ミリアムと敬介が武具を仕上げてくれるまでの間、おれたちは第4階層拠点の充実を計りつつ、対
訓練の内容としては、
そして、
この訓練、第5階層先行調査パーティが主だが、それ以外な者も一緒に受けていいことにしている。
もちろん、雪乃や隼人たち『花吹雪』を含むファルコン隊は参加した。
さらに、並々ならぬ熱意で参加するパーティもいた。
その筆頭は、あの料理人パーティ『ドラゴン三兄弟』である。
「この前
「ぜひとも味が知りたかったのにぃ!」
「美味しく料理してみせたのに!」
『ドラゴン三兄弟』が
「いや、倒すのに精一杯で、黒コゲにしちゃったから」
「もったいない!」
「えぇい、ならば私たちで獲りに行くまで!」
「モンスレさん! ぜひ我々にも
という感じだ。
彼らはまだレベル3だが、そのうち本当に、食欲のみで
しかし、彼らのような存在には心救われる思いだ。
この場所が、そういう者たちの居場所となっていることが嬉しいのだ。
そうして
確認だけなので、おれとフィリアのふたりだけで来た。
店内にずらりと並べられた武具に、思わず「おお」と声が漏れ出てしまう。
「凄いな、ふたりとも。あの量の素材で、全員分用意してくれたのか」
「ふふふ、まあねー」
おれの注文した
「色々と頭使って節約したよー。足りない分は次に強い素材を仕入れて補ったりもしたけどさ。まあ、100点の出来とは言えないけど、同じ素材量で80点がこれだけ作れたほうがいいでしょ?」
「その通りだよ。おれたちはひとりで戦ってるわけじゃないからね。こっちのほうがありがたいよ」
「そう言ってくれて嬉しいよ。師匠なんかはさ、最高品質を求めがちだから意見が全然合わなくってさー」
「時間と素材がたっぷりあれば、そっちのほうが助かるけどね」
「アタシは急がされたからなぁ……。というわけで、約束通り、フィリアは今日一日おもちゃにさせてもらうね?」
ミリアムに迫られて、フィリアは後ずさる。
「あ、あのー、特急料金はお支払いいたしますので、勘弁してはいただけませんか?」
「それはもちろんもらうけど、それはそれ、これはこれだからね?」
フィリアはおれの背中に隠れてしまう。
「た、タクト様……どういたしましょう?」
「タクト、どいてねー。フィリアをよこしてねー」
おれはフィリアのほうを向いて、両肩をぽんと叩く。
「フィリアさん、おれは報酬には2種類あると思ってる。物理的報酬と心理的報酬だ。そして、いい仕事には、然るべき報酬と敬意を払うべきだとも思ってる」
「は、はい……」
「物質的報酬——つまりお金は充分支払った。あとは心理的報酬だね」
おれはひょい、とフィリアをミリアムのほうへ明け渡した。
「た、タクト様ぁ!?」
すかさずミリアムが、がしっとフィリアを捕獲する。
「サンキュー、タクト。こうなるってわかってただろうに、逃げずに来るなんてフィリアも誠実だなぁ」
フィリアは捨てられた子犬のように震えた。
「う、裏切ったのですかタクト様! わ、わたくしの気持ちを!?」
「さあさ、お楽しみの時間だよー」
「あぁあ〜」
店内奥の六畳間へ引きずられていくフィリアだった。もちろんおれはそれについていく。
「ミリアムさん、今日は撮影してていい?」
「配信とかしなきゃいいよー」
「大丈夫、個人で楽しむだけだから」
「なにを仰っているのですかタクト様!? あっ、いやっ、ミリアム様! 待ってください! 心の準備が——はうんっ!」
さっそくミリアムが指圧を開始し、艶っぽい声を上げる。
おれもカメラアプリで動画撮影だ。顔を赤らめ涙目になったフィリアは、非常に趣深いものがある。
と、その時だった。
激しく地面が揺れ出した。
「地震——!?」
おれは即座にスマホを放って、ふたりを引き起こし、手を引いて店外まで避難する。敬介も一緒に店を飛び出した。
やがて地震は収まる。幸いなことに、家屋が倒壊するほどのものではなかった。しかし、店内で陳列していた武具は、崩れて散らかってしまった。
「あー、まいったなぁ。もっとしっかり固定しとけばよかったー……」
「いや、揺れのせいっていうか、ちゃんと片付けてなかったせいなんじゃ……」
「忙しかったんだからしょうがないじゃんよー」
肩を落とすミリアムと敬介だ。
もうフィリアでお楽しみなんて言っていられない。
「片付け、手伝うよ」
「ごめん、助かるー」
散らかった店内を4人で片付けつつ、念のため、揺れても崩れないように固定していく。
「やはり、地震の原因は
このところ地震が多いが、その震源はこの島にあるのだという。震度は大したことはないので、さほど問題視されていないが、気にはなる……。
「それを調べるのも含めて、
おれたちはその後、改めて武具の仕上がりに問題がないことを確認して、引き上げた。さすがに数が多いので持っては帰れない。
グリフィン運送がそれらを宿まで届けてくれたら、さっそく威力のお披露目だ。