「わああ、すっごい高いねともくん!」
「うん、そうだね」
あれから僕達は、ジェットコースター、フリーフォール、コーヒーカップ、メリーゴーランド、田植え(田植え!?)といった種々のアトラクションを堪能し、もう日も傾いてきたので、本日の締めとして、ベタベタのベタだが観覧車に乗っているのだった。
「美穂達もイイ雰囲気になってるかなぁ」
向かいに座っているまーちゃんは、一つ先のゴンドラに乗っている勇斗達のほうに目線を向けた。
まあ、ここからじゃ角度的に勇斗達の姿は見えないんだけどね。
しかし、こんな時でも友達の心配ばかりしてるなんて、ホントまーちゃんは良い子だな。
ま、だからこそ好きになったんだけど(い つ も の)。
「……ねえ、ともくん」
「え?」
まーちゃんが声のトーンを落とし、上目遣いで僕を見てきた。
な、何だ……!?
こういう時のまーちゃんの言動は、大方ろくなことがない!
僕は思わず身構えた。
「……そっちの席、行ってもいい?」
「――!」
ホラやっぱり!!
そんなこったろうと思ったよ!!
そんなに思春期の
ええ楽しいんでしょうねそうなんでしょうね!
まったく本当にしょうがない子ですねえ!
……バッチコイ!(支離滅裂)
「い、いいよ」
僕は右端に寄って、まーちゃんが座るスペースを作った。
――が、
「あ、違う、そうじゃないの」
「え?」
まーちゃん?
「私が座りたいのはそこじゃないの」
「は?」
じゃあ、どこに?
「いいからともくんは真ん中に座って足を開いて」
「え、あ、うん」
僕は唯々諾々とまーちゃんの言われた通りにした。
「うんうん、そうそう、イイ感じ。――じゃ、お邪魔しまーす」
「ぬえっ!?」
あろうことかまーちゃんは、背を向けて僕の股の間に座ってきたのだった。
まるでお父さんが娘を抱っこしてるみたいな構図になってしまった。
ふおおおおおおおおおおお!?!?!?
シャ、シャンプーの良い匂いがするうううううううう!!!!(フェティッシュ)
「あははー、思った通り居心地イイねここ。落ち着くー」
まーちゃんが僕に体重を預けてくる。
「そ、そう」
僕は全然落ち着かないけどね!!
僕の心臓がテンポ200で16ビートを刻んでるけどねッ!!
くそう。
僕はこんなにドキドキしてるってのにまーちゃんは余裕ぶって……。
何だかちょっとだけ悔しいな。
……ん?
その時、まーちゃんの後頭部を眺めていた僕は、あることに気付いた。
まーちゃんの栗色のショートカットから覗く形の良い耳が、赤くなっていることに――。
なっ!?
ま、まさか!?
「まーちゃん!?」
「ふえっ!?」
僕は右側からまーちゃんの顔を覗き込んだ。
案の定まーちゃんは、耳の赤さが可愛く思えるくらい、顔を真っ赤にさせていた。
「……まーちゃん」
「な、ななななな何かな!? わ、私は全然、何ともないけどッ!?」
「……」
何ですぐそうやって強がるの?
……まったくこの子は。
「まーちゃん」
「え? 何――んふっ」
僕はまーちゃんの口を塞ぐように、少しだけ強引なキスをした。
僕もやっと多少はキスに慣れてきたのかもしれない。
「ん……、ん」
「ふ……、んふぅ」
まーちゃんは僕のそんなキスを、一切抵抗することなく受け入れている。
二人のキスは、次第に熱を帯びたものになってきた。
そして――
「あのー、お客様」
「「っ!!!」」
いつの間にか地上に着いてしまっていたらしい。
あ、あっちゃああああああああ!!!!!!
「す、すいません! すぐ出ます!!」
「ごめんなさーい!!」
僕らは光の速さで観覧車から飛び出した。
観覧車の係員さんが、ゾンビフィッシュアイで僕らを見ていたのは言うまでもない。
「……いや、お前ら、今のはマズいだろ」
「ね」
「「――!」」
そこには勇斗と篠崎さんが例の呆れ顔で待っていた。
どうやら僕らの醜態は、二人にも見られてしまっていたらしい。
――だが僕は気付いた。
二人がいつの間にか恋人繋ぎをしていることにッ!!
大方二人も観覧車の中で、僕らと似たり寄ったりなことをしていたに違いない。
ゆうべはおたのしみでしたね!
……さて、名残惜しいが、そろそろ帰るか。