「うああ! ちくしょう! ちくしょぉお!」
ジェイクは商品の剣を無作為に手に取り、ただ衝動のままに振り回す。
店のカウンターは壊れ、棚が崩れる。
暴れるうちにシオンが作ったジェイクの鎧に剣が当たり、剣のほうが折れてしまう。
その事実に、ますます苛立ちが募る。また剣を持ってきて、何度も何度も鎧に打ち付ける。
「なんだよくそが! 俺があいつに劣ってるってのかよぉ! あいつがそこまで凄いってのかよぉ!」
何本も剣を折って、剣が尽きれば【クラフト】で直して、また振るう。
エルウッドが放り投げた
息が切れて、動けなくなる。
盾は無傷だった。その美しいまでの輝きは、ジェイクの姿を映し出す。
そこには、醜い男がいた。
髪はボサボサ、髭はボウボウ。たったこれだけの運動で息も絶え絶えになるほど衰えており、自慢の【クラフト】で作った剣はナマクラばかり。
これが、俺か?
S級魔物の
愕然として、床に座り込む。
「ぐっ、くぅ……! ちくしょう……!」
ただただ涙が溢れてくる。
本当はわかっていた。ジェイクはシオンより劣っている。
でなければ、彼の
いや
シオンは、いつもジェイクを立ててくれていた。彼が指揮を執ればもっと上手くいくのに、よほどの緊急時以外はジェイクに任せてくれていた。
迷うことがあっても、さりげなく褒めて、後押ししてくれていた。
クズな判断をしそうなとき、優しい言葉で正してくれた。
彼がいなければ『フライヤーズ』はS級パーティとなることはなかった。下手したら犯罪集団になっていた。
「シオン……。シオン! 全部、全部あいつのせいだ! あいつさえいなければ、俺は——」
——俺は、自分が優れた人間だと勘違いしなくて済んだんだ……。
シオンと出会わなければ、S級パーティにはなれなくても、自分の身の程を知る、そこそこの冒険者にはなれていたんじゃないか……?
「いや……違う。違うな……。シオンがいなけりゃ、俺はとっくに死んでたな……」
何度シオンに命を救われたかわからない。
今日まで生きていられたのは、間違いなくシオンのお陰だった。
そうだ……。ちくしょう……。
ジェイクはたったひとりですすり泣く。
「俺にも、シオンが必要だったんじゃねえか……」