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お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈
異世界恋愛ロマファン
2024年11月03日
公開日
20,494文字
連載中
【もう私は必要ありませんよね?】

私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――

※途中まで鬱展開続きます(注意)

序章

ゴーン

ゴーン

ゴーン……


結婚の祝を告げる厳かな教会の鐘の音が鳴り響く。


私は夢でも見ているのだろうか……? 

何故、この場所に立っているのだろう……?


やがて鐘の音が止まり、辺りに静けさが戻ると神父の誓いの言葉が紡ぎ出されてゆく。


「……汝、クリフ・バーデンは、ここにいるリリス・クレイマーを妻として生涯愛することを誓いますか」


「はい、誓います」


クリフが神父の言葉に頷く。


「それでは、リリス・クレイマー。汝はクリフ・バーデンを夫として生涯愛することを誓いますか」


「はい、誓います」


はっきり頷く。


「では、誓いのキスを」


神父の言葉に、クリフはヴェールをそっとあげると……で、リリスの唇に誓いのキスをする。


誓いのキスを終え、クリフがそっとリリスから離れると何処からともなく拍手が聞こえてきた。

その拍手を皮切りに、あちこちから拍手と歓声が沸き起こる。


クリフとリリスは嬉しそうに手をふると、腕を組んで教会の出口へ向かって歩き出し……目の前を通り過ぎていった。


私の方に目をくれることもなく。


おめでたい場所なのに、周りはみんな笑顔でいるのに私の心は凍りついている。


私は何て愚かな女だったのだろう。

結果は分かっていたのに。


初めから自分が選ばれるはずは無かったのに……それでも心の何処かで期待していた。

クリフは私を選んでくれたのだと。


いや、違う。そもそも自分で勝手に勘違いして期待してしまっていたのだ。

いいように解釈してしまっていたのだ。


だから今……。


私、フローネ・シュゼットは……こんな格好で、この場に立っているのだから――






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