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第497話 ユニオン対抗戦Ⅲ:本戦三回戦㉑

 Aランクプレイヤーだけあって、闇雲にばら撒かずに左右、上下と綺麗に囲むようにミサイルをばら撒き、躱すとガトリング砲でハチの巣にしようと狙う立ち回りから技量の高さが窺える。

 対するヨシナリは躱す事にリソースを使わされ、余り効果的な反撃が出来ずにいた。


 完全に手数で圧殺しにきている。 


 「うへ、これ良く躱せたなぁ」

 「まぁなぁ、一応は見えてはいたから躱せなくはないんだ。 あの人、基本小型は左右、大型は上からだから下に包囲の穴ができる。 ――まぁ、そこをガトリング砲で狙って来るから、心臓に悪い相手ではあったな。 しかもあの図体で素早く動くものだからすっげー怖いぞ」


 映像で意表を突く為にヨシナリがミサイルを撃ち落として誘爆させ、強引に包囲を突破しようとするとカカラは即座にバレルロールと上下の動きで高度を合わせてヨシナリが正面に来るように位置を調整して来る。


 「多分だけど敵機と自機の位置関係を一定に保つ事を意識してるんだと思う」


 ガトリング砲の可動域を考えると側面に回られると捉え難いからだろう。


 「うわ、本当にぴったり張り付いてる。 怖ぇなぁ……」


 マルメルが身を震わせている間にもヨシナリとカカラの攻防は続き、しばらくの間は膠着するかと思われたが、グロウモスがバドを仕留めた事でフリーになったタヂカラオが飛び込んで来た。

 パンツァーファーストを叩きこんだ後、突撃銃でカカラの意識を散らす。


 流石に無視はできないと判断したのかカカラは戦い方を変える。

 ヨシナリとタヂカラオの間を狙ってミサイルをばら撒く。 元々、包囲するように攻撃する関係で人数が増えてもそこまでやる事が変わらないからだろう。


 そのまま当て易い方へとい追撃すればいいのだから完成度の高い戦い方と言える。

 ただ、その分、対処も分かり易い。 ヨシナリとタヂカラオは左右に分かれ、強引に包囲を突破。

 こうなるとカカラはどちらかに的を絞らざるを得ない。 迷いは一瞬、彼は邪魔者であるタヂカラオを先に葬ろうと機首を向ける。


 ここを勝負どころと捉えたヨシナリはパンドラのリミッターを解放して出力を上げる。

 これに関しては傍目から見ても非常に分かり易い。 エネルギーウイングと推力偏向ノズルから噴き出すのかエーテルの黒に変わるからだ。


 ホロスコープが目に見えて加速。 タヂカラオを狙うカカラの背後を取る。


 「おー、ベリアルさんのジェネレーター本当に凄いですね。 動きが完全に別物じゃないですか」

 「いきなり使っても対応されるだろうからここが切り時だったよ」


 狙いはカカラの推進装置。 巨大故に出力が凄まじく、揃っているからこそ安定している。

 つまり一つでも破壊すれば大きく体勢を崩す事ができるはずだ。

 そんなヨシナリの思惑を読んだのか、仕掛けるタイミングでカカラの機体が縦に一回転し、前後が入れ替わる。 


 「これは正直、かなり驚いたよ。 こんな事できるとは思わなかった」


 推進装置を狙ったヨシナリの思惑が外されはしたが、なら機首にでも叩き込んでやろうとハンマーを振り抜くが唐突に突き出て来た巨大な腕に捕まれる。


 「まぁ、可変機って聞いてたから腕を出して来ても不思議はなかったけど、これも想定外だった」

 「ってか、あのタイミングでハンマーのヘッド部分を掴んで来るのかよ。 怖ぇなぁ……」


 武器を掴まれた事で動きが止まる。 

 そこを狙ってガトリング砲の銃口が向くが、ヨシナリは捨て身で行く事にしたようだ。

 パンドラの出力を更に上げる。 それにより機体の全身からエーテルが噴き出し、ホロスコープを更なる闇に染めた。 


 「なぁ、ヨシナリ。 あのエーテルの鎧って要るのか?」

 「200%ぐらいなら使わなくてもいいんだけど、300以上に上げるとあちこちが爆発するリスクがあるからパーツの脱落とかを防ぐ意味でも必要なんだよ」


 流石にこれにはカカラも驚いたのか動きが僅かに乱れる。 

 それでも攻撃動作自体は継続しているので冷静ではあったようだ。

 ハンマーを手放し、発射の前にカカラの機首に膝を叩きこんで跳ね上げる。


 強引に照準を変えられた銃弾が何もない場所を薙ぐ。

 ヨシナリは武器を手放した事で空いた手を翳し、手の平の給排気口から収束させたエーテルを発射。

 これは攻撃よりも反動で機体の姿勢を変える為だ。 流れに逆らわずにエネルギーウイングを噴かす事で加速。 同時に反対の腕にエーテルブレードを作り出し、一閃。


 カカラは射撃を警戒してエネルギーフィールドの密度を偏らせていた事もあってその斬撃は通った。

 腕を切断。 落下前にハンマーを回収し、エネルギーウイングと推力偏向ノズルを全開にしてその場で独楽のように高速回転。 狙いは明らかだったのでカカラは迎撃しようとミサイルをばら撒こうとするが、タヂカラオがヨシナリに近い位置の全てを撃ち落とす。


 「あ、上手い。 ヨシナリの方に飛んでいく奴だけを落としてる」

 「まぁ、折角援護に入ったんだからこれぐらいはやるさ」


 全身の回転を利用したハンマーの一撃はカカラの推進装置を粉砕する。

 破壊された事により大きくバランスを崩すが、カカラは二基の推進装置で強引にバランスを取った。

 正直、ヨシナリとしてはこの時点で落とせたと思っていたので、姿勢制御に成功するのは紛れもなくカカラの技量――いや、これはもう意地なのかもしれない。


 強引に機首を振ってヨシナリを正面に捉えようとするが、残りの推進装置をグロウモスが撃ち抜いた事で完全にバランスを崩す。 

 こうなると技量でどうにかなるレベルではない。 

 機体の各所に誘爆したのかカカラの巨体が炎に包まれて爆発。 撃破となった。


 「いや、お二人が居なければかなり厳しかったですよ。 助かりました」

 「はは、これで勝てたら素直に喜べたんだけどね」


 タヂカラオは苦笑。 

 一息つく暇もなく、グロウモスを仕留めたアリスがフリーになった二人を狙う。

 同時にふわわを仕留めたモタシラがヨシナリに斬りかかる。


 タヂカラオはアリスにヨシナリはモタシラにそれぞれ対処。

 ヨシナリは少し迷ったが、自身にそのままフォーカス。


 「……ごめんなぁ。 ヨシナリ君……」

 「まぁ、勝ち負けのある勝負事なので気にしなくていいですよ」


 あのふわわが落ち込んでおり、口数が少ない。 非常に珍しい状態だ。 

 ヨシナリは努めて優しく言って映像の再生を続ける。

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