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第15話 神の制裁(過去)

 少年たちは何やら集合の命令がでたようなので、私は踵を返して午後の授業を受ける為に教会の方に向かおうとすれば、捕獲されてしまった。


「全員だ。お前も行くんだよ」


 黒髪の少年に抱きかかえられてしまった。何故に?!私、来たばかりの3歳児だよ?行っても意味がないよね。


「シュレイン、この子のことか?」


「ああ、そうだ。そう言えば名前はなんて言うんだ?」


 そう言えば、私はまだ名乗ってなかった。


「アンジュ」


「そうかアンジュか。俺の名はシュレインルディウスレイ「ちょっと待って」なんだ?」


 名前を言ってくれているところ悪いのだけど。


「私、人や物の名前を3文字以上は聞くことができない」


「「は?」覚えられないの間違いだろう?」


 金髪の少年が私に間違っていると指摘をするが、そうじゃない。


「3文字ぐらいまでは聞こえる」


 私は金髪の少年に指を指していう。


「お兄さんの名前。ファルまでは聞こえる。だけど、それ以上の名前が雑音が入ったように聞こえない。これはそういう病気って思って欲しい」


 私がそう言うと二人の少年は意味がわからないという顔をする。これだけ会話ができて、名前だけが聞き取れないってありえないことだ。だけど、私には聞こえない。


「俺はルディだ。これなら大丈夫か?」


「るでぃさま?」


 微妙に発音しにくい。ちょっと拙い喋り方になってしまった。


「なんで、様付けされるんだ。さっきまで普通に話していただろう?」


「お兄さん。貴族なんでしょ?」


「まぁ、そんなものだが、お前にそう言われると、なんか腹が立つ」


 何故に!

 ルディはそう言いながら私の頬をつねる。痛いよ。

 そんな事をするなら、これでどうだ!


「じゃ、るでぃにい」


 普通なら許されないよね!


「それでいい」


 え?よくないよ。

 金髪の少年に採用を止めてもらおうと視線を向ければ、なんだか楽しそうに笑いながら『シュレインがそれでいいなら』と言っている。よくない!!



 気がつけば、食堂がある建物まで連れてこられていた。ルディは私を抱えたまま建物の中に入って行く。

 この食堂の南側はお金を払ってここに来ている子供専用で、北側は私のように売られてきた子供の食堂になっている。そして、私が連れて行かれたところは、南側の食堂だった。


 そこには多くの子供達が集まっていた。ただ、一角だけ開いた空間がある。その場所以外に子供たちが整列して待機をしていた。

 どこの軍の組織ですか!

 あ、騎士を育てる組織でした。


「皆、揃ったようですね」


 少し開いた空間の奥に神父様と20人のシスターが並んでいた。本当に全員集合だったようだ。


「さて、今回集まってもらったのは、神の制裁を受けた者が出てしまいました。とても悲しいことです」


 は?神の制裁?なにそれ?


「人の物を盗むという愚かな行為をした3人の子が神から裁きを受けることになってしまいました。神は君たちの事をいつも見ていますよ。君たちは神の名の元に聖騎士として剣を掲げるのです。人の道から外れる行為は神から裁きを受けるのです。覚えておきなさい」


 え?いや、全く意味がわからない。神が人を裁く?人を裁くのは人でしょ?

 それとも、この世界じゃ当たり前なこと?


 神父様はまだ何かを話しているけど、私はある物を目にして神父様の話しどころではなかった。私は抱えられているため、いつもより高い視線だった。

 だから見えてしまった。神父様の足元に倒れている3人の少女の姿を。


 口から血を流し、苦しんだかのように歪んだ顔。そして、首元に掻きむしったような赤い傷。


 その三人の少女は先程、私の焼き菓子を奪い取って行った三人の少女だった。


 やっぱり焼き菓子に毒が仕込まれていた?でも、そうすると昨日食べたルディも私も死んでいないとおかしい。

 何か、からくりがある?考えてみるが、今の私が持っている情報が少なすぎて、答えにたどり着けなかった。



 神父様から解散が指示され、各々おのおのが残り少ない昼休みの時間を過ごすために散っていった。私は未だにルディに抱えられている。いつ、降ろしてくれるのだろう。 


 そして、南側の食堂の一角に連れて行かれ、ルディの膝の上に座らされた。いや、子供用の椅子を用意してよ。


「こっちには小さい子が居ないから子供用の椅子はないよ」


 何だって!

 ファルがそう言いながら、私の前にパンとスープを差し出してきた。なにこれ?


「ここで生きていくなら、貴族に施しをしてもらわないと生きていけないよ」


 は?ほどこし?


「アンジュのような子供と俺たちは区別されているのはわかるかな?」


 それは3ヶ月の間に嫌というほど目にしている。彼らと私達は差別をされていると。


「貴族として君たちのような子供に施しをする事を俺たちは行うように言われている。貴族としての矜持というやつだ」


「は?」


「君たちは俺たちから施しを受けて、俺たちを敬う。まぁ。社会の縮図だ。難しいかもしれないが、そのうち分かるようになるよ」


 なんか嫌だな。目の前のパンとスープを前にしてお腹が鳴る。確かにお腹は空いている。だけど、これは何か違う。



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