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✿四季録

いつか終わる夢ならば――綴って、語り継がれる物語としてここに遺そう。



終えた世界の季節を。束の間の日常を。




春は数多の花弁の舟が水面を彷徨う。瞳を鮮やかに彩るその舟たちは夢を運ぶのだ、美しい春のみた夢を。



夏は琥珀の蝉、白炎の蝉、緑翠の蝉、風車の丘。とにかく珍しい虫や世界を朱く染める風車は見ものである。



秋には黄昏の花のエデンが広がる。紅茶とクッキーのワゴンがどこにいってもあるだろう、物語を綴る言の葉の森で織る物語はなかでも希少な存在。



冬には妖精がスノードロップを降らせる。その花で編んだセーターやマフラーはとてもいい花の香りがするらしい。どこの店に行ってもミルクティースタンドがある。ミルクティーは個性的で、中にはとても飲めたものじゃないものまであるとかないとか……。





いつか、誰かがこれを読んで、遠い遠い明日、これを聞かせてやってほしい。




こんな日々があったことを。



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