「FOOOOOOOOOOO!!!! 可愛いよともくーん!!! 目線こっちちょうだいFOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」
「まーちゃん……」
どうしてこんなことに……。
僕は今、何故か
――時は少し遡る。
「だ、男女逆転劇ッ!?」
「フッ、そうだ。面白いと思わないか諸君」
変公が文化祭のクラスの出し物として提案してきたのは、あろうことか男女逆転劇であった。
全然面白くねーよッ!!!
普通の劇だって恥ずかしいってのに、いわんや男女逆転をやだッ!
「それイイですね峰岸先生ッ!!」
「まーちゃん!?」
いつもは変公に対して昭和の姑みたいな態度しかとらないまーちゃんが、珍しく意気投合している。
な……何故!?
「是非ともくんを主役にして、お姫様の格好をさせましょうッ! 絶対可愛いですよッ!!」
「まーちゃんッ!?!?」
鬼か君はッ!!!?
自分の彼氏を公衆の面前で辱める彼女がいるかいッ!?
……いや、ここにいた。
そういえばまーちゃんは生粋のドSなんだった……。
……ニャッポリート。
「あ、あのコーチ……、では、勇斗くんにもお姫様になってもらって、浅井君と百合百合しい感じになってもらうというのはいかがでしょうか?」
「篠崎さん!?!?」
虫も殺せないような顔して、超弩級の爆弾ブッ込んでくるね君はッ!?!?
てか、最近君、ぶるうちいず感を隠さなくなってきたよねッ!?
もう好きに生きることにしちゃったのかな!?(悲報)
「ああ、その百合百合しい感じってのはよくわかんねーけど、俺は別に構わないぜ美穂」
「勇斗ッ!!!」
僕は構うよッ!!!!
いつもこうだよッ!!!!
僕に味方はいないのかよッ!!!!!(いません)
「フッ、ではその案も採用だッ!」
「ジーザス!!」
一か八か転生ガチャに賭けたい!!
「あ、じゃあ脚本は私が書きましょうか?」
「古賀さん!?!?!?」
真打登場ッ!!!!
君の書いた小説いくつか見せてもらったけど、スパイの拷問に使えるレベルだったよッ!!!!
頼むからそれだけは勘弁してくれッ!!!!
勘弁してくれえええええ!!!!!!
「フッ――――採用ッ!! 大いに励むがいい!」
「はい! 頑張ります!」
「ああああああああああああああああ」
真面目に転生ガチャ前向きに考えようかな……。
――こうして現在、劇のリハーサルとして、僕は流れるようなウェーブのかかった金髪のカツラを被り、ピンクを基調としたフリッフリのドレスに身を包んでいるのである……。
げっそり―と……。
もう帰りたい……。
「FOOOOOOOOOOO!!!! 可愛いよ可愛いよともくーん!!! いや、ともちゃーん!!!! 目線ちょうだいちょうだいFOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」
「まーちゃん……」
僕の彼女がやたら目線を要求してくる……。
愛用の一眼レフの高画質カメラのシャッターを、壊れるんじゃないかってくらい連射してるし……。
「ついでにソフトクリームを、ちょっとやらしい感じで舐めてみよーか」
「何故!?!?」
前から思ってたけど、まーちゃんって中身はオッサンが入ってるでしょ!?!?
「うーん、やっぱこういう格好は動きづらいな」
「っ! 勇斗……」
着替えが済んだ勇斗が教室に入ってきた。
勇斗はサラサラの黒髪ロングのカツラを被っており、燃えるような赤を基調としたドレスを着ていた。
おおう……。
正直勇斗は、背も高いしガタイも良過ぎるので、お世辞にも女装が似合っているとは言い難いな。
……まあ、どうやら女装が似合ってしまっているらしい僕からしたら、むしろ羨ましいくらいなのだが。
「嗚呼ー!! ハラショー!!! ハラショってるよ勇斗くんッ!!! その、無理して女装してる感じが、逆にエクフラムーブをサディスティックデザイアしてるよッ!!!」
「おっ、そうか美穂」
ぶるうちいず先生ッ!!!
いい加減ニュアンスで感想を述べるのはやめていただけませんかね!?
何言ってるか一般人には一割も理解出来ないんですけどッ!?
「あのあのあの勇斗くん! お願いがあるんだけど――浅井君と肩の手前くらいで両手を恋人繋ぎしながら、おでこ同士をくっつけてもらえないかな!?」
「篠崎さんッ!!!!」
アクセルベタ踏みだね今日の君はッ!!
凄く生き生きとしてるよ!!
「ああ、いいぜ」
「ですよねッ!」
勇斗はぶるうちいず先生のマリオネットだもんねッ!!
ヒムロックとHOTEIが、一夜限りの復活だもんねッ!!!(?)
「じゃ、ちょっといいか? 智哉」
「あ……うん」
勇斗は例によって微塵も躊躇せず、僕と恋人繋ぎしながらおでこをくっつけてきた。
ふわわわわわ。
何かこれメッチャドキドキする!
お互い女装してることも相まって、背徳感が半端ないッ!
「エクストリームいつもありがとうございますヘヴンフラーーーッシュ!!!!!!」
「「……」」
最早エクフラ中もお礼を言うようになってしまった……(悲報)。
「フッ、その辺だ足立と篠崎。お前達も衣装を着る時間だぞ」
「あ、はーい」
「は、はい!」
まーちゃんと篠崎さんが教室から出ていった。
そうなのだ。
大方の予想通りだとは思うが、男装役はこの二人なのである。
「……ど、どうかな?」
「「――おお」」
教室に入ってきた篠崎さんは、変公みたいに髪型を侍ポニテにしており、青を基調にした王子様みたいな煌びやかな衣装に身を包んでいた。
ふおおお。
これは相当な美少年だな。
素材が美少女だから、キラキラ感が天元突破している。
可愛い系の男子が好きな人から、絶大な支持を受けそうだ。
やっぱ可愛い子は、男装も似合うんだな。
「……ああ、凄く似合ってるぜ」
「――! あ、ありがと……」
互いに顔を真っ赤にしながら、もじもじしているいじらしいバカップルの姿が、そこにはあった。
はいもちろん微居君のほうからゴトッて聞こえましたよ。
どうどうどう。
微居君どうどうどう。
頼むから落ち着いてねー。
せめて文化祭が終わるまでは待ってねー(微居君の扱いに慣れてきた)。
「ハッハー! 待たせたね諸君ッ!!」
「「「――!」」」
その時、バーンという書き文字をバックに背負いながら、男装したまーちゃんが教室に入ってきた。
ひゅうっ!
これはまたイッケメーンに仕上がってるな!
まーちゃんは髪をワイルドなオールバックにしており、全身をゴールドを基調にした王子様の衣装で着飾っていた。
これはモテる(確信)。
完全にヅカの男役の人だわ。
バレンタインデーには殺到するわ、チョコが(倒置法)。
「フフフッ、これはこれは、素敵なプリンセスだ」
「えっ?」
プリンスまーちゃんは、つかつかと僕に歩み寄り、そのままガバッと僕のことをお姫様抱っこしたのであった。
ニャッポリート!?
前もまーちゃんにはお姫様抱っこされたことあったけど、今は文字通りのお姫様抱っこだッ!
「もう離しませんよプリンセス。あなたはたった今から、このボクのものです」
「は、はあ……」
超俺様系だこのプリンス!!
でも素敵ッ!!(赤面)
こんなの誰でも惚れちゃうよッ!
「……あ、あの、姫」
「え?」
っ!?
今度はプリンス篠崎が、プリンセス勇斗の前に跪いて、右手を差し出した。
「よ、よろしければ、ワタシと踊っていただけませんでしょうか」
「――!」
プリンス篠崎は、たどたどしくも、意中の人であるプリンセス勇斗をダンスに誘ったのであった。
何かそこかしこで寸劇が始まってる!?
「――ええ、よろこんで」
「っ!」
そしてそんなプリンス篠崎の手を、プリンセス勇斗は優雅な手つきで取ったのである。
オイオイ勇斗も満更でもない感じだな!?
こっちの二人の場合は、プリンスの方がちっちゃい身長差カップルって感じで、好きな人には堪らないシチュエーションだな。
「フッ、よし、四人共役作りは万全のようだな。――ではこれよりリハーサルを始める!」
「「「ハイ!」」」
「は、はい」
はあああああああ(クソデカ溜め息)。
これ、絶対ろくな結果にならないよね?