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第16話 痛いの痛いの飛んでいけ

 灰を浴びながら、リチュはゆっくりと足を踏み出す。


 街は完全に崩壊し、生きているものはリチュスライム以外いなくなっていた。


 依頼者は未だ見つからず、それを求めスライムは森を焼きながら進みゆく。

 エルフ、ナイトバード、アイスウルフ。そして人間。次々と生命が焼き払われその灰のみが存在する。

 森を幾分か進んだのち、スライムは小さな洞窟の入り口にたどり着く。

 そこには、いつか見た、緑色の髪の子供に出会う。

 子供はスライムの威圧感に泣いていた。

 スライムは───


 ───ゆっくりと斧を振り上げる。


 ザシュ!と肉を切る音をたて、赤い液体が宙を舞う。


 スライムは洞窟にいる子供達を次々と殺していく。

 最後の1人が斬り殺された後、スライムの背後から物を落とす音が聞こえた。

 スライムが振り向くと、そこには足元に色々な果物を落とした、金色の髪に、白いサラシ。下半身は蛇になった。全生物の母。『エキドナ』だった。


「『なんじゃ。最近騒がしいと思えば、童達が消えていって。また『モルガナ』ちゃんの仕業かと思っておったが───』」


 『エキドナ』は今まで見せたことがないような、般若のような顔をしていた。


「『───とんだ悪い子がおったもんじゃな。』」


 『エキドナ』が敵意を持っていると感じたスライムは、彼女の首に斧を振り下ろす。

 しかし、『エキドナ』の首は吹き飛ばず、むしろ斧の方が壊れてしまう。

 スライムは慌てて、『炎の槍ファイアランス』を飛ばす。

 しかし、彼女はやけど1つ負うことは無い。


「『悪い子には、仕置きが必要じゃな。これも母である妾の務め!』」


 『エキドナ』は右腕を大きく上げる。


「『随分と暴れたものじゃの!そんなに苦しかったか!そんなに心が痛いか!じゃが、世間様に迷惑をかけるものではないぞ!『母の鉄拳』!!』」


 『エキドナ』の拳はスライムを空の彼方へと飛ばす。

 あまりにも柔らかい体のスライムに、打撃は効かない───


 ───はずだったが、スライムの体は光に包まれながら、跡形もなく消え去った。





 スライムさんの生存戦略

     復讐END

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