✾マレビト
沈黙の雨が降る。
用意された流星の珈琲は、秋から冬へと移り変わろうとしている。小皿に星空を映す砂糖菓子、花の降る和菓子がこの空間を彩っており華やかさを演出していた。
正面に座る青年の瞳は冬の水面の如く静謐だ。
古びた色褪せた本を読む彼は、眉間にずっと皺を寄せたまま。
桜雨が降りしきるアンティークの美しさが残る小道で消えた――“マレビト”を追っている。
マレビトの秘密を。
マレビトは何も語らない。
マレビトは真実には興味がない。
マレビトは人から忘れ去られた存在。
都市伝説のように語られるマレビト。
しかし誰も《マレビト》を知らない。