✾雪を待つ者
世界が霞む。花が霞む。
朽ち果てた眠る図書館の扉の前で本を読む。
彼女が最後に描いた絵本を。
空白の少女が少年から愛を識る話だ。彼女は空想が好きだったから、いつも俺にたくさんの物語を楽しそうに語ってくれた。
――彼女は何処にもいけない、種族の、孤独な鳥籠の少女だった。
雪をただの一度も見たことのない彼女は、雪に強い憧れを持っていた。彼女の絵本にはいつも必ずといっていいほど雪が登場した。
――ああ。彼女にも見せてやりたいな。
この世界にも雪は降らない。
次の世界では見れるだろうか、永遠に降り続く花びらを。