「ヒュー様、アスト様。お久しぶりです」
そう、私にお菓子をよくくれていたルディとファルの同期の二人だ。
「やぁ、アンジュ久しぶりだね」
「宿舎じゃよくすれ違うけど、シュレインが怖すぎるんだよ」
二人はよく似ているというか双子なのだ。金髪に金眼。髪型も容姿も同じ。ただ違うのは魔質が違う。
「ヒュー様。10年ぶりです」
「アスト様。宿舎で挨拶ができずに申し訳ありません。るでぃ兄ってなんとかなりません?」
「「やっぱり、アンジュは俺たちがわかるのだな」」
おお、流石に双子。ステレオスピーカーかと思うほど、揃っている。
「わかりますよ。お二人は違いますから」
ええ、魔質が。私はへらりと笑う。すると、二人揃って私の頭を撫ぜ出した。その行動に周りからどよめきが沸き起こる。
「それで、そのるでぃ兄って何があったのでしょうか?10年前より酷くなっているのですが?」
この二人なら知っているはずだ。すると、二人は顔を見合わせる。
「それはね。それが原因かな?」
ヒュー様が私の銀髪を指さした。銀髪?意味がわからないという顔をしていると、アスト様が続きを話す。
「リュミエール神父から箝口令が敷かれていたけれど、アンジュがシュレインの中では死んだことにされていたよね?」
そうですね。悪魔神父の画策ですね。
「それで、遺髪としてシュレインにその銀髪を渡した」
ああ、そう言えばそんな物をファル経由で渡した。それがなに?
「「それをシュレインから奪い取った者達がいたんだ」」
おお、またしてのステレオスピーカーが!
それにしても私の銀髪を奪い取った
「「あれは今思い返しても酷い有様だった。自業自得だったが、その後、上層部の大半が入れ替わってね」」
ああ、これがルディの二つ名の元となったことか。
「「お陰で、
「ヒュー様、アスト様、ありがとうございます。思いっきりって、何をするのか何も聞いていないのですが?」
「「大丈夫、大丈夫、目の前の対戦相手を教会に居たときみたいに、力比べをすればいいだけ」」
ああ、要は勝てばいいってこと。私はヒューとアストに頭を下げて元いた場所まで戻る。私の姿を幾人もの視線が追いかけていたが、そんなものは無視だ。
そして、準備が整ったのか対戦相手同士の名が呼ばれ始めた。初めに
私は5番目に呼ばれたので、
その女性従騎士に私は睨まれている。ヒューとアストに話しかけたのが駄目だったのだろうか。まぁ、二人は見た目のいい双子だから、さぞかしモテるのだろう。
しかし、久しぶりに会って挨拶をしない方が問題だ。
女性従騎士が剣を抜いて構える。構えているが、スキがある。これはワザとなのだろうか?スキを敢えて作って、そこに攻撃をさせようという作戦か!そうか。そうか。しかし、その手には乗らん!
私も太刀を抜き構える。私の太刀を見て女性従騎士の雰囲気が増々悪くなってきた。
「あんたなんかに負けないから!私には後がないのよ!」
そう言って、女性従騎士が上段から剣を振り降ろしてきた。私は女性従騎士の力量を測るために、いつも教会の子達との力比べと同様に私も上段から太刀を振う。
剣と太刀がぶつかり、いつもどおり更に力を加えようとしたとこで、がくんと太刀がそのまま下に向かっていく。
は?
太刀は剣を押したまま女性従騎士の肩に食い込んでいく。私は慌てて太刀を引くが、すでに肩に10
弱い、弱すぎる。なにこれ?なんで彼女が聖騎士団に入れたの?これだったら、死んでいった皆の方が強かった。
肩を押さえ地面に膝を付いて、荒々しく息をしている。そこで、膝なんてついてしまう時点で駄目だし、腕がもげようが足がもげようが、剣を振らなければ待ち受けるのは死のみだ。そう、教えられてきたというのに、これは何?
私が不可解な者を見る視線を向けていると、女性従騎士が苦しそうに言葉をこぼしだした。
「こ……ころし……なさい··よ」
はぁ?
「殺し…て……。う……ば……になる……のは……嫌!」
ああ、そういうこと。本当に組織というものはクソだ。
私は太刀を横一線に振った。栗色の髪が宙を舞い。緑の瞳は空を仰いている。生きることを諦めた体は力なく地面に倒れていった。
太刀を振るい鞘に収め、私は緑の瞳が見ていた空を見上げる。なんて、この世界は腐っているんだ。