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#61.新たな世界へ

 そこは、赤い花に埋め尽くされた丘であった。

繊細な、細い糸のような花々は風に揺れ、ざあ、と、世界が波立つ。

いつの間にこんなところに来たのか、と、不思議な既視感を感じながらも、クロウは周囲を見渡していた。


「――いい風ね」


 ふと、そんな声が聞こえて振り向くと、白い帽子を被った、白いドレス姿の女が一人。

帽子を片手で押さえて背を向けたまま。

だというのに、クロウにはなぜか、楽しげに見えた。


「こんな光景を、貴方と見られたらと、ずっと思っていたの」


 女は、振り返りもせず、背中越しに聞かせる。

なぜか動けない。クロウは、指先一つ動かせぬまま、その声を聴いていた。

――愛した女の、久しぶりに聞く声だったのだ。


「二人で、楽しくハイキング。そうして貴方は私を抱きしめてくれるの。あの娘・・・は寂しがって泣いてしまうかもしれないけれど、二人きりの時は我慢してもらうわ」

「……ああ」


 そんなのもいいかもしれない、と、クロウは笑おうとする。

笑おうとした。だが、笑えなかった。笑い方を、彼は忘れていた。

こんな時にどんな顔をすればいいのか、彼には分らなかったのだ。

だから、ひどく不格好に、顔の筋肉をひくつかせていた。


「――エリスフィアあの子は、元気に育ってくれましたか?」

「ああ」

「強く育っていてくれると嬉しいのだけれど」

「君よりも強い。私などよりしたたかで、私はもう、負けてしまいそうだ」

「そう……よかったです。それだけが気がかりで」


 小さく背を震わせ、エリスティアは振り向く。

愛した女の顔がそこにあった。誰より愛した女だった。

仮初・・の自分だったとは言え、忘れられぬほどに心に残った相手であった。

その顔が、気弱そうに眉を下げ、泣き笑いの笑顔を見せていた。

今まで見たことのない、愛した女の初めての顔だった。


「私は、貴方と一緒に居たかった。ずっといつまでも、いられたらと思っていました」

「これからは一緒さ」


 もう、生きる必要などないのだから。

クロウは本心からそう思い、エリスティアの手を取ろうとする。

だが、動かない。動いてくれないのだ。なぜ動かないのか、と、苛立ちが募る。

もっと前に進みたいのに。早くエリスティアの元へ駆け出して、今すぐにでも抱き締めて……

抱き締めて、二度と離したくはないと、そう思っていたのに。


「でも、解っていたのです。私はきっと、貴方と一緒には居られない。自分が騙されていること、利用されていること、いつか死ぬであろうことも、全部知っていました」

「エリスティア、私はっ――」

「知っていても、愛していました。そんな貴方が愛しくて仕方なかった。すべてを受け入れたいと思ったから、私は貴方と――」

「エリスティアっ!!」


 届かない。

エリスティアは、遠くに行ってしまう。

また、届かなくなる。

エリスティアが、消えてしまう。


――そんなのはもう嫌なのに。なぜ手が届いてくれないのか。


 これだけ生きても、これだけ苦しんでも、まだ届いてくれないのか、と。

残酷過ぎる日々に、残酷過ぎた自分の人生に、いつまでも届いてくれない幸せ・・に、涙が溢れ、止まらなくなる。


「届かなくて、いいんですよ。寂しくても、我慢しなきゃ。だって貴方は、あの娘の父親なんですから」


 遠くなっていく声が、震えるクロウの耳に、最後まで温もりを伝えゆく。


「もう二度と会えないのは辛いけれど。愛した人が死ぬのを見るのは、もっと辛いですわ」

「私はっ、私はどうすればいいんだ!? 自分を何と思い込めばいい!? どうしたらいいのかわからないのだ!! お前の所に行かせてはくれないのか!? いつまで、いつまでこんなことを繰り返せばいい!?」


 想いは叫びとなり、遠くなってゆくエリスティアへと投げかけられる。

だが、エリスティアは泣き笑いの顔のまま、やがて背を向けてしまう。

は、と、息を飲み込む。愛した女が、自分に背を向けたその意味に、気づいてしまったのだ。


「私は、そんな貴方も好き。弱くて情けなくて、どうしたらいいのかわからない、そんな貴方を見せられても、私はやっぱり貴方が愛しい。でも、だからこそ――」

「あぁっ――」

「だからこそ、生き続けてほしいのです。あの娘にはまだ、貴方が必要ですわ。貴方を愛してくれる女性もいるはずです。あちらにいる人たちに、貴方と同じ思いをさせないために。不器用なままでいいのです。生きてください」

「私は、怖いのだっ! 自分でどう生きたらいいのかわからない! もう、自分がなぜ生きていたのかすら解らないんだ!! 教えてくれエリスティアッ、私は、私はどうすれば――」

「それは、死んだ私の教えることではないわ。生きている人たちに教わるべきこと。死者に引っ張られれば、きっと貴方も死んでしまうから――」

「行かないでくれ! 共に居られるなら死んだってよかった! 私はっ、私はお前のことを――愛していた・・・・・!!」

「……っ、私は、今でも愛しています・・・・・・・・・!!」


 それが、彼女の最後の言葉。

涙を流しながら。悔しそうに歯を噛みながら。

過去になってしまった自分に涙しながら、現在いまを生きる恋人に、あらん限りの気持ちを込めて愛を告げた。

それがどれだけ真摯なものであろうと、どれだけ深い想いの元在ったものだとしても、彼女は所詮、過去に過ぎなかったのだ。

そう、どんなに楽しい日々も、美しい思い出も、心に焼き付いた言葉も、すべて過去になる。

過去にすがろうとしても、それはやがて、砂でできた城のように儚く形を変え、やがて崩れてしまう。



「あぁっ――き、消えてしまった――エリスティア……!」


 残された男は、ただ、赤い花の上に崩れ落ち、うなだれてしまう。

結局、過去とはこのようなものなのだ。

崩れてゆく記憶の世界。

なぜ自分がそんなことになったのかもよくわからず、なぜ自分がそんな道を選んだのかすらよくわからない。

覚えていることは客観的な場面場面の情報のみ。

やがてそれすら時とともに形を変え、やがて失われてしまう。


『父さんは、なんでガイストって呼ばれてるの?』

『それが私の名前だからだ。私が自分の父からその名を引き継ぎ、やがてお前もその名を受け継ぐ』

『僕もガイストって名乗る事になるの?』

『そうだ。それがお前の人生だ。そして私の人生でもあり……ガイストとして生まれた者の、生き様だ』

『生き様って、なに?』

『そのために生き、死ぬ事だ。我らの系譜の元生まれた者は、皆自らの生を、与えられし使命の為捧げねばならん。ただそれを果たす為だけにお前は生まれ、私も生まれ、そして、私もお前も死んでいくのだ』

『それだけの為に、生まれて、死んでいく……』

『そうだとも。それだけが、我らの一族の存在意義。古の姫君と盟約を交わせし、夜烏よがらすの末裔の在り方よ』


 自分が誰であったのかすらよくわからない。

ただ、その時その時で大切なものがあって、その度に守ろうとして、そして、代償にいろんなものを捨ててきた。

最初に捨てたのは自分の、人として生きたなら得られたはずの人生。

次に捨てたのは自分の本質。

三つ目は、そんな事になった、その最たる理由だったはずの自分の心。


 夜烏として生きた彼は、沢山のものを失い、沢山のものを守り、そして、沢山のものを奪っていった。

それがいいことなのか悪いことなのかすらわからない。

ただ、自分ではもう、そんな生き方に限界を感じていて、いい加減、もうやめたいと思っていた。

愛した女の死は、その引き金であった。


 次に現れたのは、その愛した女と同じ顔をした少女だった。

どんな顔をしたらいいのか解らなかった。

夢だったのではないかと、本当は彼女は死んでいなかったのではないかと疑ったほどであった。

不思議と、自分とエリスティアとの間に生まれた娘だったとは気づかず、ただ、似ている娘だと思い込んでいた。


 結局彼は、その娘に言われるがまま生きることとなった。

暗殺者として、クロウとして生きることが、彼の新たな生き甲斐。

うんざりしていたガイストとしての生き様を捨て、新たな人生を歩んでいたつもりだった。


 だが、そんな勝手を、本来の彼は許さない。

許せなかったのだ。

今まで沢山のものを犠牲にしてまで生きたというのに、今更そんな、それまでの自分を捨てるなんて生き方、許せるはずがなかったのだ。


 だから、どこかでリセットが必要だった。

死による救済。

何もかも消して、無かったことにして、新しい『次の明日』とやらを自分も迎えようじゃないか、と。

よく解らなくなっている彼なりの、自分の人生のけじめ・・・のつもりであった。





「ふふふ、ずいぶん身勝手だねぇキミは。まさか自害するなんて、思いもしなかったよ」


 どこかで聞いたような声が、花畑に響く。

耳障りな、それでいて耳通りのいい、やけになれなれしい声。

何事かと顔を上げたクロウの前に、スーツ姿の男が一人、口元をにやつかせながら立っていた。

いいや、その男には顔なんてない。口元だけがそう見えたのだ。


「あんたは……?」

「君の記憶にはないようだねぇ。僕は今まで何度も君の前に姿を見せている。少なくとも声には覚えがあるだろう? なら、会ってないなんてことはないはずだよね?」


 なぜか顔が見えないその男は、楽しげにクロウの手を引き、無理やり立たせる。

視線は同じくらい。だが、やはりその男には見覚えがなかった。


「ああ嘆かわしい! 君は僕のことを知らないはずはないんだが!」


 なんで覚えていてくれないかな、と、あまり残念でもなさそうにわざとため息をついて見せる。

その仕草、わざとらしさはどうにも癇に障るものの……やはり、クロウには分らないままであった。


「本当にわからないのかい? まさか君、僕が『幽霊神父』だと名乗っていたから、知らないものだと思い込んでる訳じゃないだろうね?」

「……幽霊神父?」


 聞き覚えのあるフレーズだった。

だが、その言葉の表すところに、この目の前の男の姿は全く浮かばない。


「くくく――本当にわかってないようだね? じゃあちょっと考えてみようか。僕が君と会った時、周りには誰が居た?」

「……誰もいなかったはずだ。あんたが誰かを潜ませていない限りは、な」

「つまり、君は誰も潜ませていなかったことになる。君と僕しかいなかった。いいや、君一人しかいなかった・・・・・・・・・・

「……?」


 クロウには、彼が何を言っているのかわからない。

ただ気づけば、花畑は赤から白へと変わっていた。

繊細だった花弁は、今では力強く風に逆らい続ける。


「まあ、わからないならいいさ。君はつまり、そこまで『自分』というものを認識できていないことになる。君の部屋に鏡や窓はあったかな? 君は今、自分がどんな顔をしているのか解るかい?」


 呆れ果てたように、今度は深いため息をつきながら。

それでも尚喋るのをやめるつもりはないのか、軽薄な口調のまま、顔のない男は語り続ける。

だが、言われるままに想像しようとして……クロウは、自分が今どんな顔をしているのか、全く想像できなかった。


「私は……」

「そう、君は自分の顔を、ずいぶん長いこと見ていないようだ。だから、自分の顔がどんなものか解らないし、自分が今どんな顔をしているのかも想像できない。想像できないものは見ることができない。何故なら、ここは君の心の中。夢の中。ありもしないものは意味不明の偶像となる、心の世界なのだから」


 そうだろう? と、笑いかけながら。

男はクロウの手を、そのまま自分の、真っ黒に塗りつぶされた顔へと引き寄せる。


「――っ」


 拒絶しようにも力が入らず、クロウはされるがまま、男の顔に手を触れてしまう。

ひたりと、妙な感覚が、自分の指先、手のひらに伝わった。

それと同時に、黒塗りだった男の顔が、次第に波うち、形になっていく。


「こうやって触れていくと、形がイメージできるようになる。盲目な青年よ。君は今、久方ぶりに自分の顔に手を触れているのだ――思い出したかね? 自分の顔を」


 鮮明になってゆく男の顔は、どこか見慣れた、ありきたりな青年のものへと変わってゆく。

――そう、こんな顔であった。

言われるがまま顔をさすり、その感触を理解し、やがて、鮮明に思い出す。


「――私だ」

「そう、僕は君だ。ようやく思い出してくれた。君が捨て去った、仕事のために捨て去った感情。愛する女への辛い気持ちを忘れるために生まれた哀しい影だ」

「お前が、私の影……」

「不思議な話だろう? 自分の影に命じられ、君は仕事を果たしていた。僕から君への依頼は、どこか君の心に響く、辛いモノばかりだっただろう? さあ、それに気付けたらもう一息だ!」


 彼の顔をした男は尚も笑う。

顔が見えない時は気に食わないように思えたが、今ではさわやかに感じられる笑みであった。

不思議と、自分と同じ顔だと気づくや、クロウはもう、その声にいやらしさを感じなくなっていた。

現金なことに。自分自身のソレだと思えばもう、嫌悪感は薄れるばかりだったのだ。


「エリスティアとの過去も、僕のような虚ろな存在も、ただ君を突き動かすだけだった過去も――もう、何一つ、必要ないんだ」

「だが、それでは私は何のために今まで――」

「それすら忘れている君がそれを言うのかい? つまり、忘れてしまう程度のモノなんだ。君はそんなつまらないモノのためにいろんなものを犠牲にし、傷つけ、奪い、殺し――必死になって守ろうとしていた」

「……」


 返す言葉すら見つからなかった。

自分自身に突きつけられる言葉はすべて、彼の胸を強く打ってゆく。

とても苦しい、だけれど見て見ぬふりはできぬ真実が、そこにあった。


「人は、辛いことを忘れたくて、過去にすがろうとする。幸せだった日々に思い馳せる。だけどそれは、あくまで一時的な逃避に過ぎない。すぐに忘れて、また強く、明日を生きようとする」

「私は……それができなかった。自分でそうと思わねば、何も自分で生み出せなかった。私には、思い込める何かが、自分の何もかもを塗り変えられる何かが無ければ――」

「できるさ! できるから君はまだ、こんなモノを見ていられる。人はね、死んだらなんにもなくなるんだ。悠長にエリスティアの姿なんて見られると思ったかい? 君、それはただの現実逃避だよ!!」


 ハハハ、と、相も変わらず高いテンションで笑い続ける自分。

そんな自分を、彼は半笑いになりながら、ぼんやりと見つめていた。

そうしてまた、指さしながらニヤリと笑うのだ。まるで役者か何かのようだった。


「君はね、まだ生きてるんだ。生かされている。生きていてほしいと、そう願う人がまだいるんだ。いつまでこんな現実逃避を続けているつもりなんだい? 夢にしても、ちょっと長すぎはしないかい?」

「私に、生きていてほしいと……?」

「そうとも! 君の娘に君の新しい恋人に……それだけじゃない! たくさんいるはずさ!! なんたってこの世界は楽しいことであふれている!! 僕のように笑って見せろよクロウ! 哀しい顔をするために、この世界に生まれてきたわけじゃなかろうに!!」


 もう、何もかもがでたらめに感じられる。

こんな顔、いったいいつの自分がしたというのか。

あまりにも馬鹿げた笑い顔だが、確かに自信が感じられ、世の中が楽しいもののようにも感じてしまう。

自分に元気づけられる自分という、滑稽この上ない光景。すべてが笑えた。

おかげで、口の端がひくついてしまっていた。

目の端が揺れ、勝手に細まっていく。


「……はは。そうか、私は、笑ってもいいのか」

「笑っていいんだよ。その笑顔を皆に見せてやれよ。君は生きている限り、その笑顔をたくさんの人に見せるといい。きっと世界が変わる。君は今まで、不器用すぎたんだ」

「だが、困った。お前のような顔をしていたら、私はきっと、笑われてしまうぞ。頭がおかしくなったんじゃないかと思われてしまう」

「まあ、そうだろうね。何せ君は今まで寡黙すぎた。偽りの自分ですら、妙に格好つけていた。だから、妙なところで怪しまれずに済むような方法を、君に伝授してあげよう」


 最後に、同じ顔をした男同士が顔を寄せ合い、耳元でこしょこしょと内緒話。

それですら滑稽で笑えてしまい、吹きそうになるのを我慢する。


「――ほんとうに、それでいいのか?」


 そしてまた、その方法が馬鹿らしい。

使い古された手であるように感じて、クロウは驚いた顔で自分の顔を見つめる。

自信満々な顔がそこにはあった。こんな顔、いつ自分がしたというのか。

だが、こいつができるという事は、きっと自分にもできるのだろう、と、妙な確信を覚えてもいた。


「ああ、それでいい。下手糞だとバレるかもしれないけど、バレバレでもきっと、誰も気にしないさ。大切なのは『もう昔の自分は全部捨てました』って、相手に解ってもらうことだ」

「……捨ててしまって、いいのだろうか」

「いいんだよ。いいかい? 荷物っていうのはいつか降ろすためにあるんだ。だというのに君は、律儀になんでもかんでも背負い続けて、いつ降ろしたらいいのか、何を降ろしたらいいのかも解らなくなっている。だったらもう、全部降ろしてしまえばいい。いくつかは大切なものもあったかもしれないけど、そういうのはもうあきらめたほうがいいよ」


 妙に真面目ぶった顔で「その方が楽しいからね」と、はっきり肯定してくるのだ。

クロウはもう、「それでいいか」と思い始めていた。

結局彼は、肯定したかったのだ。すべてを投げ出すことに。

誰かだけでなく、自分自身でそれを肯定したくて、だけれどできなかったのが、今までの彼。

そしてこれからの彼は、それができる。できるようになったのだ。ようやくにして。


「さあ、夜明けはもうすぐだ。君の捨て去るものはたぶん、いろいろと取り返しがつかないものも多いはずだけど――世の中には、捨てなければ次に進めない、呪われた思い出なんかも沢山ある。『過去』に固執するな。『今』にこだわるな。『次の明日』こそが、生きている人間にはふさわしい」


 薄れゆく意識。消えてゆく世界。

花畑なんてどこにもなかった。

自分と同じ顔をした男などどこにもいない。

声すら、本当に聞こえていたか疑わしい。


 ただ、彼は思ったのだ。

「ああ、そうなのか」と。



 世界が白やみ、やがて夢は終わる。

終わらない夢の終わり。

過去という名の記憶の放流はやがて最後の一滴が流れ終わり、彼を現実へと引き戻してゆく。

死んだはずの男の、死ねなかった男の、これからの人生。


 その最初の光景は、自分を心配そうに覗き込む、今彼が愛している娘の顔からだった。


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