とある荒れ果てた世界。その世界を切り裂くのは光の一筋と大きな翼。
「魔王を倒したぞ!!」
「グギャアアアアアアアアアア!!!」
掲げるは人々から託された希望の剣。そしてドラゴンの雄叫びだった。
「勇者が帰ってきたぞ!」
「我々に平和が訪れた!」
溢れる歓声の中、勇者と呼ばれる男は竜から飛び降り街に入った。
「今日は祝杯だ! 何が食べたいエレルグ!?」
「グギャ!」
「そうか!肉か!じゃんじゃん食え!せっかく平和になったんだ。……ッゴホッ!」
勇者と呼ばれる男は途端に苦しそうな咳をあげながらもドラゴンの身体を叩いていた。ドラゴンはその様子を心配するように頬を舐める。
「……ギャ?」
「大丈夫だ。これから俺たちはもう戦わなくていいだ。きっと治るだろう。平和な世界で俺はお前とゆっくり過ごすんだ。」
しかし、数年後。
そんな未来は来ることがなく、街に日々訪れて酒を飲む勇者の姿はすぐに消えた。
数日後
「聞いたか?腐敗の地で魔王と渡り合った勇者は病に犯されたらしい。」
「やっぱり、あの状態何かおかしいと思ったんだよな。皆怖がっていたし、あいつには悪いが来なくなったのは病気が広がることを考えたら良いことかもしれないな」
――そして、平和な世界から1年後
勇者はひっそりと息を引き取った。
「ごめんなエレルグ。やっぱり俺の身体には限界があるらしい。魔王には2人だけで勝ったのにな。お前ともっと世界を、余暇を過ごしたかった。せっかく手に入ったのに……」
「……」
「あーそうだ。お前は長生きだろ?なら、また生まれ変われるかもなあ。もし、生まれ変わったら俺と一緒にこの手に入れた平和な世界を満喫しよう。」
彼は幸せそうに目をつぶった。