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第12話 |助けて(ヘルプミー)!ぱフォーマーズ

 森の中に、ラッパの音が響く。

 リチュは、地団駄を踏んでいるクローバーを見て、言う。


「なんですか?そんなに、ノワトルさんを、ノワトルさんと呼ぶことが嫌ですか。」


 リチュの言葉を聞いて、クローバーは舌打ちをする。


「だーかーらー…。略すな!

 やっちまえ、お前ら!」


 クローバーが、リチュを指さす。

 すると、茂みから巨大な氷柱が、左右と後ろの3方向から、リチュを囲むように放たれる。

 リチュはそれを、ジャンプして避ける。

 完全に同時に放たれた氷柱は、リチュがいた位置でぶつかり、砕ける。


「くっそー、外れたか。」


 クローバーが地団駄を踏む。

 リチュが、周りをキョロキョロと見る。


「誰です?」


 リチュのその問いに答えるように、リチュの左右と後ろの茂みから、3つの影が現れる。

 それは、青白い体毛に、赤い目を光らせた、成人女性程の大きさの狼だった。


「ブリザードウルフ…ですか。」


「そうよ。アタイは、こんな猛獣でも操れるのよ。やっちまえ!」


 クローバーの掛け声とともに、2匹のブリザードウルフは咆哮を上げ、巨大な氷柱を作り、次々と、リチュに向けて飛ばす。

 リチュそれを避け続ける。

 しばらくして、クローバーが笑った。


「ぷふ〜。狙い通り。」


「おぉ〜。これは…。」


 リチュが周りを見る。

 気がつくとリチュの周りは、巨大な氷柱の壁で囲まれていた。


「囲まれてしまいましたね。」


 クローバーが、指を、パチンと鳴らす。


「今だ!! ブロンシュ・ブリザード・パーフェクトラムダ!!」


 クローバーの合図で、残り1匹のブリザードウルフが、水のマナを集め、両前足に3本ずつの氷の爪と、2つの氷の牙を作り出す。

 そのブリザードウルフは、地面に刺さった氷柱を飛び越え、リチュを切り裂こうと襲いかかる。


「なるほど。素晴らしい作戦です。」


 リチュの髪と目が、黄色に染まる。


「『大地の槍シールドスパイク!』」


 リチュがそう唱えると、無数の棘が付いた土の盾が、リチュの前に現れる。

 ブリザードウルフは、その盾に腹部からぶつかる。


「ブロンシュ・ブリザード・パーフェクトラムダ…! 」


 慌てて声を漏らすクローバーを横目に、リチュは盾を消滅させる。

 地面に倒れたブリザードウルフは、体に着いた無数の傷に、もがき苦しむ。

 その光景を見て、他の2匹は茂みの中へと逃げる。


「なんてむごいことを…。」


 そしてクローバーは、リチュを恐怖の目で見て、己の口を、手で押さえる。

 しかし、それは一瞬で終わり、すぐに怒りの表情をして叫ぶ。


「ダイヤだけじゃ飽き足らず、アタイの可愛いブロンシュ・ブリザード・パーフェクトラムダまで、傷つけやがって!もう、ただじゃ置かないわ!心臓から遠い所からすこーしずつ引きちぎってやる!」


 クローバーの言葉に、リチュが不思議そうに聞く。


「何故、わざわざ時間をかける殺し方を?私達スライムを殺すのであれば、心臓コアを破壊すれば良いのに。」


 リチュはそう言って、自分の胸に手を置く。

 クローバーが、鞭で地面を叩き、怒り声をあげる。


「時間かけてゆーっくり殺せば、その分苦しい思いをさせてやれるだろ?これはお仕置き・・・・。「もう死にたい!」って叫ぶぐらい苦しませてあげる!」


「そうですか。」


 リチュは持っている斧で、目の前の氷柱を破壊し、左の手のひらをクローバーに向ける。


「勉強になりました。『氷の槍アイススピア』。」


 3つの氷柱が、クローバーに向かって飛んでいく。


「同じ技が、アタイに通じるわけないでしょ。それどころか…、」


 クローバーは、目を閉じ、胸の前で両手を合わせる。


「逆に利用してあげるんだから!」


 クローバーを中心に、風が吹き上げる。

 それは、台風と言うには弱く、木枯らしと言うには強い。その間ぐらいの風。

 3つの氷柱はその風に巻き取られ、クローバーの周りをクルクル回る。


「しつこい汚れにはこれ!小汚いベトベトスライムも、これを3発撃てば、たちまち固まって燃えないゴミの出来上がり!『冷凍庫フリーザーガン』!!」


 クローバーが、リチュを睨む。


「Bang!Bang!Bang!」


 クローバーが、右手を伸ばすと、回転していた氷柱が1つ1つ、順番に発射される。

 リチュは最初の2つは避けることが出来たが、最後の1つを太ももに食らう。

 リチュの太ももから、透けた水色の液体が溢れ出す。


「つっ…。」


 リチュが、自分の太ももの傷口を押さえる。


「ふっふーん。あったりー。」


 クローバーは、ニヤリと笑った後、ブラックドラゴンの背に乗る。

 そして、彼女は持っている鞭を、ブンブンと振り回し、ドラゴンの手網を引く。


「『疾風の如くゴー・アクティブ』!!」


 クローバーが唱えると、彼女とドラゴンの前面に、風のバリアが作られる。


「ぷふー、これでアタイらは素敵に無敵!やっちまえ!ノワール・トルネード・グレーティストオメガ!」


 ドラゴンは咆哮を上げ、リチュに向かって、飛ぶ。

 その速さは、まるで風のよう。

 リチュは左手をドラゴンに向け、髪と目を赤く染める。


「『炎の槍ファイアランス』!!」


 炎の槍が、ドラゴンに向かって放たれる。

 しかしそれは、風のバリアによって消滅する。


「おぉ〜!!」


 リチュは驚きつつ、ドラゴンの噛みつきを避ける。


「ちっ、外したわね。」


 ドラゴンが旋回して反対を向く。

 リチュは、その一瞬の間に、背中に風のバリアが無いことに気がつく。


「何度攻撃しても無駄よ。アタイのバリアは完璧に鉄壁だから!」


 ドラゴンが再び、リチュに向かって突っ込む。

 リチュは、髪と目を緑色に染め、ドラゴンの突進を避ける。


「『雷の槍サンダージャベリン』!!」


 リチュは、無防備になったクローバーの背中に、小さな電撃を飛ばす。

 それは、一瞬でクローバーの背中を貫く。


「痛い!!」


 攻撃を受けたクローバーは、ドラゴンから落下する。

 ドラゴンは、落下したクローバー心配して、彼女の方を見る。

 しかし、そのせいで、前にあった木に衝突する。

 クローバーが攻撃を受けたせいで、風のバリアは消えたものの、風に乗って得たスピードは落ちておらず、ぶつかった痛みで倒れるドラゴン。

 リチュは髪と目を赤く染め、ゆっくりとドラゴンに近寄る。


「『炎の槍ファイアランス』。」


 炎の槍が、ドラゴンの体を焼く。

 耐熱に優れた鱗を持ったドラゴンは、すぐに灰になることはなく、じわじわと肉が焦げ始め、苦しみの声を上げる。


「あら?やはりドラゴンは丈夫ですね。」


 リチュは「さて。」と、クローバーの方を見る。


「いっつ…。」


 クローバーはゆっくりと立ち上がり、苦しむドラゴンの方を見る。


「!ノワール・トルネード・グレーティストオメガ!!」


 クローバーは鞭を握りしめ、リチュを睨む。


「貴様ぁ!」


「『氷の槍アイススピア』!」


 リチュは氷柱を3つ出して、クローバーの体を木に固定する。

 リチュがゆっくりと、クローバーに近づいた。


「何する気よ!」


 強気に言うクローバーに、笑顔で静かに告げるリチュ。


お仕置き・・・・です。」


 リチュは、クローバーの足先を、斧で切り落とす。


「ぎゃあああ!!」


 あまりの痛みで、叫び出すクローバー。

 しかしリチュは、足先からじわじわと、クローバーを切り始める。


「や゛め゛て゛!く゛る゛し゛い゛!い゛た゛い゛い゛た゛い゛い゛た゛い゛!!」


 血を吐きながら叫ぶクローバー。

 リチュは笑顔のまま、言葉を返す。


「辞めませんよ。これはお仕置きです。

 貴方のせいで、私の仲間は殺されました。せっかく出来た友人も、敵になってしまいました。その行い、償ってくれますよね?」


 リチュが、クローバーの両手を切り落とす。


「ぎゃあああ!! せ、せ゛めて…。ひどおもいに…。」


「ダメです。長く苦しませるのが、貴方流のお仕置きなんでしょう?」


 リチュは、クローバーの腕を切る。

 四肢を失ったクローバーは、木から落ちる。

 クローバーは泣きながら叫ぶ。


「ダイヤ!スペード!猛獣達ぱフォーマーズ!誰か!誰か助けて!!」


 リチュは、斧を振り上げる。


「ここにはもう、誰もいませんよ。貴方は、ひとりぼっち・・・・・・なんです。」


「───!!」


 クローバーは目を限界まで開いて、1粒の涙をこぼす。

 リチュは、彼女の首を目掛けて、斧を振り下ろした。

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