「落語研究会」という看板の掲げられた部室にある男が入っていった。
「なんだ。おまえ一人か」
「そうなんですよ。せっかく来たのに」
「そう言えば
「いえ。アレをやっちゃいまして」
「何だよ」
「ちょっと荷物をね、持ち上げようとしたらピキッと」
「ぎっくり腰か」
「いえ、ピキッときたものの、そのまま荷造りを続けて家の中はすっきり」
「腰は『こし』でも引っ越しかよ。うっとおしいわ」
「へへ……」
「で、
「それが聞いて下さいよー」
「さっきから聞いているよ」
「引っ越しのごあいさつに『喉ごし』の良い蕎麦でも配ろうと思って買ったら
「そんなわけあるかよ! 『引っ越し』と『のど越し』をかけたかっただけだろ」
「いやぁ。腰がぬけるかと思いました」
「それ程のことかよ」
「だから今腰が弱っているんで、へっぴり腰です」
「いつも姿勢悪いから気がつかなかった」
「ひどいなぁ。扱いが荒すぎて
「例えがわかりにくいわ」
「
「お腹空いてんのか?」
「そういえばペコペコだ。こしあんぱん食べよう」
「まぁいいわ、そう言えばどうして引っ越したんだ?」
「好きな子の部屋の隣が空きまして。何度か振られているんですけれど」
「いや、それただのストーカーだろ。怖いわ」
「そうか。だから引っ越し
「それこそ腰が抜けたと思うぜ」
「粘り腰と言って下さい」
「で、何処に引っ越したんだよ」
「ワッショイ! ワッショイ!」
「なんで急に
「気分が盛り上がりまして。あとはヒントです」
「そこまでして知りたくねぇわ」
「そんなこと言わないで下さいよぅ」
「急に弱腰になったな」
「
「まぁ、いいわ。引越祝いに飲みおごってやるよ、どうせ金ないだろ」
「そうだよ!
「急にけんか腰になるなよ」
「こちとら江戸っ子でい!」
「東京かよ」