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第6話 『神代戦争』

・・・時は、1945年、某国で「マンハッタン計画」という研究が行われた。


それは、初期の原子爆弾の核分裂性コアとして製造されたプルトニウムの未臨界塊(直径89mmの球状で重量は6.2kg)を使用した研究であった。


だが、それは「臨界事故」を発生させ、人命を奪う事となり、こう呼ばれた・・・

・・・・・「デーモン・コア(悪魔の核)」と。



・・・そして、時は過ぎ、西暦2xxx年、密かに続けられていた「マンハッタン計画」は、最新の原子物理学・量子力学、測定装置・検査機器により大きな進歩を迎えた。



・・・この宇宙全体を構成する元素以外の96%を占める未知の『暗黒物質』・・・


この宇宙の構造形成は、暗黒物質の重力によるゆらぎ(物質分布の非一様性)の増幅と、ゆらぎをならす方向に働く宇宙膨張の競争の結果として起きる。



「今」となっては、その真の目的が何であったか不明であるが、「デーモン・コア」の性質を利用し、全宇宙に広がる「暗黒物質(ダークマター)」を捉え、「暗黒(ダーク)エネルギー」を利用できる段階を迎えつつあった。


・・・世界の全てを導きだせる「究極の知識」、『万物の理論(Theony of Everthing、セオリー・オブ・エブリシング、ToE)』を求めていたのかも知れない・・・



・・・しかし、デーモン・コアを元に、その実験により生成されたダークマターは、後に『Mana(Malice aberration nuclea energy ability:マリス・アブレーション・ヌークリア エネルギー・アビリティ:常軌を逸した異常な核エネルギー能力)』と呼ばれる特殊な臨界状態を呈し、他のダークマターに干渉しながら、ダークエネルギーを全世界に拡散してしまうのであった。



それまでも「霊力」、またの名を「エーテル」と呼ばれていた、「松果体」が発達した者、言わば「霊能者」や、「超能力者」だけが観測できていた「ダークエネルギーの一種」が、実験によって生じた「Mana(特殊な臨界状態)」から放出されたダークエネルギーにより全世界に拡散したことで、目に見えるほどのマクロなスケールで干渉現象を起こし、あらゆる物質・生物だけでなく、今まで観測できなかった、科学的に証明が難しい存在(霊、魂、神)までに影響を与え、具現化や事象への介入をも可能にし、世界の様相は一変した。



いつしか、ダークエネルギーは「マナ」と呼ばれ、そして、「マナ」を利用した『神代戦争』と呼ばれる争いが勃発することとなってしまった。



『神代戦争』を通してマナは更に拡大し、高濃度・高密度のマナは、特殊な『マナ障害』の毒性を発揮し、全ての者に被害を与えることとなった。



まず、『マナ障害』は、あらゆる器物、電子機器に被害を与えた。


マナは、通常の物質のあらゆる分子結合を壊してしまうため、電気回路の電流が流れにくくなり、被覆線のゴムやプラスチックなどの被覆や、電子回路の絶縁体などの分子構造が壊れて、もろくなったり、絶縁の役を果たさなくさせた。


あらゆる電子回路に使われる半導体は劣化し、コンデンサーも蓄電しなくなり、通常、寿命10~20年の電子回路であっても、すぐに壊れ、使用不可能になった。


機械装置でも金属部は比較的劣化しにくいが、可動部分の潤滑油(プラスチックなどと同じ炭化水素、生物に同じ)は、やはりマナで分子が破壊されて劣化し、蒸発や焼け付きなどを起こした。



・・・無論、『マナ障害』は、あらゆる生物にも毒であった。


物理的過程として、マナと人体の相互作用により、生体を構成する物質の分子(原子)が電離・励起(霊起)を起こしてイオン化した。


続いて、科学的過程として、発生したイオンは細胞中の水と反応して、科学的に反応性の高いラジカルや過酸化水素、イオン対などに成長した。


最終的に、発生したイオンは生体細胞のデオキシリボ核酸(DNA)の化学結合を切断し、細胞膜や細胞質内のリボソームを変化させ、生物に損傷を与えた。


特に、細胞分裂の周期が短い細胞(骨髄にある造血細胞など)ほどマナの影響を受けやすく、悪心、嘔吐、全身倦怠、二日酔いに似た症状を始め、白血球と血小板の供給が途絶え、出血増加、免疫の低下、重症の場合は30~60日で死亡することとなった。



ただ、逆に骨・筋肉・神経細胞はマナによる影響を受けにくく、故に反発作用としてマナによる過剰強化、肉体の強化を受けることになったが、生体のマナ障害に影響するのが、「松果体(しょうかたい)」であった。



「松果体」は、脳に存在する赤灰色でグリーンピース(8 mm)ほどの小さな内分泌器で、視床体が結合する溝に、はさみ込まれており、概日リズムを調節するホルモン、メラトニンを分泌する器官である。


松果体は、子供では大きいのに対して、思春期になると縮小し、16歳を過ぎた頃から、松果体にはカルシウムやマグネシウムが盛んに沈着するようになり、やがて石灰化していく・・・・


また、内部の毛細血管周囲には、抗原を提供する食細胞があり、これが過剰なマナを防御し、神経ペプチドを含む神経線維とニューロン状細胞は、上頚神経節から交感神経支配、蝶口蓋動脈と耳神経節からの副交感神経支配、三叉神経節のニューロンによる支配、さらに、いくつかの神経線維が松果体の軸を貫いている(中央の神経支配)があり、各神経の支配により「傍分泌」を起こし、マナの感知、制御を行っているのであった。



・・・傍分泌(ぼうぶんぴつ)とは、Paracrine signaling、パラクリンシグナリング、パラ分泌とも言う。


細胞間におけるシグナル伝達のひとつで、血液中を通らず組織液などを介してその細胞の周辺で局所的な作用を発揮する。


「パラ」とは「近く」を意味しており、典型的なホルモンは特定の器官で産出された後、血流に乗り遠隔の標的器官で作用を発現するが、傍分泌ではシグナル分子が細胞外液を介して分泌する細胞の近くだけに拡散し、周辺の細胞に働きかける。


脊索から分泌されるシグナル分子が神経管の腹側で底板を分化させ、この底板からも別のシグナル因子が分泌され、一方、背側では外胚葉が更に別のシグナル因子を分泌し、近くの神経管を蓋板に誘導し、またここからもシグナル因子が分泌されるようになる。


このような腹側からのシグナル因子と、背側からのシグナル因子が神経管において濃度勾配をつくり位置情報となり、この情報を元として最終的には腹側に運動ニューロン、背側に感覚ニューロンができ、神経が強化される。



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・・・単純に言うならば、「松果体(しょうかたい)」の働きが活発な若年者は、マナ障害の影響が少なく、成長につれ、大人になるにつれ、「松果体(しょうかたい)」が石灰化し、石灰化するとマナ障害で、例外なく「死ぬ」ことになるのであった・・・



マナ障害で大部分の大人は死亡し、電子機器も使えない。生き残ったのは、子供たちばかりだった。



その後、生き残った「マンハッタン計画」の一部の研究者グループは、脳の容積が多かった蛸・烏賊などの「頭足類(とうそくるい)」を実験動物として、マナを遮断する金属の装置と施設(都市)を最後の砦としていたが、最終的に海に沈むことになった。



こうして、地上では、ほぼ全ての人類がマナ障害で死亡し、それは守護者たる神などの存在も消滅させることとなった。





・・・・こうして、地球上から全ての人類は消えた・・・・・


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