
「……もう」
渋々と服を受け取った結花。受け取った服を広げた瞬間――表情が凍りついた。
やたらと丈の短い七分袖のシャツにダメージジーンズ。色合いは落ち着いているが、如何せん露出が多い。
「ほらほらー、早く着替えちゃいなよ!」
愛羅が結花の服を着ると、イメージの合わなさに恥ずかしさを感じてしまったが、結花に愛羅の服を着せると、合わないというよりかは、いけないことをしているような気持ちになる。
だからといってやめる訳ない。
次の服に着替えさせて、俯く結花を鏡の前に連れてくる。
「お腹……すーすーするわね……」
「やっぱ肌綺麗だね」
真っ白で滑らかなお腹を指でそっとなぞると、身体を震わせた結花が声を上げる。
「きゃっ――ちょっと、触らないでよ……‼」
「いやね、ついつい触っちゃうんだよね」
「もういいから! 早く次の服!」
次が愛羅の持ってきた最後の服だ。言われた愛羅は、最後の一着を袋から取り出して結花へ見せる。
もうどんな服を見ても驚かない。そんなことを思っていたが、最後の一着を見た瞬間、またもや表情が凍りついた。
「じゃーあ、着よっか」
断ることはできない、大人しく、唇を嚙みながら服を受け取る結花。
それは、なにかで切り裂かれたのではないかと思ってしまう、切れ目の入ったニットだった。結花の身体に合うのがニットしかないのは分かったが、それでもこの体のラインが出る真っ赤なニットシャツを更に切り裂いて肌が見えるようになっているのが結花にはもう解らなかった。
こうやって愛羅の服を着てみて改めて思う。
「露出が多い服しか持っていないの?」
季節問わず、露出の多い服を着ている愛羅。ギャルは全員露出が多いという訳ではなく、愛羅が特別、露出の多い服装が好きなのだろう。
「うん、まあね」
「………………」
「なんでそんな目で見んの⁉」
「別に……」
結花は冷たい目で愛羅を見ながら服を着替え始める。今回、ズボンはそのまま、上の服だけで大丈夫だ。
露出量はあまり変わっていないが、一気に見た目が派手になったことにより、いらぬ想像をしてしまい顔を赤らめる。
「どう? って聞いても――」
「恥ずかしい……」
「だよねー」
この三着の中から選ばなければならないのだが――。
結花は、二着目の服を選ぼうとしたのだが「色合い的に変わらなくない?」と愛羅に言われたため、露出の関係で一番最初に着た黄緑のニットシャツと、空色のハイウエストパンツ選んだ。同じニットシャツ、それなら切り裂かれていない方を選ぶのは当然だった。
対して愛羅は一番最初に着た、白いブラウスにベージュのフレアスカートだ。結局二人は、一番最初に着た服を選んだ。
服を着替えた後は、互いにメイクをして、完璧に印象を変える。
愛羅はその日焼け具合から、よくイメージされるギャルという見た目だが、元々ハーフっぽい顔立ちのため、そちらを強調するようにメイクをしてあげると、結花の服に合うようになる。髪型も、いつも長い金髪の前髪をかき上げているのだが、今回は結花のように、前髪を降ろして、櫛を通して真っ直ぐに落ち着かせる。
それと対照的な結花は、愛羅によるメイクを受け、誰だか分からない程の派手な目元を手に入れた。普段の結花とは全く違う派手な印象を与える。黒く綺麗な髪は、今は愛羅のように荒々しくセットされている。
そうやって互いにメイクと髪形を服装に合わせて、ようやく今日のデートへと出かける。
しかし、愛羅と違い、結花は未だに自分の姿が信じられないらしく、外へ出ていこうとしない。
「大丈夫だって、今の姿は誰も結花に気づかないって!」
愛羅の言う通り、今の姿は絶対にユイだとは気づかれない。しかし、それとこれは別なのだ。いくら気づかれないからといって、結花自身の羞恥心が消えるわけではない。
露出の多い服装しか持って来なかった愛羅に恨みがましい目を向けた結花。
「いやほんとごめん! でもわたし露出多いのしかもってないの!」
手を合わせて謝られる。それはそうなのだが、どうも不公平な気がする。
「頑張って外に出よ? そのためにこういう服装にしたんだから」
なぜ服を交換したのか、その理由が理由だ。ここで出ない、という訳にはいかない。
赤くなる顔を自覚しながら、結花は頑張って靴を履いて外へ出ようとする。
嬉しそうに笑った愛羅も、結花に続いて靴を履き、外へ出るのだった。
◎
タクシーから外へ出た時は、結花は周囲を警戒するように、身体を抱きしめていた。
愛羅が安心させるように隣に立って歩いてあげると、やがて慣れてきたのか、歩調を合わせて歩くことができた。
「慣れてきた?」
愛羅の陰に隠れるように歩く結花は、おずおずと頷く。
「うん……まだ人が少ないから」
二人が向かうのは、人がごった返す通りだ。若い世代がかなり多く、もし二人が変装せずにやって来たなら、瞬く間に囲まれるだろう。
今はそうならないように願うばかりだ。
段々近づくにつれ、人通りが多くなっていき、結花は顔を俯かせる。
「ギャルがそんなだと余計目立つよ!」
愛羅はそう言うが、なかなか堂々とできる訳ではない。
もしこれでバレてしまうとどうしようか。写真を撮られてSNSで拡散。テレビでニュースになってしまうとどうしよう。
再び身体を抱きしめる結花。
顔を真っ赤にしてもう帰りたい、と口を衝いて出る。
すると、結花の右手に、するりと愛羅の手が滑り込んできた。
そのまま、愛羅は結花に身体を当てる。
「どう? わたしの心臓の音、聞こえる?」
「え――?」
右手の暖かさから、右腕の柔らかさに意識を集中させる。
それは、結花と同じようにうるさい愛羅の鼓動であった。
「」
露出の多さとか関係無い。愛羅も、普段着ない服を着ているのだ。バレるバレないよりも、慣れてない服装をしたことによる恥ずかしさを隠すのに精一杯だ。
愛羅と同じ鼓動に結花は自分が落ち着いていくのを感じる。恥ずかしさは消えないが、それでも、やっと二人でデートができるのだ。ここで結花だけが嫌がって、せっかくのデートを台無しにしたくない。
「……ありがとう」
そう呟いた結花は、一番近くで見てきた愛羅みたいに、堂々と胸を張ってギャルになりきることにした。
SNSでよく見る店に食べ物を買って食べたり、お洒落なアクセサリーが売っている店に入ったり。アイラとユイとしてではなく、愛羅と結花として過ごす。
大きな化粧品の広告にでかでかとユイが映っていたりして、それを愛羅が真似したりする。
互いにぎこちなさはあったが、見た目通りの振る舞いを心掛けていた。
クレープを食べるとき、結花は愛羅のよう豪快にかぶりつき、唇に付いた生クリームを指で拭って食べる。
反対に愛羅は、かぶりつきたい気持ちを抑えて、結花のように、こぼさないように一口一口小さくかぶりついていく。
慣れない仕草、恥ずかしい気持ちは消えないが、それでも二人でこうして過ごす時間はとても楽しかった。
楽しい時間はあっという間に過ぎていき、もうそろそろ日が暮れる時間だ。
この街に夜は無いが、明日からまた仕事だ。いつまでも遊んでいる訳にはいかない。
名残惜しさを感じながら、二人は帰ろうかと、頷き合う。
そしてちょうどその時、二人の目に入ったのはゲームセンター。
「あっそうだ」
「どうしたの?」
「最後にちょっと寄りたいんだけど」
穏やかに微笑む愛羅が結花の手を引く。
断る理由は無い。大人しく手を引かれる結花である。
「ということでやってきました……プリクラ!」
「わあ……初めて」
愛羅に手を引かれてゲームセンターへやって来ると、迷いなくプリクラの筐体が置かれている場所へ連れてこられた。
箱の中は外から見えず、いつも通りの愛羅に戻っていた。
「やっぱさ、デートと言えばプリクラじゃない?」
「……そうなの?」
「そうなの!」
「経験あるの……?」
「ごめんデートでは初めて」
「そっか。それならよかったわ」
気を取り直して愛羅はプリクラを取ろうと言う。
せっかくなら今の姿で記念として残しておきたいと。
それなら結花も断る気はない。互いになりきった状態で撮ろう。そう決めた。
「結花、撮るときはこうね! こう!」
そう言って愛羅は人差し指と中指を使ってハートを作る。
「え……こうかしら?」
「そうそう。それで、いえい! って感じで」
「い、いえい」
「おっけい! よっしじゃあお金入れるね」
機械が起動して、音声案内に従ってフレームなどを選んでいく。
そしてカウントダウンが始まってシャッターが切られる。
「いえい」
「ぶふっ」
「ちょっと‼」
愛羅が思わず吹き出してしまい、それを咎めようとしたが、まだ写真は撮られる。慌てて次のポーズに移ろうとするが、愛羅が教えてくれたポーズはこれ一つしかない。また同じポーズで写真を撮る。
そうして出来上がった写真に落書きするため、二人は外に出て落書きができる画面に移動する。
表示された写真は、全て結花は同じポーズ。愛羅は結花っぽく、控えめなピースサインや口元に手を当てて、化粧品の広告っぽく写っていた。
「結花……っぷ全部同じじゃん」
「笑わないでよ! だって、これ以外教えてもらっていないし。あと一つだけ違うのがあるわよ」
結花の言う一つだけ違う写真は、ポーズは同じだが、ウインクをしている写真のことだ。
「じゃあまずこれは決定」
結花の指ハートに色を塗って愛羅が決める。
結花は、化粧品の写真っぽい愛羅の隣に、化粧品メーカーの名前を書く。
それを見た愛羅もふざけた落書きを入れる。
制限時間いっぱいまで落書きを楽しんだ後、選んだ写真をプリント。今はデータとして受け取れるらしいのだが、それはやめておいた。
できたプリクラをハサミで切って、二人で分ける。
「デートの思い出ゲット」
嬉しそうにプリクラをしまった愛羅。結花も大切にしまって、ゲームセンターを後にする。
夕方なのに人の数は変わらず、二人はタクシー乗り場まで向かう。
来た道を戻り、無事に到着した後タクシーに愛羅が乗り込む。
後ろ髪は引かれない、大切にしまった思い出に手を添えて、結花は愛羅に続いてタクシーに乗り込むのだった。
お金を払い、タクシーから降りた後、結花の住むマンションまで歩くことになる。
慣れない格好で人混みを歩いたからだろう、こうして人の少ない場所へやって来ると疲れが溢れてくる。
「楽しかったわね、今日は」
「あれだけ恥ずかしがっていたのに?」
「ええ。愛羅もそうだったでしょう?」
「……うん」
日が沈みかけるこの時間。隣にいないと表情が見えないこの時間。
二人は互いに笑い合う。
「次もさ、こうやってデートしたいよね」
「そうね。次は服を買いに行きたいわ。愛羅の服、露出多いし」
愛羅のイメージに合うが、露出の少ない服を選んで欲しい。
恥ずかしさが薄れれば、もっと楽しむことができるから。
「でも、あんまり露出を控えるとバレるよ」
「そこは元モデルの力を見せてほしいわね」
「ははっ、おっけいおっけい。任せて」
明日からはまたいつもの姿で仕事だ。次はいつデートできるのか分からない。
やっぱり恥ずかしいけど、次のデートが待ちきれない。頑張ってスケジュールを調整してもらおう。二人は同じことを考え、同じ場所へ向かって、どちらともなく手を繋ぐのであった。