「出てよ!『
ダイヤが、両手の平を前に突き出し、そこから土のマナを大量に出す。
「何です!?」
リチュが、斧を握りしめ、身構える。
土のマナは、ダイヤの目の前で、巨人の形に集まっていく。
そして、球体が繋がって出来た巨人が作り出される。
脚と手は白く、腹は明るい黄色。腕は白に黄色の1本線が入っており、顔はダイヤと同じ化粧をしている。
「おお~。」
リチュは、その巨大な泥人形に、圧倒される。
「こっからが、本番だ。俺の最高のショーを精々楽しみやがれ!くそスライム!!」
ダイヤは、地面を蹴り、人形の膝、腹、肩へと、飛び移る。
「食らいな!」
ダイヤは、『
そして、それをリチュを囲むように投げ、逃げ場所を無くす。
さらに、人形が右腕を振り上げる。
「言っておきますが。スライムに打撃は効きませんよ。」
「なら食らってみろよ!!」
ダイヤの言葉に、違和感を覚えたリチュは、人形の拳を避ける。
地面に当たった、人形の拳は爆発を起こし、リチュを吹き飛ばす。
「何⁉」
爆発を食らいリチュは、姿を保てなくなり、どろどろとした姿になる。
ダイヤはその姿を見て、笑い出す。
「ヒーヒッヒ。『
ダイヤが指を鳴らし、爆発した右手のひらを再び作り直す。
そして、ダイヤがリチュを指さし、人形がリチュに向かって走る。
人形は、リチュの目の前に来ると、左手を肩の位置までもっていき、地面を滑るように、手の甲で平手打ちをする。
リチュは、どろどろになりながらも、ジャンプをしてそれを避ける。
そして、落下したリチュは地面によってつぶれる。
「くっ… 形を保つことすら一苦労です。」
リチュは、自分の姿を意識しなおし、形を作り直す。
しかし、その姿は以前の大人びた20歳ほどの女性だったが、今は13の少女のような姿になる。
その姿を見て、ダイヤが一瞬ひるむ。
「つっ。その姿は。頭が…」
頭を押さえるダイヤに向かって、走り出すリチュ。
ダイヤが、リチュを睨みつけ、人形が両手を振り上げる。
右、左と手のひらを地面に叩きつけようとする人形。
リチュは左手を、人形に向けて『
3つの氷柱は、1つが人形の右手、1つが人形の左手、1つが人形の頭に刺さる。
両手は爆発し、腕だけを地面に当てる形になる。
リチュはその腕に乗り、ダイヤに向かって、その上を走る。
「ちっ、こっちに来るな!」
人形が腕を振り、リチュを落とす。
両手が再生した人形は、落ちたリチュをはさむように、両腕を広げる。
人形が両手でリチュを押しつぶす。
その直前で人形は動きを止める。
「くっ。何をやってるんだ俺は。このくそスライムを殺さねば、ガキどもが皆殺しにされるってのに!それに、あいつはもう死んだ!あのスライムの姿があいつに似ているからって…」
ダイヤの脳内に、今のリチュによく似た少女が思い出される。
お手玉をする自分に、拍手する彼女。ボールの上から落ちた自分を見て、笑う彼女。そして、壊れた壁に倒れ、潰れた彼女。
そこまで、思い出し、ダイヤは頭を振り、その記憶を遠ざける。
そして、今、自分が乗っている人形が倒れかけていることに気付く。
ダイヤが昔の記憶を思い出している間に、地面に落ちたリチュは、人形の脚を切り崩していた。
「まずい!!」
ダイヤは、人形を蹴って、ジャンプする。
倒れた人形は、大爆発を起こし、その姿を消す。
「ちっ。」
ダイヤが両手に『
リチュは斧を振り、ダイヤに向かって走り出す。
ダイヤが『
リチュがダイヤに向かって左手を向ける。
リチュの目と髪が、緑色に染まる。
「
ダイヤの腹を、光速の槍が貫く。
「くっ!」
ダイヤが腹を押さえる隙に、彼の首をはねるリチュ。
「ぐは!」
ダイヤの体は床に倒れ、彼の首はまだ息をしていた。
「まだ生きているんですか?貴方は何の種族なんでしょう?」
ダイヤの目には、彼に興味を示すリチュの目が映る。
その目を見て、彼は思う。
「(ああ、やっぱり。お前はその目をしているときが一番綺麗だ。いや。ガキどもの輝いた目は、どれも素晴らしいものだ。久しぶりだな。この感覚も。どうしてだったか。)」
彼はそこまで思って、嫌な記憶を呼び起こす。
「(そうだ!今まで、あいつらから輝いた目を奪っていたのは俺じゃないか。どうして… 何故俺は…)」
そこでダイヤは考えるのをやめ、再びリチュに意識を向ける。
「まぁ、いいでしょう。貴方が何族でも、私にはどうでもいいことです。」
リチュは既に、ダイヤへの興味を失っていた。
その虚ろな目は、今の彼にとって最も見たくないものだった。
「(やめろ!そんな目をするな!お前にそんな顔をされたら。俺達の生きがいはどうなる!)」
ダイヤの心の叫びなど知りもせず、リチュは左手を彼に向け、自身の髪と目を赤くする。
彼は最期に思う。
「(お願いだ、リチュ!また、笑ってくれよ…)」