一回戦が終わり二回戦の5〜8番のカードを持つ者達が呼ばれた。闘技場に向かうために移動すれば、背後から多くの視線が突き刺さった。
はぁ。これは、けが人をさっさと退場させようとターゲットにされているのか?
まぁ。私にとってはどちらでも構わない。これぐらいの者達がどれほどかかってこようが、訓練にもならないお遊び程度だ。
外に出ると太陽の光に思わず目を細める。6番のフィールドは何処だ?空中に6と書かれた大きなプレートが目に入ったので、そちらに進んでいく。
大きなプレートにクジで引いたプレートを近づけると、大きなプレートの方に吸い込まれていき、このフィールドに入ることができるようになっている。
そう、フィールド。バトルロイヤルが行うことができる範囲だ。このフィールドの役目というのは、中で戦ってできた傷はなかったことになるという不思議な空間だ。
だから、致命傷を与える攻撃も禁止はされておらず。魔術の施行も禁止はされていない。
これは、生徒の力を最大限にいかしたいということだが、恐らく本来の意味は生命を奪う行為に罪悪感を無くすことではないのだろうかと考えている。普通の騎士団という組織は人を相手に剣を向ける者達なのだ。最悪、戦にもかり出される。生命を奪う行為に罪悪感を感じないように。
本当に組織と言うものは腐っている。
次々に少年少女らがフィールド内に入っていく。私はそれを横目にフィールドのギリギリ端に立っている。
そして、刃の潰された剣を軽く振って重さを確認する。他の者達の剣の刃は綺麗に研がれているというのに、私に渡された剣の刃は切れないように潰されている。もう、苦笑いしか浮かばない。しかし、そんなことは表情には出さないけれど。
おおよそ50人ほどがフィールド内に収まった。その内の十数人が私を獲物として決めたようだ。見た目はひょろひょろでその上怪我もしている。一番に切り捨てるにはいい標的なのかもしれない。
『第2回戦開始!』
その言葉と共にそれぞれが、それぞれの標的に向かって駆けていく。私の方にも剣を抜いて向かってくる者達がいる。
「やー!!」
はぁ。そんなに大きく上段に構えたら、脇に隙きができるとは思わないのだろうか。向かってくる者に対し斜めに体をずらし、足を引っ掛ける。そのまま前のめりに倒れていき、フィールドの外にスライディングヘッドをかましている。
その間にも向かってくる者達を次々にフィールドの外に追い出していく。
戦わずにフィールドの外に追い出されるとは、なんと屈辱的なことなのだろう。
ふん!誰がまともに戦うか!こっちはけが人だぞ!
フィールドの縁に沿って移動しながら、次々に外に追い出していく。残りは5人。その5人の視線は私に向けられ、ボソボソと話している。口の動きからすると共闘の相談のようだ。
その内の一人の魔力が動き、魔術を施行する呪文を唱えだす。その者の背後に瞬時に回り込み、身体強化で右手一本で外に投げ捨てる。施行中の魔術を途中で止めてしまうということは勿論、暴発する。それも結界の外で。
本当に同じぐらいの年頃の者達が通う教育機関だと思えない。あんなに堂々と魔術の呪文を唱えるなんて、自分を狙ってくれと言うものだ。普通は呪文破棄ぐらいするよね。
背後から爆発する音を聞きながら、他の4人に視線を向けると怯えたような目を向けられ、自らフィールドの外に出ていった。
え?あれぐらいで、なんで怖気づいてしまうのか、わからないのだけど?
ここは残り4人全員で向かってくるところじゃないの?
立っているのが私だけとなり、フィールドの結界が解かれた。そして、私の目の前に一枚のカードが出現する。これが私の次の番号のカーd……殺気を感じ大きく背後に飛び殺気の元をたどった。
いや、たどるまでもなく目の前にいた。目を引く白い隊服に黒髪の長身の男が剣を抜いて立っていた。
こ、これはどういうこと?男は私の方に剣を抜いたまま近づいてくる。
「なぜ、聖痕の力を使わないのですか?」
聖痕?ああ、目の前の男は私が聖痕の力を使える事を知っているのはあたりまえか。
あの夜、私が腹いせにぶっ飛ばしてしまった人物の一人だということは、見た瞬間にわかってしまった。
先程から、冷や汗が止まらない。これは仕返しにきたのだろうか。思わず、一歩後ろに下がる。
「なぜ、使わないのですか?」
男は同じ質問を繰り返す。答えるまで、質問を繰り返すなんて、神父様みたいで嫌だな。
「相手に使う必要がないからです」
別に私の手に武器がないわけでもなく、強敵に生命を狙われているわけでもなく、ただのクソガキのお遊びに付き合っているだけだからだ。
「貴女の力を示さないと、認められませんよ」
ん?私の力?ああそういう事。医務室の先生が言っていたことはこれか。
『うーん。普通は止めるのだけど、貴女にはいい機会でしょう?貴女の力を示してくれればいいと思うわ』
これは聖痕の力を見せろってことだったのか。わかりにくいなぁ。
「わざわざ、ご忠告ありがとうございます。午後からはそのようにさせてもらいます」
頭を下げお礼をいっていると、空気が動いた。反射的に体を半分ずらすと、男が私が居た所に剣を突きつけて立っていた。
「今直ぐに示しなさい」
え?それは貴方を相手にしろってことでしょうか?これは聞いていませんよ。
と、聞いてもいいだろうか。ただ、私は声を出すことはできなかった。