俺――野村孝之――は、言っちゃ悪いが女には困っていない。だから、うちの大学のミスコン『ミス甲北』で優勝した新田真理に群がる気持ち悪い軍団の仲間になる気は、本当はなかった。どちらかと言うと、同時優勝したもう1人のミス甲北の佐藤萌の方が気になる存在だった。
萌は美人タイプの真理と違ってよく言えば素朴な感じ、はっきり言えばまだ垢ぬけていない。でも可愛いし、巨乳だし、性格がいい。だから真理と違って取り巻き連中を侍らす訳ではなくても、本人も知らないうちに隠れファンが結構できている。
真理は、その事実を正確に把握していてファンの男の子達を持っていかれないように一生懸命牽制していた。それが害のない範囲だったうちは静観していたけど、段々エスカレートしていって見逃せない範囲にまでなってきた。
ある日、人気のない講義室の前を通りかかった時、俺は真理と取り巻きの1人田中の会話を偶然聞いてしまった。
「ねえ、田中君だから頼んでるのよ」
「で、で、でも……そ、それって犯罪なんじゃ……」
「そんな事ないわよ! 萌が意識朦朧になっても首を縦に振らせれば合意よ! アンタだってもう1人のミス甲北とヤれたら嬉しいでしょ?!」
「そ、そ、そりゃ……でも……」
「ちょっと! そこは私の方がいいって言う所でしょ!」
なんだか滅茶苦茶、かつ犯罪チックな匂いがしてきた。気の弱い田中は押しに弱い。このままだと萌が危ない。翌日から俺は真理に近づいた。
「真理ちゃん、こんにちは!」
「えっと、貴方は?」
なんか警戒されちゃったみたいだ。俺はイケメンだし、同じゼミだと強調して美人と持ち上げれば、真理は単純だから機嫌が直るだろう。
「野村孝之。同じゼミだよ。美人に覚えていてもらえないって悲しいなぁ」
「えっ、お、覚えてるわよ」
「嬉しいな。お近づきの印にこれからランチどう? まだお昼食べてないよね?」
軍団がギッと俺を睨んだけど、俺は気にしない。真理の耳元で『2人っきりでランチしたいな』と囁いたら、真理は頬を染めていた。案外、単純、もとい