静謐なクジャの森
高い木の上から見下ろす黒い鳥
鳥は来客者の少女に語る 語り慣れた台詞を
「ようこそお嬢さん。ここは君が識りたい物語も識りたくない記憶の物語――とにかくなんでもある。でも選ぶのは君じゃない。“この森”だ」
「あなたではないの?」
「私はただの鳥だ。知識も物語も持たない、“この森”の鳥でしかない」
「この森はそんなに偉いの?」
「おやおや。本当に何も知らないお嬢さんだ。では私が聞いたある物語を語ろう、長い長い物語になるが」
静謐なクジャの森
今は誰も訪れない 立ち入りを禁じられている深い森
でもある日迷い人が現れる
ここでは想いも記憶もすべて泡沫
黒い鳥が出迎えてくれる幻想図書館の森
在るのか 無いのかすら朧気の森
「やあやあいらっしゃい。君が求めているものは、果たしてここにあるのかな。ふふふ」
黒い鳥にはご用心を