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第8話 意味がない学園生活

 ここに来て2週間が経った。左腕をぐるぐる巻きで吊られており、顔の腫れは引いたが、頭の包帯はまだ取れていない。

 そんな状態では実技は受けられないため、座学のみを受けていた。


 この騎士養成学園に途中入学してきた私がこの様な姿であるため、同じクラスの人は遠巻きに見るだけで、私に近づこうとはしなかった。

 要注意人物に見られているのだろう。


 その座学なんだけど、全部教会で教えてもらったものばかりの内容だった。復習でもしろってことなのだろうか。


 実技は見学のみで、離れていたところから見ていたが、これ教会のみんなの方が強いよ。見たところ私と変わらない年のようなので、15歳か16歳ぐらいなのだと思われる。けれど、教会の10歳児の方が絶対に強いよ。

 教会組織って恐!



 ん?ってことは私ここにいる意味なくない?勉強も教会で教えられているし、剣術も鍛えられている。なぜ、ここにいるのだろう。


 あー。教会を出る前にゼクトなんたらかんたらが言っていた事を思い出した。


『ああ、聖痕持ちの俺は来週聖騎士に入団が決まったから、二度と会うことはないのは同じか』


 入団が決まったと。騎士養成学園に入学ではなく入団と、それも来週と言っていたから見かけないということは、聖騎士団の方に行ったということなのだろう。


 え?どうして私は意味のないここに居なければならないのだろうか。イジメか!絶対神父様の嫌がらせに違いない。

 私は聖騎士にならなければ誓約不履行となってしまうではないか!そうしなければ私の未来は存在しなくなる。


 どうすればいい?この学園を破壊する?あの女教師をぶん殴る?学園長を探し出して脅す?

 どれも解決しなさそう。


 ああ、確か一年に一度剣術大会があるってさっき男性教師が言っていたな。それは学年·年齢問わず騎士団にスカウトされる可能性があると……いや、私はただの騎士団に入るわけにはいかない。

 困った。とても困った。聖騎士団に入ることのできる可能性はそれしか思い付かないけど、それって来週って言ってなかった?


 それまでに折れた腕を治す?それは駄目だ。1ヶ月は実技に参加してはならないと医務室の医者から言われている。

 あ。じゃぁ、剣術大会ってのも参加が無理ってこと?


 担任の男性教師……名前なんて言ったかな?忘れた。その後ろ姿を見つけたので聞いてみることにした。


「先生。質問をいいですか?」


 男性教師に追いついて声を掛ける。男性教師は振り返って私の顔を見ると顔を歪めた。面倒くさい者に呼び止められたと思っているのだろう。


「来週、剣術大会があると言われましたが、私に出る権利はありますか?」


「その状態で出るつもりか?」


 質問に質問を返された。私は大会に出られるのかどうかが聞きたいのに!


「はい。それで、出られますか?」


「全生徒が大会に出ることができるが、君は医務室で許可をもらってきなさい」


 やっぱり、医務室の医者の許可がいるのか。


「ありがとうございました」


 男性教師に頭を下げてから踵を返す。これは何が何でも医務室の医者を説得しなければならない。休み時間はまだあるのでさっさと医務室に向う。どうせ次の授業は剣術なので私は出席する必要もないので、医務室で時間を消費しても何も問題ないはず。


 そう思いながら廊下を歩いていると、横からの衝撃でよろけてしまった。誰かと見れば全く知らない女生徒の集団がいた。着ている軍服は私と同じなので、ここの生徒であることはわかるが、接点など無かったはず。


「あなた、その汚らしい姿でアクシオーム先生に近づかないでくださいます?」


 汚らしい?アクシオームって担任の教師のことか、でも、近づかなければ質問ができない。


「その薄汚れた髪。汚い」

「そんな伸びっぱなしの髪で恥ずかしくないの?」

「貧弱な体で騎士になるつもりなんですか?」

「大会に出るですって?笑わせないでいただけます?」


 色々言われているが、本当のことなので文句を言うこともない。身なりを整えるなんて怖ろしいことができるはずもない。


 私は別に何を言われようがかまわない。無視をしてその場を去る。私は医務室に行かなければならない。

 剣術大会に出られるかどうかで、未来に進めるか、このまま闇に飲み込まれるのかが決まってくると私は感じ始めている。


 正確には分からないが、あの誓約がどこまでの範囲で効力を発揮するのかがわからないので、早めにここを立ち去りたい。


 医務室の前にたどり着き、ドアをノックする。中から返事があり、ドアを開ける。そこには青い長い髪の女性が椅子に座ってこちらを見ていた。


「あら、傷がいたむのかしら?」




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