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第34話 グリーンさんと模擬戦始めたんだけど、どうすればいいと思う?

「グリーンさん、準備はいいー?」

「ん、いつでもー」


 俺とグリーンさんは、訓練場の中心で互いに50m程距離を取って立っている。

 そこからさらに離れた位置に、他のメンバーや後輩達が見ている状態だ。


「上位ヒーローの戦いを、生で見られるなんて……!!」

「ねえ、どっちが勝つと思う?」

「やっぱり、リーダーのレッドさんでは?」

「えー、でもシブオジのグリーンさんもかなりの実力者だよー?」

「まあ、参考になるならどっちでもいいさ」


 俺たちの戦いを、思い思いの心情で待っている後輩達。


「グリーンさん、ちゃんと参考になるような戦い方をしてくださいねー」

「わかったー」


「二人とも、準備はいい? 合図は私が出すわよー」

「レッドさん、頑張ってっス!!」

「グリーン、ファイトー!!」


 ブルーが離れたところで片手を上げる。

 それを見て、俺とグリーンさんは互いに構えた。


 ……3、2、1。


「ようい……始め!!」



「“グリーン・スナイプ!!”」

「“レッド・エッジッ!!”」


 ガキィッ!! 


 開幕の合図と同時に、そんな金属音が鳴り響く。

 互いにまずは初手の必殺技からだった。

 グリーンさんが放った弾丸が俺の体の中心を狙っており、それを俺が切り落としたのが開始だ。


「今のは!?」

「すっごーい、どっちも見えなかった!?」

「これは……!」


 後輩達の驚いた声が響く中、俺はグリーンさんに向かってダッシュを始めた。

 遠距離だとこっちの不利だ、まずは距離を詰める! 


「“グリーン・スナイプ、3連打!!”」

「“レッド・エッジ、3連斬り!!”」


 必殺技の弾丸が、連続で飛んでくる。

 それに対して、俺も走りながら同様に必殺技で切り落としていく。

 足を止めて撃ってるグリーンさんに対して、どんどん距離を詰めていった。


「ん、やっぱり止まらない……なら!!」


 そう言って、グリーンさんは改めて構え直し……


「“グリーン・バースト!!”」


 ドゴンッ!! と、先ほどまでとは明らかに射撃音が違う狙撃が行われた。


「“レッド・エッ……”ッおわあ!?」


 切り落とそうとした瞬間に、爆発が発生する。

 先ほどまでの弾丸とは違い、叩き切った瞬間に爆発する弾丸だったようだ。

 その衝撃をモロに受けて、俺は後ろに吹っ飛んで後転する。

 すぐに姿勢を直して、立ち上がろうとすると……


「“グリーン・スナイプ!!”」

「っ、しまった!?」


 俺は手元に対して必殺技を叩き込まれ、【レッド・ガジェット】を取り落としてしまう。

 すぐに拾おうとするが……


「ん! 拾わせない!!」


 落ちた【レッド・ガジェット】に、正確にガキンガキンッと狙撃を繰り返される。

 おかげでどんどん、どんどん後方に持ってかれる!! 


「ん、これで丸腰」

「くッ……!!」


 そうして、俺はグリーンさんの前で何も武器がない状態に陥り、そんな俺に対してグリーンさんのスナイパーライフルの銃口が……


 ☆★☆


「レッドさんが!?」

「きゃー! やっぱシブオジ素敵だわー!!」


 レッドさんとグリーンさんの戦いを見て、お互い必殺技を当たり前のように連打しているのが見えてそれだけでレベルの違いを実感していた。

 互いに拮抗していたと思ったら、一瞬レッドさんが押されてそこからあれよあれよと状況がレッドさんに取って悪くなっていく! 


「これもう決まりましたかね? 武器がないとどうしようもないですよね?」

「丸腰で勝てるとは思えないな」


 ボマーとシールドがそんな感想を漏らしていた。

 俺も、ガジェットがなくなった以上レッドさんの負けは決まりかと思ってしまい……


「さあ、そうとは限らないんじゃないかしら?」

「え……?」


 すると、開始の合図を出していたブルーさんがこちらまで戻って来てそう言って来た。

 それはどういう……? 


「どういう事? ガジェット手元にないんじゃ、もう出せる手段無くない?」

「普通はそうね。武器がないんじゃ話にならないわね。……けどね、レッドは別」


 ブルーさんは、二人の戦いの方を見つめながらそう呟いた。


「ヒーローって、変身したら“肉体強化が増す”、これは知ってるわよね?」

「はい、研修の時に習いました」

「そう、じゃあこっちも知ってる? ガジェットが手元から離れていても、“変身がすぐさま解除されるわけじゃない”って。ある程度、まだガジェットと本人は繋がっている」

「へー……」


 そう、【ライト・ガジェット】を使って変身したら、生身でビルの2,3階くらいまでは飛び移れるくらい身体能力がアップする事は事前に習っている。

 けれど、変身の解除の条件に武器が手元から離れても大丈夫だと言うことまでは知らなかった……

 つまり、ブルーさんが言いたいのはレッドさんは無力になった訳じゃないという事か? 


「さらに言うとね、レッドのもう一つの必殺技って、“ガジェットが手元になくても大丈夫”なの。変身さえしていれば」

「……っ!?」

「つまり……」


 ☆★☆


「“レッド・フレイムッ!!”」


「ん!?」


 ゴウッ!! っと、俺の片手から炎を放出する。

 それがグリーンさんの所まで、しっかり届いている。

 グリーンさんは少し怯んで、さらに後ろの方にバックしていた。


 再度構え直そうとしているけど、そうはいかない!! 


「“レッド・ツインフレイムッ!!”」

「っ! その技は!!」

「そう、あなたに使うのは初めての技だ!! これを……こう!!」


 そうして、俺は二つの炎を携えた両手の平を、自分の“真後ろに向けた”


「ん!?」

「この技、反動が結構ありましてね!! こうすれば、補助になるんですよっと!!」


 ゴオオオッ!! っと、両手を背後に向けた状態で炎を放出する。

 すると、反作用で両手が押し返されそうになる。それを堪えて受け止めて、俺は再度走り出す!! 


「ターボ・ダッシュだ!!」

「んんん〜〜ッ!! そんなのあり!?」


 そうして、俺はいつもの全力疾走より更に早く動けるようになっていた。

 流石に空中に浮かぶほどの反動を得られるわけではないが、1.5倍程度の速さにはなっていてとても便利だ。


「ん! “グリーン・スナイプ、3連打!!”」

「甘い!! 避けられますよ!!」


 グリーンさんが必殺技の狙撃を繰り出してくるが、そこは俺が手の向きを微調整することで横にスライドしながら回避する。

 ただの“グリーン・スナイプ”程度なら、簡単に対処出来る! 


「なら、これ!!」


 そう言って、グリーンさんは“その場で大きくジャンプ”。

 ヒーローの強化脚力を利用して高く上がった後……


「“グリーン・グランドボム!!” 3連打!!」


 “俺の目の前の地面”に向かって、弾丸を横一列に放つ。

 そして、一拍を置いた後……“地面が炸裂する”。


「うおわ!?」


 目の前の地面が盛り上がって、簡易的な壁になる。

 訓練場の地面だから、固いコンクリートなどの素材で固定されているのに、それごと盛り上げられてしまっていた。

 流石にそれには急制動でなんとか止まってぶつからずに済んだが、スピードが殺されてしまう。

 目の前にコンクリートなどが浮き上がって壁になったが……


「“グリーン・ブレイク・スナイプ!!”」


 “壁を貫通する弾”を、放って来た。

 俺が見えない筈の状態なのに、俺の位置を正確に捉えて放って来る。

 俺はそれを横に飛び込むように転がって回避する。


「くっそ、やるなあ!!」


 地面ごと盛り上げる弾丸、あれがあると微妙にやりづらい。

 飛び上がって攻めようにも、空中に飛び出た瞬間グリーンさんの餌食だろう。

 “レッド・ツインフレイム”で空中制御すれば……いや、多分その程度だとグリーンさんに先読みされて撃ち落とされる。

 だったら……“こっちも壁越しに攻撃するまで”。


「“レッド・ツインギフト!!”」


 俺は、両手にそれぞれギフトの玉を用意する。

 その状態で、両手をガシッと互いに握りしめて、両手それぞれに“ギフト状態”にした。


「ん!? まさか……!?」


 壁越しにグリーンさんが気づいたようだが、もう遅い!! 

 完成した新必殺技!! 


「“レッド・ギガフレイムゥゥッ!!!”」


 俺は、目の前の壁ごとなぎ払う勢いで、最強必殺技を放った。

 この間【カオス・ワールド】に使った片手の“レッド・メガフレイム”の、両手版。

 つまり、二倍の威力と範囲を誇る究極奥義!! 


「いっけええええええええええええええッッッ!!!」


 そうして、俺は遠慮のない攻撃を放ち……


 ☆★☆


「グリーンさあああああああんッ?!!!」

「え、まって!? あれ死ぬ、死んじゃわない?!!」

「模擬戦で使っていい火力かあれ?!」


 俺達は初めて見たレッドさんの最大必殺技を見て大慌て。

 グリーンさんの命が危ない!? と危機的状況を抱くが……


「あ、“防がれるわね”。あれ」


 そうポツリと、ブルーさんが呟いた。


 ☆★☆


「“グリーン・スパイラル!!”」


 そうグリーンさんが叫んで放ったのは、“風を発生させる螺旋の弾丸”。

 それを“レッド・ギガフレイム”の真正面に放ち、“炎を切り裂いていく”。

 範囲は狭いが、グリーンさん一人回避出来るほどのスペースを作り上げていた。


「ん、足りない!」


 しかし、それも長くは続かない。

 炎を切り裂いていく風は、3秒ほどで収まってしまう。

 “レッド・ギガフレイム”の持続時間は10数秒、耐えきれずグリーンさんは燃やされる。


 ならどうするか。グリーンさんの答えはシンプル。


「“グリーン・スパイラル!!” “グリーン・スパイラル!!” “グリーン・スパイラルッ!!”」


 “連打し続ける”。

 グリーンさんは、同じ必殺技を、同じ箇所に正確に打ち込み続けて、風の隙間を発生させ続けていた。

 そうして、数十秒経った後……


「……んッ!!」


 グリーンさんは、無傷で健在だった……


 ☆★☆


「グリーンさんんんんんんんんんんッ??!!!」

「嘘でしょ、無傷!? あれを無傷ッ?!!!」

「は……? え……? 何、何しました?」

「シブオジって、回避方法もスマートなのね……?!」

「お、俺のシールドじゃ、明らかに防げない程の火力だったのに……?!!」


「グリーン、凄いすごーい!!」

「嘘でしょ、グリーン先輩!? あれ防ぐっすか?!」


 俺たちは、レッドさんのあの攻撃をグリーンさんが凌いだ事に心底驚いていた。

 見た感じ、グリーンさんは特殊な強力な技を使ったわけではなさそうだったのに。

 威力の低い技で、捌き切っていたのだ。


 信じられない芸当に、俺たちは感動して……


「……あ、なるほど。レッド、そう言う事ね」


 ブルーさんは、またそう呟いていた……


 ☆★☆


「ん。レッド、さっきの必殺技威力は凄いけど、本来“対軍用の攻撃”だった。一人に使うには過剰火力だし、一箇所の範囲の密度は実はそれほどでもない。一点ガードで凌ぎ切れる」


 グリーンさんは、遠く離れた俺に向かってそう言い放つ。

 ああ、さすがだよグリーンさん。見た目に惑わされず、俺の技の弱点を見切って凌ぎ切るなんて、流石は元30位経験者。

 俺はグリーンさんの凄さに、改めて感動し……


「さすがです。グリーンさん……」



「──まあ、俺の目的は“これでグリーンさん倒す事じゃなかった”んですけどね」



 そう【レッド・ガジェット】を持ち上げてそう言い放った。


「んッ?!!」

「いやー、流石に“レッド・ギガフレイム”を反動無しでは撃てなくて。支えがないから思いっきり後ろに俺も吹っ飛ばされちゃったんですよね。“まあその後ろに行くのが目的だったんですが”」

「武器回収?!」


 そう、俺の目的はグリーンさんを今の炎で倒す事じゃない。

 反動で、気づかれずに後ろに飛んで、自分の武器を回収する事だった。


「さて、グリーンさん確かこう言ってましたね。密度がどうとか」


 そう言いながら、俺は両手に“レッド・ツインギフト”を発動し、その状態で【レッド・ガジェット】を握り締める。


「──じゃあ、斬撃の密度ならどうですか? 喰らえッ!! “レッド・ウルトラエッジィィッ!!”」


 そうして俺は、真横に炎の飛ぶ斬撃を放ち出す。

 なぎ払いの要領で出されたそれは、今までで最高の横幅の範囲と、火力と密度を両立させた技であり、高速でグリーンさんに向かって飛んでいく。

(そしてよく考えたら、“レッド・ウルトラエッジ”を本来の使い方したの何気に初めてだったりする)


「んんん────ッ?!!」


 流石にこれには螺旋の弾丸でもどうしようもないと悟ったのか、グリーンさんは特大ジャンプで回避した。

 “レッド・ギガフレイム”と違って、“レッド・ウルトラエッジ”は斬撃がはっきりしているため、タイミングさえ見極められてばこのような回避方法で簡単に回避される。

 とは言うものの、あの速度でとっさに回避するだけでも十二分に凄いのだが。


 しかし、“これでグリーンさんは空中に飛び出た”。身動きが取れない。


「おらああああッ!!!」


 俺は“レッド・ウルトラエッジ”を放った勢いのまま、一回転して以前のように大剣をぶん投げていた。

 投げた先は、空中のグリーンさんの所。


「んんん?!!!」


 グリーンさんは慌てて“グリーン・スナイプ”、“グリーン・バースト”などの必殺技を放っているが、“レッド・ウルトラエッジ”の威力を纏ったままな【レッド・ガジェット】を打ち落とすには至らず。

 そのままグリーンさんの【グリーン・ガジェット】にぶつかって弾き飛ばしていた。


「しまっ……?!」


「今度は防げませんよねえええッ!!!」


 そうして俺は、再度“レッド・ツインギフト”を両手に放ち、互いの両手に強化する。

 そして、炎の弾をかざし出す!! 


「今度こそ、本命のトドメ!! “レッド・ギガフレイムゥゥゥゥゥぅッ!!!”」」


「ンンンンンンンン────ッ??!!!」


 そうして、グリーンさんは今度こそ俺の炎に包まれた。

 俺はさっきと比べて、早めに技を解除する。


 そこには、こげこげになったグリーンさんが倒れていた。


「よっしゃああああッ!!!」


 俺はこの勝利に、両手を上げて喜んでいた。




 ★佐藤聖夜さとうせいや


 23歳

 175cm

 黒髪

 中立・善

 男


 主人公

【ジャスティス戦隊】のレッド。


「めっちゃ手痛い……(涙)」


 グリーン一人倒すために、通常必殺技を除いてツインギフト系列の技計3回使用。

 雑魚的500人位は余裕で倒せるほどの戦力だった。

 剣を使わない両手強化を二回してしまったため、流石に負担が大きかったようだ。


 ちなみにギフト技習得以前のグリーンとの戦闘だと、いつも長期戦化して泥沼だったらしい。



 ★天野涙あまのるい


 22歳

 168cm

 青髪

 混沌・善

 女


【ジャスティス戦隊】のブルー。

 兼、【カオス・ワールド】の幹部、“コバルト・ティアー”。


 グリーンならある程度凌げることは想定済みだったが、リソースを予想以上に注ぎ込んだレッドが上だった。

 この後レッドの両手を手当てしてあげようと思ったら、ピンクに先に回復される女。



 ★大地鋼だいちはがね


 34歳

 184cm

 緑髪

 秩序・善

 男


【ジャスティス戦隊】のグリーン。


「ん、負けた……」


 主に相手の武器を撃ち落とす事と、“自身の生存能力”が高い人物。

 格上の攻撃を凌ぐ事に定評があるらしい。

 レッドやイエローみたいに、“ギフト”や“チャージ”技が使えず、通常必殺技までしか使えない。

 だからこそ、基礎を鍛えて通常必殺技で使い方を工夫して格上にも戦えるようにした。


 今回は、予想以上にリソースを注ぎ込んだレッドが上だった。



 ★リトル・ブレイブ戦隊


 すっごい戦いだと思った。


 ──どこを参考にすればいいんだろうとも思った。



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