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有り触れた異能バトルに紅茶を添えて
しゃーく
現代ファンタジー異能バトル
2024年11月04日
公開日
15,700文字
連載中
カルマ 
それは、概念を操れる他に、何かを使役し、何かと契約することが出来る異能の総称
カルマは罪であり、発現方法は人を殺めるか、異能力者の心臓を喰らうこと

そんなカルマを持った小さな小さな喫茶店
その名も喫茶店ユウゲン

紅茶が仄かに香り、従業員やお客さんの笑顔が絶えないこの喫茶店には、
何でも屋と言う裏の顔が存在し、従業員は皆、総じてカルマを持っていた

そんな喫茶店兼何でも屋を営む彼ら
そこに、とある者から1件の依頼を承る

その依頼が、運命の歯車を廻すとは知らずに──

第1話:喫茶店ユウゲン

〜有也サイド〜


"喫茶店ユウゲン"

ここは、東京の隅の隅にひっそりと佇む小さな喫茶店。扉を開けると、仄かに漂う紅茶の香りが優しく迎え入れる。店内は常連客に愛され続け、料理やコーヒーの完成度はどれも高い。訪れる人々は皆、この店の味と雰囲気を絶賛する


そんな喫茶店を構えて、早2年…俺たちは今…


有也「金がない…!!!!」


相当な経営難に陥ってるのである……!


有也「金がア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」

魁「うるせっ」バシッ

星螺「そーだそーだ」バシッ

有也「いって!!!2人同時で叩くな!!!」


喫茶店ユウゲンは東京の隅の隅、まるで忘れられたような偏狭すぎる場所に店を構えている。この場は人通りは少なく、リピーターどころか、道路を渡る人影すらほとんど見かけない。このままじゃ倒産まっしぐらな状況にも関わらず、俺たちはそんな事も気にせず店内で騒ぐ。カウンター内で頬杖をつき、椅子に座ってボーッと時間が過ぎるのを眺めているだけだ


カチ、カチと秒針の音が店内の静寂を切り裂くように響く


有也「……はぁ、人来ないなぁ」

魁「( ˘ω˘ ) スヤァ…」

有也「コイツ寝てんぞ、星螺、バット貸せ」

星螺「寝ちゃっただけでバットで殴られそうになるの怖すぎだろw」

星螺「あとお前が多分〆られるぞ」

有也「よっしゃ辞めとこ」

星螺「賢明な判断だな」


店員の魁は、仕事中でもお構いなしにサボったり寝たりすることが多いが、整った容姿にお陰か、おばさん達に人気だ。綺麗な緑の髪をなびかせ、時折真面目に働く姿は確かに魅力的だろう。そんな魁が数少ないリピーターを確保していることには俺もちょっと驚いている。なんせこんな偏狭な土地で、周りには面白みのない建物ばかり。それでもわざわざ足を運んでくる客がいるんだから、接客業は本当にわからないものだ


星螺は真面目で毒舌なタイプ。もちろん、お客さんに毒を吐くことはないが、俺や他の店員には無自覚にダメージを与えてくる。だが、その毒舌も星螺の魅力の一つなのかもしれない……何より彼女は、仕事に対して真摯で、容姿も整っている……


そんな2人を見ていると、ふと親バカ的な気持ちが湧いてくる


俺はカウンターの端から2人を眺め、ニヤニヤとしながらその様子を見つめていた


星螺「……なにその顔」

有也「あぁ、いや、なんも」


俺がこの2人と出会って、もう1年〜2年は経つだろうか。色んなことを知り、色んな経験を共有してきた。けれど、まだわからないことも多い


──

それは、炎を出す異能や、何かを使役する異能などを総称して使われる言葉。カルマの発現条件は『人を殺すこと』もしくは『異能力者の心臓を脈打つ内に食す』ことだ。普通の人間なら、そんな恐ろしいものを持っているはずがない


だけど、魁と星螺は俺と出会う前からカルマを持っていたらしい。その経緯について、俺は深くは聞いていない──


いや、聞けないと言ったほうが正しいかもしれない


そしてそれは、この2人だけに限った話ではない

俺を除く、この喫茶店の全員がカルマを所持しているという事実だ


???「おい詩音!!!僕の初生くんを踏みそうになったな!!!危ないでしょ!」

???「んぁ?あーごめん、前見てなかった」

???「大丈夫〜?初生くん」


そんなことを考えていると、2階からいつも通りの声が階段を伝って店内に響く。ああ、またアイツらか……と、いつものやり取りに気を抜いてしまう。うるさいったらありゃしない……ちなみにお金がない原因は、従業員全員が家なき子だから、2階から4階まで増築したから!増築する際の費用が高すぎて内蔵を売ろうとも考えたが、売ることはなくてよかったよかった


いや、待てよ、なんで全員家がないんだ?


普通ならすぐに気づきそうな疑問が、今更のように頭に浮かぶ。だが、考えたところで答えは出ないと瞬時に理解し、俺はその思考を引っ込めた


有也「暇だなぁぁぁ」


秒針の音が響き渡る静寂を破るように、俺は欠伸をしながら大きく口を開ける


星螺「暇とか言ってるけど、今業務時間内だから」

魁「スヤァ…」

有也「寝てる奴も居るしへーきへーき」

星螺「良くねぇよ」


カランカラン


すると、オフモードだった俺たちを正すように、玄関のドアが開かれる音が店内に響く。俺はハッと目を見開きながらも、すぐに笑顔を作り、「いらっしゃいませ!」と元気よく声を上げた──


魁「伏せろ」

有也「いってぁ!?」


その瞬間、魁に胸倉を掴まれ、後方に力強く投げ飛ばされる。同時に、店内に銃声が響き渡り、俺の鼓膜を激しく刺激する。突然の出来事に、動揺が隠せない


有也「うぉぁ!?なになになに!?」

魁「チッ……」

強盗A「オラ!早く金出せ!」


ガチャ、とライフルのリロード音が重く響く。随分とアクティブな強盗に遭遇してしまったらしい。俺と同じく、魁と星螺もカウンター内に伏せ、2人は何かを伝えるようにコソコソと話している。そして、2人は俺の耳元に顔を近づけ、小声で囁く


魁「お前は下がってろ」

星螺「ここは私たちが""」


魁と星螺の言葉に、俺は戸惑いながらも、恐怖に震えながらゴクリと唾を飲み込む。静かに頷くしかなかった。魁と星螺は俺の反応を見てニコッと笑うが、その笑顔は一瞬で消え、真剣な表情に戻る


魁「いらっしゃいませ、お客様」

星螺「ご注文は、何になさいますか?」

強盗A「あ〜?金だっつってんだろ!死にてぇのかテメェら!!!」

強盗B「へへへ!しょぼい外装の癖に、中は思ったより綺麗じゃねぇか!」

強盗A「たんまり金はいただくぜェ!」


星螺「わかってる?いつもの鉄則」

魁「あ?あー分かってるけど、守る気は無い」

星螺「だよね……」


魁は少しへらっと笑い、星螺はそれに「はぁ」と少し苦笑いしながらため息をつく。魁は静かに真剣な声色で「行くぞ」と星螺に伝えると、彼女も「OK、援護は任せて」と強い口調で返す


魁「"灼脈"」


その瞬間、魁の右腕に炎が宿る。彼のカルマ──灼脈が発動した。炎はまるで生き物のように腕にまとわりつき、彼の意志に呼応して揺れ動く。魁はそのまま軽やかにカウンターを乗り越え、ライフルを構えた強盗たちに向かって突進する。その動きはまるで猛獣のように素早く、無駄がない


強盗たちが反応する間もなく、魁の右腕から放たれた炎が一瞬で伸び、2人の体に巻きつく。締め上げられる感覚に、強盗たちは悲鳴を上げるが、すでに遅い。炎は彼らの体をギリギリと締め付け、まるで鋼鉄のような力強さで拘束する。焦げたゴムの匂いが店内に充満し、灼脈の圧倒的な力が見せつけられる


魁はそのまま右腕を振り下ろし、炎に絡まれた2人を床に叩きつける。衝撃で椅子や机が砕け、店内が一瞬で荒れ果てる


有也「魁ィィィィィィィィィィ!!!!おまっ!修理費!どうすんだア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!」

星螺「いや、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ……!」


魁は俺の叫びに耳を貸すことなく、再び焔を強盗たちに巻きつけ、締め上げる。さらに焦げ臭さが漂い始め、星螺は「これ以上充満すると、お客さんが来た時に『臭い』って思われて、リピートされなくなっちゃうよ」と、どこかズレた指摘をする。それに対し、魁は小さく頷き、灼脈を静かに収める


強盗たちはバタンと力なく地面に倒れ込む。彼らの体は灼脈の炎に焼かれ、黒く焦げている。灼脈の圧倒的な力がまざまざと見せつけられた瞬間だった


星螺「んで、コイツらどうする?」


星螺が俺に尋ねてくる。どう処理するか……ゴミ捨て場に捨てるのも手だが、魁のカルマを目撃されてしまっている。このまま放置すれば、面倒なことになりかねない。俺は少し考え込みながら、やがて決断する


有也「……まぁ……」

有也「処理するしかないよな」


俺は2人に背を向け、顔だけ振り返らせながら、「殺れ」と喉を掻っ切るジェスチャーを見せる。星螺はニヤリと笑い、「りょーかい」とだけ言い放つ。そして、立て続けに2発の銃声が店内に響き渡った


俺はカウンター内に戻り、荒れ果てた店内を見渡す。破壊された椅子や机、そして転がる死体。それらを見ながら、俺は「修理費大丈夫かなぁ……」と、なんとも楽観的な嘆きを漏らす


ここは東京の隅の隅に構えている

"喫茶店ユウゲン"


だが、その裏の顔は

復讐でも始末でも、何でも請け負う











"何でも屋"でもあった──

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈そうして誰も来ないで早6時間

もう閉業時間、俺たちは「今日も来なかったなぁ……」とため息を吐きながら、扉の看板を回し、closedに変更する


有也「行くぞ〜お前ら」

「「おっけぃ」」


俺と魁、星螺は階段を上り、2階へと上がっていく

階段を上がれば上がるほど皆の声が大きくなっていき、「今日もバカしてんなぁ」なんて思いながら、皆に向かい終わった旨を伝える


有也「おーい……帰ってきた」

??「おいクソ野郎!!!!」

??「なんだよ

白兎「地下室で私の研究したあの究極の瓶を……割りやがったなぁ……!!!!」

??「瓶をさせたらそのまま倒れて割れてしまったんだ、許してくれw」

白兎「殺すぞォ!!!!!」


帰ってきた俺たちに対しいつも通りの出迎えをした……翠郎スイロウ白兎ハクトが俺達の目の前で喧嘩をしていた。会話の内容的に、翠郎がいつもの異能……カルマを使って白兎の薬を割ったのだろう。コイツら懲りねぇな、なんて思いながら、2人のことをジィーっと見つめ、「懲りねぇなこいつらも……」なんて苦笑しながら、自室へ行くため4階へと上がっていく。


皆の声が遠ざかっていくのを感じながら俺は4階へ到着し、自室の扉前に立つ


有也「ふぅ〜え〜っと……うん」


俺はドアを開け、机に載っけられている物を見る


アラト「……し"ょ"る"い"!!!!!!!」


そして目の前の事実は、俺の心臓を突き刺すナイフのように鋭利で、ハンマーのように重くのしかかる。報告書に経費で買いたい備品に修理費にetc

はぁ……ため息を吐くが意を決して机前の椅子に座り、そのまま俺は1番上の書類へと手を伸ばす……

……いや、伸ばそうとしてるけど手が届かねぇ

仕方なく椅子から降り、背伸びしながら1番上の書類を手に取ろうとする


……いや取れねぇ


21歳175cmのこの俺が……!

こんな書類の山ごときに負けるなんて……!

この積み上げ方、絶対天斗アマトのカルマのせいだろうな……あの野郎もっと別々に分けて積めよ……そんなやり場のない怒りを抱える


まぁそんな愚痴を零しながらも、俺は椅子などを駆使し書類を何とか手に入れる。そして椅子を正しいところに直すと同時に、書類を完成させるためにペンを走らせる。そしてこれから始まるのは、俺の書類との戦闘であり、明けない夜である


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

〜天斗サイド〜


取り絶えずあの有也アホの机に報告書とか纏めておいたけど、アイツチビのくせに高く積み上がった書類取れっかな。そんなことを思いながら、俺は食卓に皿を並べ、そして「早く席つけ」と皆に話す


累月「みんな〜席に着いて〜」


一通り皿を並べ終えると、累月ルイゲツがみんな集まれと号令をかけ、それに呼応するようにリビングでテレビやらスマホやらを見ているヤツらが「はーい」と返事をする。

皆ゾロゾロと椅子に座っていき、続々と着席していくのを見る。今は午後6時半、早めの晩御飯だ


累月「はいじゃあみんな〜手と手を合わせて〜」


みんな累月の声に合わせ、手を揃える

そして、皆が揃えるのを見ると、累月は大声で


るい「頂きます!!!」


と、声を響かせ、そして俺達も


「「「「「「「「「頂きます」」」」」」」」」


後を追うように声を響かせた


魁「おい秋月シュウゲツ、それは俺の揚げ物だ」

秋月「はぁー?早いもん勝ちだろこんなんさー」

魁「いや、ダメだ」

秋月「ダメとか知らんわw」

魁「あ゙?」

秋月「あ゙?」

累月「2人とも落ち着いてー?」

星螺「無駄だよー、この人たちは1度火がついたら止まんないし」


相も変わらずうるせぇなー

俺はそんな事を横目に、ご飯を進めていく

やっぱり白米は身に染みるよ、まぁ翠郎は「パンこそ至高だぁ!!!」とか言いながら発狂しているけど……


そんなこんなで食事は進んでいく

4階で誰かさんが書類を進めてるなんていざ知らず

皆各々の食事を精一杯楽しんでいた

後で有也になんか差し入れしてやるかぁー

そんなことを思いながらも、俺は目の前にある白米を一摘みし、箸を進めていく


夜はまだ続いていく


それは、もはや明けない夜と錯覚させるように


外の闇と、内の光が反比例していく



夜はまだ、終わらない──


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈





この世界には、神と呼ばれるモノが居る










その神は、この世界に秩序と平和を齎した


















だが、













神を殺せ











永遠の名のもとに











全ては"Initium Aeternitas"の為に──

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