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Dreadnought/ドレッドノート
アラタ
SF宇宙
2024年11月04日
公開日
80,518文字
連載中
宇宙を二分する勢力、プライマリとケルサス。両軍の戦いは半世紀に及ぶ。戦闘艇パイロットのミハエルは親友のレキシアと別れ、捕虜としてケルサスの首都星に赴く。敵地でカイ王子に出会い、自らの過去と否応なく向き合うことになるが…。ミハエルは無事にレキシアの元へ戻れるのか。

第1話 Prologue

 戦闘艇の左翼をかすめたのは、敵軍の短射程ミサイルだった。


 ドッグファイトでばら撒かれた囮弾フレアが、光彩を発しラクリマ星域の宙空を乱舞する。僕は操縦桿と方向舵ペダルで翼を操り、隘路をすり抜けた。


 機体はとうに体の一部だ。自在に星の海を翔け抜け、敵機を撃墜していく。ヘルメットのバイザーにアテンション表示。二時の方角に五機目の敵が現れた。


 ごめんね、僕の勝ちだ。

 確信の半瞬後着弾し、敵機が真空で爆発炎上した。


『すげえ、ミハエル。何機目だ? さすが撃墜王エース!』


 同じチームのエリックが無線を通じ声を上げた。


「エリック、前にも言ったよね。僕はカウントされるの嫌なんだ」

『わかってますって。おれはそんな謙虚なミハを尊敬してる』

「全然わかってない」


 称賛は重荷だ。僕は一番になりたくて敵を倒してるんじゃない。


『今期、ミハを抜いてエースに返り咲く! 報奨金で美女と豪遊だ』


 目標があるのはいいけど変な対抗意識はやめて欲しい。僕はエリックのおしゃべりを聞き流し、バイザーに表示された敵の位置情報を確認した。戦艦同士の戦いは続行中だ。気を抜けば撃ち落とされる。


『戦闘艇撤収命令。全チーム、ただちに各艦へ帰投。繰り返す――』


 新たな標的を求め機体を旋回させた時、指令がカットインした。


「聞いた、エリック? 作戦の途中なのに」

『嘘だろ。おれの見せ場がなくなっちまった』


 急な撤収を訝しく思いながら、僕は戦艦ドレッドノートに針路を採った。



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