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第20話【VTuber好きのお嬢様】

「利香お嬢様、ご夕食の準備がもう直ぐできます」

「ちょっと待って有栖、今から三葉くんが歌うみたいなの」

「三葉くん……ですか? 聞いたことのない方ですね。新しくデビューした方ですか?」

「そうなの! 私が良く見てるVTuberの雫月ちゃんいるでしょ?」

「はい、そのお方はお嬢様からよくお聞きしますよ」

「三葉くんはその雫月ちゃんの幼馴染で最近デビューしたんだよ」


 私は今日もメイドの有栖に大好きなVTuberについて語り始めた。

 私がVTuberという存在を知ったのは一年前の高校二年生の時。私のお父様は大手企業の社長をしていて、裕福な家庭で育ったお嬢様の私はどうやら近づきにくい存在みたいで中学高校と上手く周囲に馴染めなかった。

 私は皆と変わらない学生生活を送りたいと思っていた。だからお嬢様学校ではなく普通の学校に通い、私から色んな生徒に話しかけた。けれど上手く馴染めなかった。

 そんな私は友達と言える存在はいなく、休み時間も一人で過ごすのが当たりまえ。

 けれどある日、クラスメイトの一人がVTuberの話しをしているのが聞こえていた。

 初めて聞く言葉に興味が出た私は家に帰って直ぐにVTuberを調べて、配信を見た。

 そこで知ったのが雨音雫月ちゃんというVTuber。雫月ちゃんが楽しそうにリスナーと雑談していて、私も混ざりたいと思って初めてコメントをした。

 すると雫月ちゃんは私のコメントを拾って少し会話をしてくれた。

 それが私にとっては凄く嬉しかった。画面の向こうの人と会話をしただけだけれど、当時の私は学校では全く会話をすることなく過ごしていて久しぶりに家族以外の人と会話をしたから。

 そしていつか私もVTuberとして沢山の人と会話をして関わりたいと思い始めた。


「うわぁ~! 有栖も聞いて聞いて、三葉くんすっごく歌上手だよ!」

「この曲はご存じないですが、三葉さんの歌が上手なのは凄く分かります」


 それからも三葉くんは雫月ちゃんと何曲か歌いリサちゃんとリンちゃん、百合ちゃんも一曲ずつ歌い配信は終了した。

 満足した私は夕食を食べに向った。


「利香、準備は順調に進んでいるのかい?」

「うん。もうモデルもあるし実際に動いてみたりもして大丈夫だったよ」

「それなら良かった、お父さんの方も後はあの方たちにメールをして返事を待つだけだよ」


 お父様は私がVTuberを好きになって、私もVTuberとして活動してみたいと言うと何も否定することなく準備を手伝ってくれたり色々と調べてくれたりもした。

 そして私のためにVTuber事務所を立ち上げてくれることになった。

 どうしてここまでしてくれるのか、少し前に聞いたら、私が何かに夢中になる事が今までになく、好きな事は好きなだけやらしてあげたいと言われた。


「そういえば乃愛、VTuberとしての活動名は決めたのかい?」

「うん。白雪乃愛って名前にしようかなって思ってる。有栖と一緒に決めたんだ!」

「良い名前だな。それと有栖、私は今の事業でVTuberの方の活動にはあまり顔を出せそうにないんだ。だから有栖に利香たちのマネージャー兼事務所の代表をしてほしいと思っているんだが引き受けてくれるかい?」

「私にですか⁉ で、ですがそんな大役私なんかで大丈夫なのでしょうか……」

「勿論事務所の事全てを有栖に任せるわけじゃない。他にも沢山雇うつもりだが、代表という肩書きは信頼できる相手に持っていてもらいたくてね。心配することはない、代表と言っても有栖にやってもらう事はマネージャーとしての仕事だけだから。有栖がマネージャーなら利香も安心できるだろうしね」


有栖は私が物心つく頃から私のお世話をしてくれていた。そんな有栖がマネージャーとしてVTuber活動をサポートしてくれるのは凄く安心できるし心強い。


「分かりました。そう言う事でしたらおまかせください」

「ありがとう有栖」





「ちょっと秋奈ちゃん、顔赤くなってきてるけど大丈夫?」

「ん~……大丈夫……」

「秋奈ちゃんも円華ちゃんと一緒でお酒弱いみたいだね」

「弱くない……よ」


 そう言って秋奈は俺の肩に頭をのっけて目を瞑った。


「おー、どうするの透夜くん。秋奈ちゃんお持ち帰りしちゃう?」

「し、しませんよ! 起きそうにないなら家まで送って行って寝かせます」

「うわぁ~、透夜くん優しすぎだよ。普通お持ち帰りするって。ね、二人とも」

「ん~、まぁもし瀬奈ちゃんが酔って甘えてきたら私なら襲っちゃうかもね~」

「ちょっと円華ちゃん!」


 ほらね、と言わんばかりに俺の方を見て来る結唯さん。

 そんな表情で言われても俺は襲ったりしません。

 とりあえず秋奈の肩をゆらして起こそうとして見るが、「ん~……」と言うだけで起きる気配はない。


「起きそうにないですね。これはちょっとタクシー呼ぶしかなさそうですね」


 俺はスマホでタクシーを呼び、ひとまず秋奈に水を飲ませた。


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