青い空から太陽の柔らかい日差しが降りてくる。
土曜日の昼時、混雑する大通りを抜けてジュニアとイチが目指すのは大きな仕掛け時計が目印の複合商業施設。
「今どきの女子高生は何を欲しがるのかな?」
ジュニアが隣を歩くイチに目を向けた。
「女子高生ね」
この3月まで中学生だったことを考えれば、4月になったとは言え春休みも明けていない15歳を女子高生と呼んでいいものか、ちょっと疑問が残るところ。
4月生まれで一番に誕生日を迎えるのにも関わらず、一番小柄な体格を気にしている。
明日はカエの16回目の誕生日。
3人の中で、誕生日プレゼントは残りの2人が合同で渡すのが、ずっと昔からの暗黙の約束だ。
今日の買い物はそのための外出。
「何を贈るか。なんか年々ハードルが上がっていくよな」
「まあねぇ。
でも今更リクエストも聞けないし。お互い闇鍋みたいなドキドキはおもしろくていいんじゃない?」
軽く緊張の面持ちのイチに比べ、あははー。と軽いジュニアの楽しそうな顔が、大きな仕掛け時計を見上げた。
カラーンと大きな鐘の音を一度響かせて、ちょうど午後1時を指す時計盤の下を、明るい音楽に合わせて数体の人形がクルクルと踊りながら可愛らしいダンスを披露(ひろう)してくれた。通行人も多くが足を止めて、その光景を見上げている。
「あれ。ハトが出たはずなのに」
古い記憶を取り出すようなジュニアの呟(つぶや)きに、イチも時計を見上げる。
「ハトが出るのは12時と3時と……。
3時間ごとだったろ。
カエと、ハトのことで言い争っていたのは誰だったっけか」
ふと脳裏によみがえる古い記憶に、イチが呟く。
「はーい。それ僕。
ハトが咥(くわ)えていたのは、小さなリンゴか、デカいサクランボかでモメたんだ」
目の前を転がるように走り抜けていった小さな子供たちを見ながら、ジュニアは懐(なつ)かしむように微笑んだ。