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Ep.32 エンデレーン到着

 冒険者パーティの風の旅人の3人と、護衛対象の3人のおじさん達とエンデレーン検問所まで同道してきた。

 大所帯でも旅というのもあり、ここまでは安全に来ることが出来た。


 眼前にはエンデレーン検問所の門が構えている。

 この門を通った先から、ウーズ領内に入ることになる。花の都ボリージャへ、いよいよあと2日の道のりとなるのだ。


 ここまで比較的順調な旅だったな……。僕一人ではこうはいかなかっただろう。改めてこれまで出会って来た人達に感謝したい。



 アランさんが道すがら話してくれたことだけど、ここエンデレーンや他の検問所に入る時は入口に光の精霊と契約した検問官が居て、光の精霊の残滓を入口を通過する時に付けるのだそうだ。また、闇の瘴気を感知して魔族の侵入を防いでいるという。


 光の残滓をここで旅人に付けていくので、ウーズ領内で光の残滓が付いていない者は不法侵入者として拘束されるのだとか。だからここで通過することはこの先必ず必要になる。そうやってウーズ領内を魔族や侵入者から守っているんだなあ。

 因みに光の残滓は無害で肉眼では視認できないので、特に気にしなくてもいいとか。




 僕らはエンデレーン検問所の入口を通過した。

 その時、警備の為の詰所が設置してあって、そこに人が立っていて門を通る人をチェックしている。きっとこの人が検問官という人かな。

 光の精霊らしき姿は見当たらない。キョロキョロしてるとウィニが僕が何を探しているか分かったのか声を掛けてきた。


「くさびん。精霊は中位精霊からじゃないと見えない」


「……あ。そうなんだ。じゃあ下位の精霊なんだね」


 是非この目で見てみたかったんだけどなぁ。残念。


「でもわたしほどの魔術師なら精霊は気配でわかる。えっへん」

「地味に凄いから悔しいなあ」


 ウィニがまたいつものポーズをしてドヤ顔してる。もう見慣れたけどウィニって結構自信家だ。そういうところもウィニの憎めないところだけどね。



「ウーズ領へようこそ、旅の方!」

 アルラウネの検問官さんの歓迎に挨拶を返した。

 これですでに僕らにも光の残滓を付けてもらってるみたいだから、ウーズ領での活動ができるようだ。


 それにしてもさっきの検問官さん、綺麗な人だったなぁ。ジャスミンのいい香りもしたし。カタロさんも情報は正しかったようだ。




 風の旅人の皆とはここで別れる事になった。

 彼らは護衛対象のおじさんをここまで送り届けて依頼は達成して、一泊したのちまた来た道を戻るそうなのだ。


 短い間だったけれど、握手を交わして別れた。

 またどこかで会えたらいいなと思いながら去っていく後ろ姿を見送った。



 ここからはまた僕とウィニの二人旅だ。目的地はいよいよ花の都ボリージャだ。今日はすでに日も落ちているので宿を探して体を休めよう。


 それにしても、ウーズ領に入ったんだなと実感する。アルラウネをちらほら見掛けるのだ。そこかしこに点在するお店もアルラウネが営業しているところが多いね。



「すんすん……。……いい匂い。」

 屋台で肉の串焼きを売っていて、ウィニはその匂いにつられてフラフラと吸い込まれていく。

 ご飯時だから、今日の夕飯をここで済ませても大丈夫かな……。


 ……所持金と相談する僕。うん。大丈夫そう。


 屋台で焼いている串焼きに釘付けのウィニは目を輝かせている。しっぽが左右にふりふりしてるので分かりやすい。

 肉の焼ける香ばしい匂いが食欲を誘う。

 僕とウィニは串焼きを3本ずつ購入した。



「くさびん! こっちでたべよ」

 串焼きを包んでもらったウィニはうきうきしながら屋台の脇の座れる場所まで駆けていき、満面の笑みで食べ始めた。食べてる時のウィニはいつもの仏頂面とは違いにっこにこなのが面白い。


 僕もウィニと並んで串焼きを頂く。串焼きで手が塞がっているので手を合わせられないから、心の中で手を合わせて頂こう。

 猪の肉に塩をまぶして焼いたもので、お肉に何か工夫してあるのか臭みがなくて美味しい。



 僕が2本目に差し掛かった時、ウィニはすでに食べ尽くしてしまったようで、猫耳がぺたんとして串を見つめていた。


「……おかわり……ほしい」

「うーん……。じゃあこれあげるよ」

「いいの? くさびんはわたしの救世主だ」


 大袈裟だよ。と僕は笑いながら僕の串焼きをウィニに1本あげた。……きっとおかわり欲しがるだろうと思って多めに買っておいて良かった。

 こんな事もあろうかと。というやつだ。




 その後宿を見つけて部屋を取る。相部屋なのを申し訳なく思ったが、食費がかかる分こういうところで節約しないといけないのだ。

 明日はいよいよボリージャを目指す。荷物の確認をしっかりして明日に備えることにした。


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