翌日、カインズさんに用立てて貰った旅の物資を受け取り、村の入口で見送りを受けた。
太陽の光が眩しい。旅立ちには良い日和になった。
僕の見送りに、カインズさん、カタロさんとマルタさんが来てくれた。数日間本当にお世話になった人達だ。
カインズさんから荷物を纏めた皮袋を手渡された。
背負えるタイプの皮袋の中には、周辺の地図に食糧と水や調理器具、雨や防寒対策にフード付きマントや寝袋。そして幾らかのお金。旅の為の道具が沢山詰まっているばかりか、無一文の僕の為にお金まで……。
皮袋に詰まった荷物のように、僕の胸は感謝の気持ちでいっぱいに詰まっていた。
カタロさんからはいろいろと役に立つだろうとナイフを、マルタさんからはまたこの村に遊びに来てねとお弁当を貰った。
僕はそれぞれに感謝の気持ちを伝える。
カタロさんに会わなかったら僕は今頃どこかで野垂れ死んでいたかもしれないし、魔物にやられていたかもしれない。
マルタさんの気遣いと温かい料理で心を救われた。
あの時口にしたスープの味は、きっと忘れることはないだろう。
それ程にこの二人には救われた。また必ず会いに来てお礼をするよ。それまでどうかお元気でいて欲しい。
「皆さん、本当にお世話になりました!」
別れの時。僕は精一杯の感謝の気持ちを込めて頭を下げてお礼を言った。
するとカタロさんが豪快に男泣きしながら
「クサビィ! 頑張るんだぞぉ! ……うおぉぉん!」
「はい……! いろいろ落ち着いたら必ずまた会いに来ます! それまでどうかお元気で……!」
僕はカタロさんと熱い握手を交わす。カタロさんは握手しながら下を向いて大きく頷き地面をふた滴濡らした。マルタさんはその様子にホロリと涙を流していた。
カインズさんはそんな二人を見ながらやれやれと苦笑して、穏やかに微笑んだ。
僕はカインズさんとマルタさんとも握手を交わす。
「幼馴染さんの事は任せるといい。旅の中で辛く苦しい時もあるだろうがくじけるなよ。……気をつけてな!」
「もっとここに居てもいいのよ……いえ、クサビくんにはやらなきゃいけないことがあるものね……。……また会いましょうねっ」
「はい! ありがとうございました! ……行ってきます!!」
僕は背を向け歩き出す。
後ろからの声援に一度だけ振り向き、笑顔で手を振り返しまた歩く。
ハプトラ部族領、ヘッケルの村。この眩しい太陽のように温かい人達だった。僕は優しい人達の声に押されながら足取り軽く旅立つのだった――――