目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第507話 限定ミッション①

 ミッションは殲滅戦。 友軍機と協力して敵武装勢力の殲滅。


 ――武装勢力?


 異星人じゃないのかと首を捻り、詳細を確認すると相手はテロリストのようだ。

 敵戦力の詳細もある程度だが開示されている。 

 最も分かり易く脅威度が高いのは機動兵器。 まずはⅠ型。


 どうやら敵に鹵獲された機体という設定らしく外装が継ぎ接ぎされたような見た目なので分かり易い。 

 次にテロリスト独自の機体――粗製トルーパー、暫定名称は『ボーンヘッド』。

 巨大な頭に手足と砲や重火器を搭載したような印象を受ける見た目なので成程と言えネーミングだ。


 設定を確認すると大破したトルーパーのパーツを寄せ集めて作った機体らしい。

 大破したⅠ型の胴体を核に装甲や武装を強引に据え付けた代物のようだ。


 動く砲台といった印象でスペック的には類似点の多いパンツァータイプに近いのかと思ったが、足にホバリング用の推進装置が積んであるので見た目よりは軽快に動くかもしれない。


 後は『歩兵』。 強化スーツを着たテロリストが携行武器で攻撃してくるようだ。

 小銃程度ならそこまでではないが、ロケットランチャーなどの爆発物には注意が必要との事。

 ヨシナリはふーんと眺めて説明文をスクロールさせ、最後の項目を表示させる。


 報酬についてだ。 完全歩合制、撃破した数によって決まる。

 要は仕留めた分だけ報酬を支払いますよと言う話だ。 

 参加者を絞るという事はフィールドが狭いのか? 


 正直、この内容なら普通に参加自由でもいいような気がしたからだ。


 「まぁ、いいか。 向かってくる奴を仕留めればいいだろうし、敵がどんな物かは見てから判断しよう」


 確認を終えると待機画面と作戦開始までのカウントダウンが動いている。

 特にやる事もなかったので機体と装備の再確認を行い、それすらも終わった後はぼんやりと開始の時を待っていた。 


 やがてカウントが進み、ゼロになった。



 映像が切り替わり、ズシリと体――いや、重い機体の感触。

 同時に様々な音が脳に叩きこまれる。 爆発音、ヘリのローターが回転する音。 そして銃声。 

 現在地は狭い空間に自機と一緒に他の五機のソルジャータイプが固定されている。


 恐らくは巨大なヘリの中。 どうやら戦場へと向かっている途中のようだ。

 ヨシナリはセンサー系を呼び出す。 Ⅰ型の安物センサーだけあって感度が非常に悪い。

 それでも周囲の簡単な地形と敵味方の位置関係は分かる。 


 味方は一点を包囲する形で四方から攻撃しているようだ。

 恐らくは中心にテロリストとやらの基地があるのだろう。 

 どうやら降下ポイントに到着したようで機体の固定が解除され、ウインドウに降下してくださいとガイドビーコンが出る。 ヨシナリははいはいと呟きながら機体を移動させるが――


 「何だ? 妙に重いな」


 動作が全体的にもっさりしている。

 動かしにくいなと思いながらばくりと開いたハッチから外に飛び出した。 

 Ⅰ型に飛行能力はないがスラスターは付いているのでパラシュートなしでもそこそこの高さなら無傷で着地できる。

 スラスターを噴かして落下速度を殺して着地。 ずぶりと足が大きく沈む。


 ――やっぱり砂漠か。


 足のホバリング用のスラスターを噴かして埋まった足を抜く。

 ギラギラと輝く太陽に激しい戦闘音。 

 レーダー表示を確認すると敵味方の識別はしっかりと出ているので誤射の心配はなさそうだ。


 他の機体も降りて来たので、足並みを揃えようかと声をかけようとしたがエラーメッセージ。

 通信制限中と出た。 何だそりゃ。

 連携を取らせる気がないのか? それともこれも対応力を見る一環って事か?


 まぁいい、できない物は仕方がないので、自己判断で動くしかない。

 空中には無数の戦闘ヘリに後方からは戦車が景気よく砲弾をぶっ放していた。

 まさに戦争といっていい有様だが、こうして見ると随分と味方側が優勢だ。


 やはり人数を絞っているだけあって敵の規模がかなり小さい。

 機体を加速させて戦闘が激しいエリアへと入る。 

 あちこちに敵味方の残骸が砂に埋まっているのが見えた。


 近くで大きな爆発と同時に大量の砂が舞って視界が悪くなる。  

 それに混ざり聞き慣れない駆動音。 


 ――来たか。


 地面を滑るように移動して来るのは人型とはかけ離れた機体。

 粗製トルーパー、ボーンヘッドだ。 

 両肩の散弾砲を撃ちながら突っ込んで来るので、後退しながら応射。


 こちらの射線を切りながら砂上を滑るように移動する姿は明らかに戦い慣れている。

 以前のイベントで見た運営の用意した仕込みプレイヤー達よりも明らかに技量面では優れているように見えた。 遮蔽物がないこの地形で散弾砲相手に殴り合いは避けたい。


 仕方がないなと近くに落ちていたボーンヘッドの残骸を拾って盾にする。

 敵機は散弾砲を――撃たない? まぁいいとヨシナリは盾はそのままに空いた手で突撃銃を連射。

 敵機は加速して回避、挙動からこちらの後ろに回り込もうとしているのが分かった。


 ――盾を撃ちたくないのか?


 意図は不明だが、弱点であるなら遠慮なく付け込ませて貰う。

 動き回る敵機を追いかけるように銃弾をばら撒くが、想像以上の機動性で捉えきれない。

 やはり片手で突撃銃の連射は厳しかったようだ。 こんな事なら短機関銃にしておけばよかったか?


 そんな事を考えながら弾が切れたので後退。 敵機は逃がさないとばかりに追って来る。

 よし、ここまでは想定内。 近くの味方機が居る場所まで誘導して――不意に敵機の姿が消える。

 元々、砂が大量に舞っている事もあって視界が効き辛いのだが、あの消え方はおかしい。


 どうやって身を隠した? 思考に費やした時間は僅か。

 即座に看破したヨシナリは盾を投げ捨てて全力でその場を離れる。

 一瞬遅れて敵機が地中から現れた。 


 ――場所によってはあんなに簡単に潜れるのかよ!?


 突撃銃のリロードは間に合わないので拳銃を抜こうとしたが、それよりも早く敵機の腕部分が変形。

 内蔵されていた丸鋸のような物が飛び出し、赤熱しながら高速回転。

 切り刻みに来た。 軽い分、速いのかとスペック以上の挙動に納得しつつ、敵機を観察。


 腕の可動域は広くない。 あの丸鋸の威力を充分に出したいなら突きか薙ぎの二択。

 薙ぎはタイミング的に振り上げると時間のロスだ。 つまり、体ごと突っ込んで来る。

 そこまで分かれば対処は可能。 ビビらずにタイミングを見極めろ。


 予想通りに敵機は加速しそのまま丸鋸を突き出す――ここだ。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?