翌日。残りが3枚になった焼き菓子の紙袋を隠し持って、木の影で食べようと袋を開けたところで、嫌な奴らに見つかってしまった。
「こんなところで隠れて何をしているかと思ったら、何をもっているのかなぁ?」
「いやだ。この子お菓子なんて持っているわ」
「誰かから盗んだの?正直に言いなさい!」
10歳ぐらいの3人の少女に囲まれてしまった。
「こんな髪をしてダッサ!」
「ねぇ。ちょうど三枚あるから食べてあげましょ」
「誰に媚を売ったのかしらないけど、銀髪だからって、いい気にならないでよね。でもそのダッサイ髪型似合っているわよ」
髪を捕まれ、焼き菓子の入った紙袋を取られ、私は地面に叩きつけられる。
それにこんな髪にしたのは、あなた達じゃない!
3人の少女達は笑いながら去っていった。やっぱり、昨日のうちに全部食べておけばよかった。私の今日の楽しみが去っていってしまった。
ため息を吐いて、立ち上がって土を払う。くー!太陽の光が眩しいな。泣いてなんていないからね!
「泣いてるのか?」
いつの間にか昨日の少年が目の前にいた。
「ないてない」
泣いてない!こんなことで泣くもんか!
「何の用?」
昨日の文句がいい足りなかったの?あれからちゃんと謝ったし、神父様からの怪しいお菓子なんて信用なんてできるはずないよね。
「昨日のことは謝っておく」
は?昨日の何の事?謝られることなんて無いはずだけど?
「ファルークスに聞いた。貴族じゃない子供がどう生活しているか。だから、仲直りにコレをやる」
何だか大きな箱を差し出された。大きさ的にはB5サイズぐらいはあるだろうか。流石にこれは……。
「いらない」
「あ?やるって言ってんだ」
わかってるけど。
「中身が何か知らないけど、隠せない大きな物は他の人たちに取られるから、いらない」
「なんだ?人の部屋にズカズカ入ってくるヤツでもいるのか?」
ああ、貴族の子は個室が与えられているのか。
「部屋は10人で一つ。私が個人で持てる空間なんてないの」
「なに?そんなところまで違うのか。じゃ、口を開けろ」
少年は失敗したなという苦笑いを浮かべながら、箱の中身を差し出してきた。白い親指大の光沢のあるお菓子のようだ。
私が大人しく口を開けると、白いお菓子を口の中に入れられる。
甘い!転生してから今まで食べた中で一番甘い!それもこれ、チョコレートだ!この世界にもあるんだ。チョコレート!!
え?神父様からもらった焼き菓子はどうだったかって?小麦粉に干しぶどうらしきモノが入った自然の味という焼き菓子だった。私はあれをクッキーとは認めないよ。
「レメートだ。美味しいだろ?」
私はこくこくと頷く。レメート。ここではそういう名なのか。名前。3文字ぐらいなら聞き取れるよ。それ以上長くなると何故かフィルターがかかってしまう。不思議だ。
「それにしてもこの髪はなんだ?酷すぎるだろ。シスターに声をかけて揃えてもらわないのか?」
私の髪。ここに来たときは肩の下のあたりまであった。そして、お父さんが少しでも飾りがあればと木で作った花が付いた紐で縛っていた。
だけど、ここに来て一月経って先程きた少女たちに生意気だと言われ、髪飾りごと切られてしまったのだ。だから、私の髪は長い髪も短い髪も入り混じったままだ。
「別にいい。綺麗にしたらまた切られるから」
「はぁ?切られる?」
呆れたような声が降ってきた。
「お兄さんの髪色も珍しいけど、私の色も珍しいみたいで目を付けられるの。生意気だって」
「いや、珍しいだけで、髪は切られないだろ?」
「嫉妬というものは、人を理解不能な行動に駆り立てるものです」
「昨日も思ったが、お前歳を偽ってないか?」
目の前の私を見て三歳児じゃないとどうして思える!
「正真正銘の可愛い三歳児です!」
私は仁王立ちをして言い切った。そう、私は可愛いのだ!両親に全く似ておらず、キラキラときらめく銀髪に栄養不足で痩せてはいるが、バランスの良い目鼻立ち、大きなピンクの瞳を縁取りまつげは爪楊枝が乗るほど長い。
客観的にも可愛いのだ。
「可愛いのは認める。俺が言いたいのは10歳だと言われても驚きはしないということだ」
失敬な!これでも36歳まで生きた記憶はある。
少年は苦笑いを浮かべながら、白い
え?普通に受け取ったら駄目?
口を開けると少年は満足そうに笑って、私の口の中に
「シュレイン。こんな所にいたのか」
私の後ろから声が聞こえ、振り向けば金髪に緑の目が印象的なガタイのいい少年が立っていた。
「ファルークス、なんだ?今は昼の休憩中だろ?」
「ああ、全員召集の命が出た。食堂に集合だそうだ」
何かあったみたいだけど、私には関係ないことだよね。