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 いつかのあなたへ


 はじめまして。

 この手紙をあなたがどのタイミングで読むことになるかはわからないけれど、

 読んでくれてありがとう。

 これは、あなたが自分を嫌いになったときに

 渡すよう、読むようにあなたのお母さんに渡した手紙です。


 私は、あなたに会うことはないでしょう。

 けれど、あなたと会うことをとても楽しみにしていました。

 あなたは、私のことを写真などで知っているかもしれません。

 私は、生まれてくるあなたのことを何も知らずこの手紙を書いています。


 実は、私は悪い魔女です。

 なので、あなたにいくつかの魔法をかけました。

 ひとつ、

 あなたは人を思いやれる優しい心を得なければなりません。

 何があっても。絶対に。

 ふたつ、

 そしてあなたは人に愛されなければなりません。

 みっつ、

 あなたはこの世界で為すべきことを終えるまで私には絶対に会えません。


 この手紙を読む日、あなたは何かに傷ついているかもしれません。

 何かに苛立っているかもしれません。

 誰かを消してしまいたいと思っているかもしれません。

 自分が消えてしまいたいと思っているかもしれません。

 そのすべてを、阻む魔法をかけました。


 私はあなたの顔を知りません。

 あなたに会う前に遠くへ行ってしまうから。

 でも、あなたがとてもかわいいということを知っています。

 あなたが優しい子になるということを知っています。

 なぜかって、それはこの手紙をここまで破り捨てずに読んでいるからです。

 あなたが本当に心のない子ならば、魔法なんてバカじゃないのと

 きっともうこの手紙はびりびりになっているか、

 あるいは読んでいるお母さんから逃げ出しているでしょうから。


 だれがあなたを悪く言っても

 あなた自身があなたを嫌いでも

 多くの人に望まれ、楽しみにされた命であったことを

 私はあなたに伝えたいと思い、ペンを取りました。

 自分を嫌いでも構いません。

 いつか好きになろうなんて思わなくて結構です。

 それでも、あなたは誰かに愛されます。

 その時に、あなたを愛してくれた人の想いをまっすぐに受け止めれば

 それでいいです。

 誰にも愛されていないと感じるときもあるでしょう。

 その時は、自分が周りの人を愛せているか、考えてみてください。

 人でなくても良いです。

 動物でも、空でも、花でも、歌でも、なんだっていい。

 何かを、全てを嫌いなまま消えるのは、とても悲しいことです。


 いつか私に会う日には、たくさんの大好きなものを抱えておいで

 たくさんの楽しかったことを、抱えておいで。

 そして、私が好きだったお茶を飲んで、栗羊羹を食べながらお話ししよう。

 そのときは、あなたの名前を初めて呼べる。楽しみにしています。

 できるだけ、たくさんたくさん思い出を持ってくること。

 少なかったら、突っ返すからね。



                         あなたのおばあちゃん瑛子より








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