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第15話 愛麗壱業乱頭(メリーゴーランド)

 最後の氷柱を溶かした時、ハートの左腕が宙を舞った。


「あら?♡」


 ハートが、左腕の切り離された自身の身体を、確認する。

 彼の左腕は、水色の何かに握られた、斧によって切り落とされていた。


「あら?♡これは、スライムの斧よね♡」


 ハートがそう言うと、水色の何か、は一回り小さめのリチュの姿になる。


「なるほどね♡さっきまでの氷柱は、アタシの意識を向けるための囮だったのね♡それで、アタシの注意がそれている間に、斧を拾ってアタシの腕を斬る♡そういうことだったのね♡」


 リチュは何も答えない。

 その沈黙を肯定と取った、ハートは、右手のサーベルを落とし、右手を自身の頬に当てる。


「いいわ♡すごくいいじゃない♡燃えるわぁ♡」


 ハートが武器を落としたことを確認したリチュは、彼に向かって走り出す。


「本当に燃やしてあげますよ!」


「あら♡それは楽しみだわ♡」


 ハートは、リチュに向かって口からサーベルを吐き出す。


「つっ。」


 リチュはそれをギリギリで避ける。

 その隙に、ハートはサーベルを拾い上げ、リチュとの距離を詰める。


「『大地の槍シールドスパイク』!」


 リチュは、ハートの攻撃を盾で防ぐ。

 ハートは再び、盾の棘を足場に盾を乗り越え───


「その攻撃は忘れてませんよ!」


 ───リチュの斧によってハートの右腕が斬り落とされる。


「ホホ♡最高じゃない♡両腕を失ったのなんて何年ぶりかしら、興奮するわァ♡」


 ハートはタップダンスを踊るように、左足のつま先を地面に当て、その後かかとを当てる。

 右足も同じように行う。

 すると異様にカールした、ハートの靴の先から刃物が出てくる。


「もっとアタシを楽しませてちょうだい♡」


 ハートがリチュに向かって走り出す。

 リチュが、左手をハートに向ける。


「『氷の槍アイススピア』!!」


 3本の氷柱がハートに向かう。

 ハートは、その氷柱を踏み台にする。

 そして、リチュの目の前に行き、蹴りを行う。

 足に付いた刃がリチュの体をかする。


「はぁ!!」


 リチュが、伸びたハートの足に斧を振り下ろす。


「いい狙いね♡」


 ハートはそれを回転して避け、リチュの首を斬ろうとする。

 リチュは斧をハートに向けて投げる。

 ハートが攻撃を中断し、後ろに大きく飛ぶ。

 斧はハートの体には当たらなかった。

 しかし、斧のとんだ先に、リチュの伸ばした左手があった。


「はぁ!!」


 リチュが斧を掴むと、ハートの両足を斬り落とす。

 四肢を失ったハートは、地面へうつ伏せなる。


「ホーッホホホ♡いいわぁ♡ここまで追い込まれたのは初めてよ♡興奮のあまり逝ってしまいそうだわ♡」


 リチュが、右手に持ち直した斧をハートに向ける。


「もう貴方は、手も足も出ない状況です。諦めて死になさい。」


「ホーッホホ♡確かに今のアタシは、手も足も無い状況だけど、手も足も出ない訳では無いわよ♡」


 そう言うと、ハートは仰向けになり、口からサーベルを2本飛ばす。

 そして再びうつ伏せになった彼の頭に、サーベルの刃が刺さった。


「何をしているのですか!?」


 突然変な動きを見せるハートに、驚くリチュ。


「ホホ♡『愛麗壱業乱頭メリーゴーランド』♡」


 ハートは口から火を吐き、己の体を、まるでロケットのように飛ばす。

 リチュは、ハートの体当をくらい、崩れかけた建物に当たるほど吹っ飛ばされる。

 サーベルの持ち手の下にはトゲの飾りがあり、それがリチュの体に穴を開ける。


「うぅ…。」


 何とか立ち上がったリチュに向かって、ハートは再び『愛麗壱業乱頭メリーゴーランド』を仕掛ける。

 リチュは、朦朧としつつ左手をハートに向け、髪と目を赤く染める。


「『炎の槍ファイアランス』!!」


 炎の槍が、飛んで来たハートの体を灰に変える。

 灰が風に乗り、リチュの体を通り過ぎる。

 その瞬間、彼の声が聞こえた。


「あら♡ここまで可愛いなんて♡体が戻ったらまた殺し踊り合いましょう♡」

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