「って、あ〜。そろそろ時間だ。それじゃあ、今日はこの辺で。じゃ〜ね〜!」
:じゃーねー
:じゃーねー
:じゃーねえええええ!!
「……ふう」
そうして、私は配信を切る。
そのあとは、コバルト・ティアーとしての衣装のベルトをタッチして、変身を解除。
幹部専用の【ダーク・ガジェット】のコンパクト状態に戻して、姿を私涙に戻す。
「お風呂……シャワーをさっき浴びたから、今日はいっか」
私はキッチンで水をコップ一杯飲んだあと、寝室に入ってパジャマに着替える。
そして、ベッドにヌイグルミを抱えて一緒に寝転んで、天井を仰ぎ見る。
「あー、つっかれたー」
私はそう、誰に聞かせるわけでもなくそう呟いた。
何よ、今日のレッド。あんなの反則じゃない。あんな隠し札持ってるなんて私ブルー知らなかったわよ。
「でも……はあぁぁぁッ────格好よかったなぁ♪」
あの時の戦ってるレッドを思い返して、私は気分が高揚していた。
あんな戦術隠していたことは許さないけど、おかげで新鮮な気分で目の前で見れたから、良しとしましょう。
けど、多分腕に負担があったわね、特に最後の攻撃。あんまり無茶は出来なさそう。
次にレッドがあの技使う時があったなら、注意しないと……私はそう思った。
「それにしても、ふふ♪ レッド、ヴィランに少しでも興味あったんだ。それが知れただけでも収穫収穫」
作戦は大失敗だが、レッド自身ヴィランに対して少しでも良い印象を持ったようだった。
これなら、いつか【ダーク・ガジェット】を使わせられる日がくる日も近いかも知れない。
成果が見えて来て、私はルンルン気分になっていた。
「──けど、急がないと、ね」
……しかし、いつまでも楽観視はしてられない状況だった。少なくとも、私にとっては。
私は無意識に、ギュッとヌイグルミを抱きしめていた。
「【カオス・ワールド】……世界征服、本当に私にとって都合がいいわ」
私は天井に向かって、手を伸ばす。
世界征服。口にするには陳腐に思える言葉だが、私にとってはある意味好都合だった。
この組織の発足は、私が大いに関係しているからこそ、方向性を調整するのが凄く楽だった。
「“タイムリミット”ははっきりしているわけじゃ無いけど、多分──」
脳裏には、私の大切な“親友”の姿が思い浮かんでいた。
恐らく今も、高笑いしながら世界に対して楽しんで挑んでいるだろう彼女に対して。
あの子と昔、あの時出会えたことは私にとって最高の幸運だった。
「早く。早く、一人でも多く“仲間”を集めないと──」
……私のその静かな誓いは、誰にも聞かれずに空気の中に溶けて行った──
★
22歳
168cm
青髪
混沌・善
女
【ジャスティス戦隊】のブルー。
兼、【カオス・ワールド】の幹部、“コバルト・ティアー”。
彼女は、願う。自分の夢の為に。
その為に世界征服すら、利用する。
悪も、正義も、どちらも使って。
<おまけ>
「──ん、レッド」
「レッド、おはようー!!」
「ああ、グリーンさん、ピンクおはようー」
ティアーとの対決を終えた次の日、俺は本部を歩いていると昨日休みだった二人に出会った。
見ると、二人は何かカラフルな模様をした袋を持っていた。
「これ、お土産」
「遊園地楽しかったよー!!」
「おお、それは良かったな!」
俺はグリーンとピンクからお土産を受け取り、袋の中を確認していく。
クッキーと、ボールペン……お! 限定品のキーホルダーとか入ってるじゃねーか!
今度バイクの鍵に付けておこうっと。ヒーローだけど、緊急時以外の移動手段は普通に各自で用意しないといけないから、大変なんだよなー。
俺はバイク持ってるから良いけど、ピンクとグリーンは普通に電車通勤だし。
イエローは自転車だったか?
ブルーは確か徒歩だけど、何か他にも持ってんのかもな。ヴィラン側で。
「けど、レッド。でも昨日はそっち大変って聞いた。ちょっと申し訳ない」
「ん? ああ、まあ大変だったけど、なんとかなりましたよ。まあ、あれはしゃーないっす。二人が有給取ったあと、昨日の朝に挑戦状が来たんすから、呼び戻せませんって。時間的に」
「そうなのー? 大丈夫だった、レッド?」
「ああ。まあ、スッゲー疲れたけど。と言うわけで、悪いけど今日はちょっとみんなに頼らせてもらいまーす。それとも、昨日の遊園地疲れがまだ残ってるか?」
「良いよー! 任せて! 大丈夫、おかげで元気いっぱいだよ!」
「……ん、レッド。あのさ……」
「ん? どうかしました?」
「レッド先輩、おはようっスーッ!!」
「おーう、おはようー」
グリーンが何か話したそうにしていたが、その声はやって来たイエローによって遮られていた。
声デケー。
「いやー、昨日のスイーツバイキング大満足っス! 今もまだお腹いっぱいな感じがしてー」
「おいおい、大丈夫なのか?」
「ふっふっふ。……実はお腹いっぱいで、朝ご飯すら食べられなかったっス」
「食い過ぎだテメエ。バイキングほどほどにしたら?」
「もう、何言ってんすかー!!」
「“レッド先輩が紹介してくれたんでしょー!! 昨日のスイーツバイキングの場所!!”」
「そりゃそうだけどさあ。そこまでガツガツ食うとは思ってなかったんだよ。太るぞー」
「ひっでーっス!! 乙女にあんな楽園紹介しておきながら、デリカシーの無い発言するなんて!! あ、“クーポンありがとうっス!” おかげでめっちゃ安く楽しめたっス!」
「あ、そうだ!! レッド、“私達も遊園地のチケットありがとう!!” すっごく楽しめたよ!!」
「そうだろそうだろー。俺がオススメした奴なんだからな。楽しんでもらえたようで何より」
「あれ? レッドも行った事あるの、あの遊園地!」
「ああ、何度かな」
「ええー! いつ、誰と!」
「おお、まさかブルーさんとっスか!?」
「ふっふっふ。……知ってるか? “一人遊園地って、ソロライダー使えるからアトラクション乗り放題だぞ?”」
「“こいつ、一人で行ってるっス!?”」
「ええ!? それ寂しく無い!?」
「案外楽しめるぞ? いやー、ジェットコースターとか結構気に入って、何度か乗ったなー」
「先輩、案外スッゲーくそ度胸っすね……」
「みんな、何話してるのー?」
「あ! ブルー先輩聞いてくださいッス! 先輩、一人で遊園地に行ったことがあるようで……」
「何それ、知らない!? いつ行ったの!?」
「だから、昔の話だって。ほら、朝のミーティングだろ? さっさと行くぞー」
「はーい!」
そんな和気藹々とした話をしながら、俺達は司令室に向かう。
少し遅れて、グリーンが後を追って。
「──ん、レッド……」
そんな彼の呟きは、誰も気付かなかった。
★
23歳
175cm
黒髪
中立・善
男
主人公
【ジャスティス戦隊】のレッド。
彼が電話を掛けた時点で、3人の予定は埋まっていた。
──彼が、電話を掛けた時点で。
丁度良いクーポンやチケットがあって良かったなあ、と思っている。
一人焼肉も平気なタイプ。
★
34歳
184cm
緑髪
秩序・善
男
【ジャスティス戦隊】のグリーン。
男。男です。男だってば。
★
10歳
遊園地楽しかったー!
★
21歳
スイーツバイキングサイコーッス!!