第5階層は広いが、それほど複雑な構造にはなっていないらしい。
分岐があってもすぐ合流してしまったり、片側の道が行き止まりだったり。ほとんどが一本道に収束するような構造となっているのだ。
探索する上では、第4階層のほうが苦労したくらいだ。
その後も何度か
休憩時には『ドラゴン三兄弟』にと保存した
今回のメニューは、
「ところで一条先生、なんだか、あたし調子が良いっていうか……みんな、すごく強くなっていってません?」
自分の分を平らげてから、紗夜は不思議そうに、みんなを見渡した。
「あ、それユイも、思った。ユイの新装備、結構重かったんだけど、今はそんなに重くない、気がする……」
「
ロザリンデの問いには、吾郎が首を振る。
「違うな、この感覚は一時的なもんじゃねえ。レベルそのものが高くなってる感じだ」
丈二も顎に手をやって唸る。
「もともと
その推測に、フィリアも推測を重ねる。
「風間様は生まれつき
「そうだとしても、たぶん、ただの
ロザリンデは、それらの推測に目をぱちくりさせた。
「ねえ、つまりは……
「はい、その可能性があります」
ロザリンデは希望に満ちた目で丈二を見上げる。
「ジョージ……。あなたが望めば、わたしたち、同じ時間を生きられるようになるかもしれないわ」
丈二は喜びも、うろたえもしない。すでに隼人の一件で、ロザリンデとともに、どう生きるか考えていたのだろう。
「私も長命には興味があります。この世に生きている限り、見たいアニメも、やりたいゲームも、どんどん生まれてくるでしょう。私はそれらをずっと、あなたと一緒に楽しんでいきたい」
「じゃあ——」
しかし、丈二は首を縦に振らない。
「しかし
「……そうね。わたしも、人でなくなったときの気持ちは知っているもの」
そのままロザリンデは視線を下ろして黙り込む。
「……どちらにせよ、あまり食べ過ぎるのは良くないかもしれないな。竜を追う者は竜になるという言葉もある。過ぎた力を持ったことで、破滅することだってある」
「斎川様のように、ですね」
おれたちは
案の定、
そしていよいよ、おれたちは第5階層の最深部に到達したようだった。
第6階層へ続くと思われる下り坂を発見したのだ。
一旦そこで、全員の状態を確認して、意見を募る。
すなわち、このまま第6階層へ向かうべき、と。
数々の
こうして、おれたちは第6階層へ足を踏み入れた。
目の前に現れたのは、険しい山岳だ。
おそらく第2階層と同じく、空間が歪んでいる。
ざっと地形を見て、おれは確信する。
「この場所、知ってる」
その一言に、みんながおれに注目する。丈二が真っ先に口を開いた。
「どういうことです、一条さん?」
「おれが以前、攻略した場所と同じなんだ。さすがに時間が経ってて風化してる部分もあるけど、ここから見える景色も、道も、あのときのままだ。間違いないよ」
「それは、つまり?」
「
「偶数の階層は、
「たぶんだけど、この島にもともとあった洞窟が、他の階層の影響を受けて変化したものなんじゃないかな」
それから、ふと浮かんだ推論をおれは口にする。
「生配信でのコメントでは、第2と第4階層の揺れが強くて、他はそこまで大きくないみたいだった。その差は、
「確かに一致していますが、それがどのような意味を持つのか、まだわかりませんね」
「なら、ちょっと相談してみよう。ここがおれの知ってる土地なら、今も友達が住んでいるはずだ。案内するよ」
「タクト様、しかし、貴方のお友達ということは、200年以上も前の方なのでは?」
フィリアの疑問に、おれは笑顔で答える。
「ああ、でも彼ならきっと200年経ってても生きてるはずさ」
おれの案内で、山岳を順調に登っていく。
非常に複雑な地形で、本当なら攻略にひと月やふた月はかかるところだが、攻略済みのおれの記憶を頼りにすれば、大して時間はかからない。たぶん、富士山登頂くらいの難易度だ。
やがて、山頂からやや離れた位置にある広いドーム状の洞窟に踏み込む。おれは声を張り上げた。
「バルドゥイン! いるんだろう、バルドゥイン! 姿を見せてくれ!」
洞窟の暗闇の奥で、ふたつの瞳が光り輝いた。
「——まさか、お前とはな。『
どしん、どしん、と大地を揺らしながら現れたのは、山そのものと錯覚するほどの巨体。