『こちらを見て頂けますか? これは僕が先日、偶然見てしまった木山君と不良グループとのやり取りを動画として撮ったものですが……』
「あいつそんなの持ってたのか……」
「食えねぇ野郎だな、おい」
優男然としていて、意外とやり手な滝に今この部屋にいる全員が感心してしまった。
『それでは再生します』
『な!? ちょっ、ちょっと待って!!』
『静かにしていなさい木山! 滝、構わない。見せてくれ』
『では……』
そうして再生された内容は、無線越しでも不思議とハッキリ聞こえるくらいにクリアに聞こえてきた。
『またいつものように頼むよ。勿論、報奨金は弾ませて貰おう。これは前金だ、受け取ってくれ』
『……確かに。いやあ、すいませんなぁ木山の坊ちゃんいつもいつもご贔屓にさせて頂いて』
『俺達一同、木山様には足向けて眠れませんよぉ! ちょっと騒ぎ起こすだけでいいだなんて、逆に悪いくらいだ。あっはっは!』
『やり過ぎるとお互いの今後の行動にも差し支えるからね、今の塩梅がベストなのさ。君達だって体のいい小遣い稼ぎが出来なくなると困るだろう? これからもビジネスパートナーとして仲良くやって行こうじゃないか』
『まったく、悪いお人で。ぐっひっひっひ!!』
「時代劇みたいなやり取りって現実にあるもんなんだな……」
「俺もビックリだぜ。木山の野郎がこんな典型的な悪代官だったとは」
思わず裕と顔を見合わせ、お互いに苦笑いを浮かべてしまう。
『木山君、これは何だね? 確か私の記憶している限り、彼らの問題行動を何度か君が納めていたはずだが』
『い、いやっ! これも何かの間違いでして!!』
『このやり取りの数時間後、先生が仰っていた通りに彼ら不良グループは校舎内でカツアゲ行為をしていました。その現場を狙ったように木山君が納めた結果、被害生徒は一円も金銭を取られる事がありませんでした。そしてその後、再び人目のつかない場所で不良グループと合流した木山君は彼らにお金を渡しています。その時の写真もここに』
無線だからその様子は俺達には分からないが、先生達のざわつくから件の写真を見せられたんだろう。
『女性関係に関しては実際にこの目で見ておりませんので何とも言えませんが、金銭のやり取りを行って不正に評判を集めていたのは事実です。その為、僕は木山君の事を外面を取り繕いながらも、裏では自らの欲を満たす為に汚い事を平気で行う多分にモラルの欠く人間であると判断しました。そして、今回の件もそういった類のものかと』
『う、嘘だ! こんな! こんな事がっ!!?』
『木山君、いくら何でも往生際が悪いんじゃないかな? 同じ生徒会の人間として君の醜態をこれ以上見るには耐えられない。せめて最後は素直に罪を認めるべきだと思う』
「ひゅう! 滝の奴言うじゃねぇか!」
「馬鹿、だから声がデカい。……でもスカッとしたのは事実だ。これ程ズバズバ言ってのけるとはな」
興奮する裕を叱りながらも、俺は滝の手腕に感心していた。
いや、本当に素直にすげえよこいつ!
そう思った矢先の事だ。
――木山が急に奇声を上げ始めたのは。