俺は、あのチューハイ事件からしばらくして園田と萌が付き合い始めたのを知った。真理は荒れているだろうな。たまたま見かけて話しかけてみれば、やっぱりそうだった。
「真理さん! 久しぶりだね!」
「うるさいわね! 今急いでるの!」
「園田君探してるの? 今頃、彼女とイチャイチャしてるかもね。悔しいなぁ。真理さんも彼を取られて悔しいでしょ?」
大概かなと思ったけど、ついつい呷ってしまった。
「うるさいっ!」
「素直にならないと後悔するよ……ってか、もう遅いか」
「うるさい、うるさい、うるさいっ!」
真理は、俺を振り切って行ってしまった。
本当に萌と付き合っているのか、真理は園田を問い詰めたみたいだったが、当然のごとく玉砕したらしい。真理は美人だとちやほやされて自分に過度な自信を持っていたから、かなり堪えたみたいだ。しかも実家が隣同士で小さな頃から知っている仲の幼馴染に振られるなんて思いもしなかったんだろう。
それからの彼女は、見ていられない程、憔悴していた。あれ程、真理をチヤホヤしてくれる男子や崇拝する女子が離れるのを恐れていたのに、もう去る者は追わず状態だ。新作コスメとかハイブランドの新作コレクション、美味しかったランチとか、何かとSNSに投稿して、フォロワー数やいいねの数を気にしていたのもぱったり止めてしまった。そのうちに翌年のミス・ミスター甲北が誕生してますます彼女の取り巻きも減っていった。
悪趣味だとは自分でも思うけど、最初は単に興味があって真理の様子を観察していた。でも見ているうちにかわいそうになってきてしまって知らないうちに構い倒していた。
別に真理の失恋に身につまされた訳じゃない。だって俺は萌をそんなに好きじゃなかったから、彼女が悠と付き合い始めたのも別にショックじゃなかった。それよりもよくあのダサくて陰気な男と付き合えるなというのが正直な感想だった。
「おっ! 真理ちゃん! 今日も美人だね!」
軽く声をかけると、真理は嫌そうに俺を見た。
「白々しい。どうせ誰にでも言っているんでしょう? そういうの、止めてくれませんか?」
「おお~、ヤキモチかなぁ? 心配しなくていいよ。俺も反省してさぁ、最近あっちの方はご無沙汰してるんだよ」
「あ、あ、あっち?!」
「そう。これもぜーんぶ、真理ちゃんのため。健気でしょ?」
「何言ってるんだか!」
プンプン怒って真理は行ってしまった。失敗だったかなぁ。こう見えても
それからというもの、俺は真理に無視されるようになった。それ以前もツンデレな感じで会話が成り立ってなかったんだが、一応反応はあった。ここは引いて待つべきだろう。俺はしばらく真理に近づかなかった。
ところが、最近、チラチラと視線を感じる。それも真理のだ。俺が突然近づいて来なくなったので、気になるみたいだ。思わずニヤリとした。