この教会に来た時ぐらいのみすぼらしい感じに痩せ細ろうという計画は、ルディによって阻止をされてしまい。一日一度のお菓子というところで手をうった。それまでは一日に3回もお菓子を与えられていた。食べ過ぎだ!
ルディの貴族殺害宣言から2ヶ月後。私は勉強から抜け出して、散歩をしていた。サボりだって?小学生の算数の問題を出されて、全部解いてきたよ。
私を勉強を見ているシスターが席を立った隙きに課題を終わらせ抜け出しただけだ。
春の陽気に誘われてふらふらと歩いていると、背後から声を掛けられ呼び止められてしまった。
「アンジュ。何をしているのですか」
神父様だった。神父様はこの時間、大きな子供たちの訓練に付き合っているはずだから、見つからないと思っていたのに。もしかして神父様もサボりか!
「散歩。神父様も散歩?」
「クス。違いますよ。課題を終わらせて、それもシスターの問題の間違いを指摘して抜け出している子がいると聞きましてね。探しに来たのですよ」
それ、私!!
はぁ、まさか神父様直々に私を探しに来るとは、シスター達なら近くにくれば気配がわかるから逃げ切れるのに、神父様の気配って全然わからないんだよね。忍者か!っていうぐらい、気がつけば目の前にいることが多い。
「アンジュ。暇なら上級生の訓練の見学に来ますか?」
「行く!」
それ、なんだか面白そう。神父様に手を引っ張られ訓練場まで連れて来られた。そんなにガッシリ手を握らなくても、逃げないよ。
訓練場には10歳以上だと思われる少年少女たちが剣を振るったり魔法を放ったりしていた。ここでは貴族だろうが商人の子であろうが、親に捨てられた子であろうが区別なく訓練に参加をしている。
しかし、神父様が現れた途端、全ての子どもたちが動きを止め、すぐさま走り出し神父様の前に整然と整列をした。
怖いよこの組織。
「遅くなってしまいましたね。今日はいつもと違うことをしてみましょう」
微動だに動かず整列をしている少年少女たちに向かって神父様が言葉を投げかける。私はというと未だに神父様に手を繋がれたままで、居心地が悪い。
「今日の訓練は捕獲訓練です」
ん?
「指定した対象物を捕獲した者は3日間訓練を免除してあげしょう」
その言葉にざわめきが沸き起こる。はっきり言って、ここの施設に休みという概念はない。毎日、同じことを繰り返し続けている。そんな感覚だ。それだとマンネリ化を起こし、やる気も損なわれるだろう。
神父様はやる気を起こさせるためか、ノルマを達成した者に休みを与えると言っているのだ。
それは目の前の子供たちの目の色も変わってくる。
「静粛に。今回の捕獲対象物は、授業をサボって抜け出したこの子ですよ」
私か!!
神父様の言葉に一斉に獲物を狙うかのような視線が突き刺さる。
私は急いで神父様から手を外そうとするけど、びくともしない。
「行動範囲はこの訓練場内です。外に出ると課題を上乗せですよ。アンジュは外に逃げたら私が付きっきりで勉強を見るということにしましょうか」
何だって!!それは絶対に嫌だ!
はっ!さっさと捕まればいいよね。そうすれば何も問題……突き刺さる視線に、何か猫に狙われるネズミの気分になってきた。
「アンジュ。逃げ切ればこの街で一番美味しいお菓子のお店に連れて行ってあげましょう」
お菓子のお店!!断然やる気が出てきた。教会に来てからというもの、一歩も街の方には行けてないのだ。これは外に出るチャンス!
「それでは始め!」
そう言って神父様は私を整列している子供たちの方に押し出した。私はバランスを崩し、地面に倒れ込む。鬼だ!神父様は鬼だ!いや、きっと悪魔に違いない。
甘い誘惑でやる気を出させたところで、地獄に叩き落とすなんて!
私に向って少年少女たちが意気揚々に向ってくる。こんな子供に抵抗する力なんて無いと思っているのだろう。この捕獲訓練は早いもの勝ちだと。
ふふふ。この私をナメめてもらって困る。家で殆どの時間を放置されていたのだ。いつかは逃げ出そうと画策し、色々試していたのだ。
私は土を払って立ち上がり、一言呟く。
「『
旋風。渦状に巻き起こる風だ。それに対して静寂の言葉を上乗せする。立ち上る風を抑え込む。このことにより何が起こるか。2つの相反する力がせめぎ合い力の逃げ場を探し弾け飛ぶ。
その結果、私を中心に同心円状に音速の衝撃波が生まれるのだ。
ふふふ。訓練場の外まで飛ばされればいい。因みに今の言葉は日本語だ。
流石に音速の衝撃波は避けられまいと思っていれば、舞い上がる砂煙に2人分の影が映る。
えー?あれを耐えきったの?
その内の一人の影が動く。砂煙から出てきたのは黒髪の少年ルディだった。
ルディもここにいたの?ルディになら捕まってもいいかと思う自分と、お菓子のお店に行きたい自分とで、せめぎ合っていたけど、ルディの顔を見た瞬間に身をひるがえしていた。
何あれ!殺人者がどう獲物を痛めつけてやろうかと言わんばかりの怖い笑顔。あれ絶対に私を殺す気なんじゃない?
足音がすぐ後ろまで迫ってきていた。殺されるー!!
「『
これは属性を逆転させる為に作った透明な六角形の盾だ。それを盾として使わずに地面と水平に階段状に並べ、足を掛けすぐさま背後の盾は消す。
そう、私は空に逃げた。