戦闘艇の左翼をかすめたのは、敵軍の短射程ミサイルだった。
ドッグファイトでばら撒かれた
機体はとうに体の一部だ。自在に星の海を翔け抜け、敵機を撃墜していく。ヘルメットのバイザーにアテンション表示。二時の方角に五機目の敵が現れた。
ごめんね、僕の勝ちだ。
確信の半瞬後着弾し、敵機が真空で爆発炎上した。
『すげえ、ミハエル。何機目だ? さすが
同じチームのエリックが無線を通じ声を上げた。
「エリック、前にも言ったよね。僕はカウントされるの嫌なんだ」
『わかってますって。おれはそんな謙虚なミハを尊敬してる』
「全然わかってない」
称賛は重荷だ。僕は一番になりたくて敵を倒してるんじゃない。
『今期、ミハを抜いてエースに返り咲く! 報奨金で美女と豪遊だ』
目標があるのはいいけど変な対抗意識はやめて欲しい。僕はエリックのおしゃべりを聞き流し、バイザーに表示された敵の位置情報を確認した。戦艦同士の戦いは続行中だ。気を抜けば撃ち落とされる。
『戦闘艇撤収命令。全チーム、ただちに各艦へ帰投。繰り返す――』
新たな標的を求め機体を旋回させた時、指令がカットインした。
「聞いた、エリック? 作戦の途中なのに」
『嘘だろ。おれの見せ場がなくなっちまった』
急な撤収を訝しく思いながら、僕は戦艦ドレッドノートに針路を採った。