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第35話 グリーンさんと決着ついたんだけど、どうすればいいと思う?

「というわけで、勝ちました」

「ん、負けました」


 俺とグリーンさんは、横に並んでみんなの前に立っていた。

 グリーンさんはいまだにプスプスとスーツが焦げた状態になっている。

 まあ、この状態でもあとで再度変身をやり直せば元どおりになるから問題ない。


「レッド、強くなった」

「いやあ、ありがとうございます。最近一気に力が付いた実感がありますよ」

「ん。それはそれとして、あれだけ高火力の炎だったのに、そこまで致命的なダメージじゃないのが凄い。あれで手加減してた?」

「あ、分かります? 最近火力調整方法新しく習得出来て、試してみたんですよー」


 そう、以前ティアーの配信で言っていた【ライト・ガジェット】は“痛覚”と“精神”にダメージがあると聞いて以来、いろいろ試していた。

 あれを意識して、“レッド・フレイム”系列の火力調整を意識して、物理ダメージ量を少なくして、精神ダメージを比較的多めにする、と言った事を出来るのようになったのだ。

 おかげで、さっきの模擬戦でも遠慮なくグリーンさんに最大火力を叩き込めた。なんたって物理ダメージが最小限バージョンだったからなー。


 いやー、新しい発見で特訓するのすごく楽しくて、夢中になってたな! 

 代わりに俺の片手が慣れるまで悲惨なことになったけど! ←(自分の片手にフレイム当ててダメージ調整してた)


 と、それはそれとして……


「とまあ、こんな感じだな。みんな、俺とグリーンさんの試合参考になったか?」

『はい!』


『全然ですっ!!』


「でしょうね」

「だろうねッス」

「えーっと、“レッド・ギガフレイム”を防いだ時のグリーン連射量と技の性質を考えると、私の“ピンク・アロー”で再現するには秒速3.2本必要だから……根本的にそれ専用の必殺技を作り上げた方が早そう、となると……」


 だよなー……正直途中からこれ参考になる? とは薄々思ってはいた……一応手加減はしてたんだよ? 配信用に。

 けど無理じゃん、止められないじゃん。グリーンさん相手で、あそこまでヒートアップしていると。

 油断したら逆に一気に狩られ取られるし、あのまま突っ走るしかなかったんだよ……


 まあ、最初の俺とグリーンさんどっちが上? という質問の答えに対しては、これで答えられたということで。最低限の目標は果たしているな、うん。


「まあ、上位ヒーローになったら、こんな戦いをすることがあるよ。って、覚えててくれればいいか……」

「ん。今は出来なくても、仕方ない」


 うんうん、とグリーンさんが頷いて同意してくれている。

 が、言っておきますけど、調子に乗ったの俺だけでなくグリーンさんもですからね? 


 まあ、午前中の訓練の後で、みんなにはいい休憩時間にはなったかな。

 はいはい、と俺はパンパンと手を叩いて注目を集める。


「とりあえず、俺とグリーンさんの模擬戦の見学はこれで終了。後はみんな、各自午前中の続きをやろう。みんな課題は見つかっただろ?」

「はい先生!! 私、ピンクさんの特訓の攻略方法が分かりません! どうしたらいいでしょうか!」

「私もー! シブオジ様に1発も攻撃通らないんですけど、どうすればいいですかっ?」


 そう切り替えるように言うと、突如アローとブーメランがそう元気よく手をあげて質問してきた。

 半ばやけっぱなちになってるようなテンションが気になるけど……


「あれ? そんなの二人が言って──……? ……!? グリーンさん、ピンク。“二人とも、ちゃんとアドバイスしました?”」


 俺はふと気づき、二人に確認の意思を持って視線を向けた。

 すると、二人の答えは……


「自分で攻略法考えるのも大事だと思って!!」

「ん、最初から色々教えるのは良くない」


 と、案の定だった。

 ……いや、ちょっと……


「まずは自分で、可能な限り考える! これが大事なことだと思って、まだ教えてないよー!」

「ん。まずは今日一日じっくり戦い続けて、分からなければ後日どこが足りないか答え合わせする予定だった」


 なるほどなー、確かにそう言う教え方もありですよね。

 でも……


「一応聞きますけど、“この後輩の特訓、今日しかない”と言う前提は分かってます? 二人とも」

「「…………ッ?!!」」

「忘れてたと言う顔ですね、アンタラ」


 顔ヘルメットで見えないけど。雰囲気でなんとなく察していた。

 おいいいいいいッ!!? うっかりしてんじゃないですかー!? 


 そういえば二人がアドバイスしている場面なかったなとは思ってたけど、タイミングが悪くて既に教えたか、後から教えてたかって思っちゃったじゃないですか!? 


「グリーンさん、しっかりしてくださいよ……ピンクも、年齢的にしょうがないかもしれないけど、教える立場になった以上は気をつけるんだよ? どうしても責任は発生しちゃうんだから」

「ん、ごめん……」

「はーい……」


 ったく。まあいい、これでようやく……


「じゃあ、答えは今日の終わり際に教えるね」

「私もー。それまではさっきまでと同じ通りでー……」

「“今教えてください二人とも”」


 俺はピシャリと、そう言った。

 えー、と二人は声を上げている。いや、えー、でなくて。


「なんでそんなに教えたがらないんですか、もー」


「“だって、その育て方で成功例レッドが目の前にいるし”」

「“私もグリーンから、直接そう教わったしー”」


「すみません。俺が言うのもなんですけど、俺とピンクを育成サンプルにするのは不適切だと思います」


 俺はグリーンさんとピンクに、その事実を言い放った。

 いや、マジで俺が言うのもなんだけど、俺が育ったって、俺が優秀だったのも結構大きかったと思うんだよ? 

 俺、分からないことがあったら直ぐグリーンさんに直接質問して、何か意図があったならそれを汲んだ上で特訓受けていたので、モチベーション管理とかは割と自分で出来てましたからね? 


 ピンクも、さっきの模擬戦を見てすかさず自分の糧にしようと試行錯誤してたの見てたからな? 

 秀才という意味だとピンクもかなり並外れているからな? 


 でもそれ、同じ事を今日初対面の後輩にやらせるのはちょっと不適切かなーって……

 ……今思うと、昨日の夜俺、何も考えずに“レッド・エッジ”連発すればいいや、と最初思ってたの、グリーンさんの影響だよなあ、って……

 危うくおんなじ事後輩にやるところだった、あぶねーあぶねー……


「全く、今回は後輩向けの教えなので、答えは早めに出してあげてください。方向性を先に見せてあげないと、何処に向かって行けばいいのか分からないでしょ」

「ん、でも……」

「でも?」


「──実践で、“常に答えが分かるとは限らない”。そもそも、“答えのある状況なのかも分からない”。“最初から詰みの状況”が起こり得ることもある」


「────」


 ……それ、は……

 ……その言葉に、俺は言葉に詰まった。

 後ろで聞いている後輩達も、言葉を失ったようにグリーンさんを見つめていた。


「そんな状況、もしくはそれに錯覚するような状況に遭遇した時、想定出来ているか、自力だけで何処まで対処出来るか。練習しないと不味いと思う。──“じゃないと、全てを失うことだってある”」


 それを考えると、ブーメランを手に持ったまま諦めずに特攻仕掛けて来たことは、結構良かったと思う。

 グリーンはそう付け加えて、うんうんと頷いていた。


「……あー……」


 ──全て(チームメイト)を失った事のある男の言葉。それを考えすぎ、と否定出来るような存在はいなかった。

 俺達は、全員言葉を失っていた。


 ……俺は、頭をヘルメット越しにガシガシと掻いて、天を仰いでしまう。

 ……まあ、そうだよな。確かに、この人の考えも否定は出来ないよな。


 グリーンさんの言ってることも、間違いじゃない。

 今は連合本部が、対応ヴィラン組織の相手を事前に詳細に調べて担当を配分してくれるから、実際の所グリーンさんの考慮しているような事は起きづらいが……その例外にぶち当たった男の実感だ。

 連合本部の配分も、完璧じゃない。把握していない事態が起きる可能性もある。それは考慮しなければならないだろう。


「──気持ちはわかりますけど、今回は自重して下さい。遠くを見すぎていて、近くの道に迷っている子がいるのが現状なんですから」

「……ん、分かった。じゃあ、何から言おう……」


 んー、とグリーンさんが悩み始めた。

 途中で答えを言うことになってしまったため、何から答えを言うか迷っているようだ。


「……ちなみに、グリーンさんとピンクが後輩達と逆の立場になってたら、それぞれの課題どのように対処してました?」


「私? 私は、要は撃ち落とされない、破壊されない貫通力が必要だから、あのガジェットなら“弓矢で5本くらい纏めて撃って一撃のパワーと貫通力をアップした新必殺技を開発する”かなー?」

「ん、そもそもブーメランだと、普通に投げると軌道が分かりやすすぎる。【ライト・ガジェット】である点を活かして、“軌道に変化を付けて簡単に見切られないようにする”必要があると思う」


「それを言えばいいんですよ、おい」


 後輩達に必要だった模範解答がスラスラと出てきてしまい、俺は思わずツッコンでしまっていた。

 いや、まじで。それを、途中で、言えや。


「……と、言うわけらしいぞ。分かったか、後輩ズ」

「え!? 私のガジェット、そんな事が!? と言うかそんな解決方法が!?」

「シブオジ、そんなに深い事を考えていたなんて……! すみません、全然気づきませんでした!」

「謝らなくていいぞ、説明しなかったこいつらが悪いんだから」


 まあ確かに、疑問に思ったことは早めに自分から質問するようにしたほうがいい、と言うことは後輩達にも言えるか。

 グリーンもピンクも質問されたなら、直ぐに答えは出さなくても、答えを出さない理由くらいは説明してくれていただろうし。

 俺は後輩達に、気になることがあったら直ぐ質問するように、と言いつけて、改めて言い放つ。


「それじゃあ、改めて各自課題も整理出来たことで。午後の特訓も、頑張っていくぞー!」

『おー!!』


 そうして、改めて各自のアドバイスを聞いた後輩達はそれぞれ午後の特訓に集中し……


「──というわけで、今日の特訓はここまで。みんな、頑張ったな。お疲れ様」

『ありがとうございましたー!!』


 俺達は、無事に依頼の特訓を終わらすことができたのだった。


 ☆★☆


「レッド先輩! 皆さんも! 今日は本当に、ありがとうございました!!」

「ああ、どうだった? 俺たちの指導を受けてみた感想は」


 俺達は、本部の前で後輩達を見送ろうとしていた。

 最後に今日の感想を聞いてみると……


「俺は、すっごく為になりました! 今後の特訓に活かせそうな考え方を下さって、ありがとうございます!!」

「うう、私は結局、矢が超えられませんでした……パワーアップした狙撃が必要ということはわかったんですけど、私じゃ二本同時が今の所限度で、結局撃ち落とされました……」

「なんか、根本的に新技を用意しないとダメなんだなって思いました……」

「自分の未熟さを、悪い意味で痛感した感じだ……」

「すっごい楽しかったです! ブーメランの軌道が面白いくらいにパワーアップしました! 結局逆利用されましたけど!」


 と、思い思いに自分の身になったようだ。

 それにしても、結局アドバイスしてもグリーンさんとピンク容赦しなかったんだなおい。

 成功体験積ませてやれよ……まあ、他のみんなも同じ感じらしいけどさー。


「みんな、気をつけて帰ってねー!」

「今日教えた事、ちゃんと意識するッスよー!」

「忘れたら、馬鹿じゃないの? って、煽りに行くわよー」

「ん。みんな、頑張って」


「はい! お疲れ様でした!!」


 そうして、【リトル・ブレイブ戦隊】は元気よく帰っていった。

 それを見送って、俺達も一人一人と本部の中へと帰っていく。




「──グリーンさん」


「……ん?」



 その途中で、俺はグリーンさんの背中に声を掛ける。




 「──この後、“手合わせ”お願い出来ますか?」


 「──いいよ」



 ……そう互いに確認して、本部へと戻っていくのだった……



 ☆★☆


「ふん、ふふーん♪」

「リーダー、ご機嫌だねー」

「そりゃそうだろ! 憧れの人に、あそこまで丁寧に教えてもらえたんだから!」


 俺は帰り道、アローのその言葉に元気よく返事をした。

【ジャスティス戦隊】のレッドさん、実際に教えを受けて本当に為になった。

 最終的に、今日立てた目標の威力アップは十分達成出来て、俺にとっては遥かに充実した1日となっただろう。

 今日の教えだけで、自分の実力、考え方が数段アップしたという実感があった。


「にしても、レッドとグリーンさんの戦いは凄かったですね」

「……ああ、俺達と別次元の戦いにいたということがよく分かった」

「凄かったよねー。でも、凄い迫力だったよね! ああいうのが、上位人気の秘訣なのかなー?」


 ブーメランの言葉に、俺も同意する。

 あそこまでど迫力の戦いなら、人気に直結するのも頷ける。

 スーツはダサいけど……それを差し引いても、上位にチームが入っているのも納得出来る話だ。


「リーダー、そう言えば色々ノートにメモ取ってたよね?」

「ああ、今日の教えを甘さず忘れないようにと思ってな!」


 そう、俺は今日レッドさんから教えられたことを、合間合間にノートにメモを取っていた。

 あの人の考え方は今日だけでなく、今後も別の特訓で活かせる為覚えていて損はなかったからだ。


「ちょっと私もそのノート見ていい? リーダーがどんな事教えられたか知りたくて」

「いいよ。ちょっと待ってて……アレ?」


 ゴソゴソ、ゴソゴソと、バックの中を漁ってみる。……見つからない。

 バックをひっくり返して、中身を全部取り出してみる。……見つからない。


「……あれ!? ノートは!? 俺のノート!?」

「リーダー、まさか忘れたの?」

「いや、だって今日ちゃんとメモって……!」

「本部に最後、休憩で寄った時ノート広げてましたけど、あそこじゃないですか?」

「あ、あああーッ!?」


 ボマーの言葉に、ようやく思い出す! 

 あった、確かに置いた! 俺休憩室のテーブルの上に置いた!! 


「全く、忘れないようにと言ってたが、肝心のノート自体を忘れるとは笑えるな」

「リーダーうっかりねー」


 そんな俺の様子を見て、他のメンバーが笑ってくる。

 くっそう、言い返せねえ! 


「お、俺取りに戻ってくる!!」

「あ、私も行くよリーダー。一緒に探すの手伝うよ」

「僕も行きます。休憩室に確実にあるとは限らないでしょうし」

「ふん、まあ俺もこのまま帰るのはな」

「もう一回、【ジャスティス戦隊】の本部の中を見てみたいしねー」


「み、みんな……」


 俺はみんなのその気遣いに、ジーンと感動してしまっていた。

 俺はお礼を言って、みんなで【ジャスティス戦隊】の本部の中に戻って行った……


 ☆★☆


「えーっと、リーダー。休憩室何処だっけ?」

「確か、あっちに……いや、こっち?」

「事情を話して、誰かに案内してもらったほうが早いのでは……」


「……あら? あなた達帰ったんじゃなかった?」

「あ、ブルーさ……あっ!?」


 俺達が館内で右往左往している時、ブルーさんに出会った。

 しかし、その姿はヘルメットを被っていない、つまり認識阻害の無い状態だった。


「おっと、やばいやばい。ごめんね、今の見なかったことに。ね?」


 そう言って、ブルーさんはガジェットを操作して、ヘルメットを再度展開して被っていた。


「ところで……こーら、何許可なく入って来てるのかしらー? さっきみたいにアポイント無しだと、こうやって素顔見られる可能性もあるんだから、ダメでしょー?」

「す、すみません」


 ヒーロー戦隊は、身内戦隊でない限り、基本的にプライバシーの公開はしてはならない。

 俺達は、わざとではないにしろそのルールを破ってしまった事になる。

 上半身をこちらに向けたブルーさんに、大人の色気を感じながら俺達は謝った。

 ……この人、本当にシールドを煽った人と同一人物なのだろうか? あまりにも雰囲気が違いすぎて、シールドもポカーンとしていた。


 ……いや、それとも今は“ネコを被ってるのか?” あんな大人の悪ガキのような対応をしておいて? 今更? 


「何か思ってるのかしら?」

「い、いいえ!? 全然!?」


 俺達はジトッとしたブルーさんの目線をヘルメット越しに観て、慌てて否定していた。


「そう。ところで、もしかしてこれをお探しかしら?」

「へ? あっ!? 俺のノート!!」


 そう思っていると、ブルーさんが持ち上げたのは、俺が忘れていったノートだった。

 それをはい、と渡される。


「後で連合経由で、忘れ物として届けてもらおうかと思ってたけど……丁度よかったわね」

「は、はい。ありがとうございます」

「……にしても、このタイミングでのここへの戻り、ねえ……」

「……ブルーさん?」


 俺たちを見つめて、ふーん……と、ブルーさんが呟いていた。

 しばらく考え込んでいたら、よし、と言い出して……


「これも何かの縁よ。あなた達、ちょっと見ていかない? ほら、そこのテーブルにガジェットとか荷物置いて」

「へ? な、何をですか?」


 ブルーさんがテーブルの一つを指し示して、荷物を置くように進めて来た。

 それに疑問に思いながらも、言われた通り荷物を全て置いていくと、ブルーさんが言い出したのは……


「えっとね。“レッドとグリーンの試合”」


「……へ?」


 その言葉に、俺たちは呆けた声を出した。だって……


「ちょっと待って? 私たち、一度お昼に見たわよね?」

「ああ、そうでしたね」

「まさか、もう一度やってるのか? お昼のあれをやっておいて?」

「へー? 体力凄いねー」

「はい。俺たちは一度見ていますけど、もう一回見る必要があるんですか?」


 いやまあ、確かにもう一回見れるなら見たいですけど。

 何度も見て、自分なりに解析はしてみたいとは思いますけれど。


 けれど、今日の模擬戦の試合も記録ドローンで記録され、後でヒーロー連合のネットで配信される。

 それを見れば、何度も同じシーンを見られるし、わざわざ新しいレッドさんとグリーンさんの試合を見るのも……いや、それはそれで興味はありますけど。


 そう思っていると、ブルーさんは……


「ああ、お昼のあれ? “【ジャスティス戦隊】レッド”と、“【ジャスティス戦隊】グリーン”の試合のこと?」


「……はい?」


 そんなことを、言い出した。

 え、と……? 【ジャスティス戦隊】レッド? わざわざ【ジャスティス戦隊】を強調している? 


「あれは、“ヒーローとしての映像配信向けの試合”よ、試合」

「……え?」


 その言葉に、一瞬意味が分からなくて。



「──今からやるのは、レッド対グリーン。“配信向けじゃない、手加減ゼロの本気の試合”よ」


『────は?』


 ……その言葉に、俺たちは全員呆けてしまっていた。


「ほら、そこから訓練場見下ろせるわよ。もうすぐ始まるわよ」


『──ッ!?』


 その言葉に、俺たちはバッと窓際のガラスに張り付いた。

 ブルーさんのいう通り見下ろすと、そこには……


『────』


『────』


 レッドさんと、グリーンさんが、向かい合っていた。

 お昼の時と同様。


 しかし────重々しい雰囲気だった。


「……な、ん……?」

「見るんなら、見逃さないようにねー」


「──“多分、あっという間に決着が付くから”」


『────ッ』

『────ッ』


 そのブルーさんの言葉を皮切りに、訓練場の二人は動き出した──



<オマケ>


「レッドさん。あなたも凄かったですけど、グリーンさんも凄かったですね……」

「だろ? 俺たちの最年長だしなー」


 午後の訓練の途中、俺はレッドさんとそんな会話をしていた。


「勝ったのはレッドさんでしたけど、グリーンさんに弱点とか無いのでしょうか?」

「ああ、分かりやすい弱点はあるぞ?」

「え!? そうなんですか!?」

「ああ、グリーンは一対一特化だから、対複数人だと対処しづらいんだよ。だから意外と、全方位で雑魚的で囲う戦法が聞くんだよなー」


 へー、と俺は感心していた。

 確かに、グリーンさんってスナイパーライフルを使っていたからか、複数人一気は対処し辛いだろうな、と言われてみれば確かにそう思った。


「そうなんですね、確かに範囲攻撃とかはあまり使ってなかった印象でしたけど……そういう意味では、レッドさんのほうが複数人に特化してるんでしょうか?」

「まあな。俺はどっちも得意だけど、グリーンはちょっとキツイらしい」

「なるほど、あの人も凄いようで、実際苦手なものはあるんですね……」


「大体“30人”くらい雑魚的に囲まれると、限界だって嘆いていたなー。それ以上はちょっと厳しいって」

「……うん。うん? ……あの、レッドさん? 5人戦隊が対処するヴィラン戦闘って、大体平均“30人位”の規模で行動してるのが基本のような気が……」

「そだな」

「……それで、グリーンさんの限界人数が、“30人”……?」

「うん」

「…………」


(5人戦隊の一人あたり雑魚的対処人数、平均5、6人)


 やっぱり、グリーンさんもとても凄いようです。




 ★佐藤聖夜さとうせいや


 23歳

 175cm

 黒髪

 中立・善

 男


 主人公

【ジャスティス戦隊】のレッド。


 グリーンに鍛えられた男。

 自分なりに、グリーンにどういう意図でこの特訓をしているのか、など一々聞きに行ったりしていたらしい。

 そのおかげか、現在でも自主練で、何の意図を持って訓練するかの意識を持つようにしているとか。


 映像配信向けの戦いかたとか、一応ヒーローとしての体裁は普段から意識しているらしい。


 ……同時に、いつでも投げ捨てるつもりのものでもある。



 ★天野涙あまのるい


 22歳

 168cm

 青髪

 混沌・善

 女


【ジャスティス戦隊】のブルー。

 兼、【カオス・ワールド】の幹部、“コバルト・ティアー”。


 たまたま戻って来た後輩達に、面白いものが見れると勧めていた。

 そしてさりげなく、後輩達の身からガジェットを離すことにも成功。

 夢中になってる今のうちに……



 ★大地鋼だいちはがね


 34歳

 184cm

 緑髪

 秩序・善

 男


【ジャスティス戦隊】のグリーン。


 人に物を教えるのは、実はちょっと苦手? 

 色々気付いてはいるが、それを簡単には人には教えないタイプ。


 ──何故なら、答えを知らない状況が起こり得る可能性があるから。


 そうじゃなければ、俺は10年前のあの日、どうすればよかったのだろうか? ……その答えを、教えてもらえるのか? 



 ★大地心だいちこころ


 10歳

 130cm

 ピンク髪

 秩序・善

 女


【ジャスティス戦隊】のピンク。


 一を聞いて、十を知るタイプ。

 伊達に最年少ヒーローをやっていない。

 レッドと同様、グリーンの教え方で問題なかったタイプ。

 秀才さで言えば、同年代の頃のレッド以上かもしれない。



 ★空雲雷子そらくもらいこ

 21歳

 167cm

 黄髪

 秩序・善


【ジャスティス戦隊】のイエロー。

 レッドの後輩。


 私も優秀な後輩ッスよ!! 



 ★リトル・ブレイブ戦隊


 教えられたことは、ヒーローとしてとても役に立つことだらけだった。


 ──じゃあ、ヒーローじゃない戦いとはなんだろう? 


 その答えを、直ぐに知ることになる。


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